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Ⅶ. × minus. ‐ Zero. 海と出会う

 「じゃあいってきます」


 「はい、気を付けて。」


 私ーー紀端 友理奈は、宿屋葉緑のおばさまから、『洗濯屋』を出来そうな場所を教わり、見に行こうとしている所だ。


 昨日は嫌な目に遇った。買い物も済んだ後の事だったのだけが、幸いとしか言えない。

 今日は変なのに遭いません様に。(人)。お願いしますよ。と。心の中で拝む。


 さて。


 気を取り直して、目的地へ、てくてくと。少し歩くと、すぐに、街の景色が変わる。家や店等の建物が視界から消え、やや開けた空間、場所に出る。あら在った。教わった通りに、ちょっと寂れ古びた教会が在った。朽ちてはいない。うん大丈夫そう。


 徒歩五分位かな。意外と近い。周囲の建物は其の場所からは、やや離れ少し距離が在るので、街の中なのにちょっと雰囲気違うぞ的な空間だった。

 もうちょっとこの道を進むと、門が在り、街の外へと出れるらしい。そして、その門から少し離れた場所には、冒険者と言う人達が『一獲千金』しに行く場所(?)みたいな処が、在るらしい。


 つまり、その門から街に入った冒険者とやらは、『(服装が)汚れている!』と読んだ。


 うふふ。『ブスっ!』って二回言われたし。(根に持ってるよ!)言われっ放しもねえ?と、思いませんか?復讐とか、ーー乙女のする事では無いので。私は、あの冒険者君から、『稼ごう』と思います。汚れ物洗ってやるわよ!と。



 パンツはお断り申し上げます。洗うかそんなモン。(それは御自分でど〜ぞ。)

 上着とか、まあ、シャツとかもだけど、絶対こまめに自分で洗ったりしないでしょ〜あの人達。※冒険者と言う人達です。


 葉緑のおばさま曰く、昨日のチンピラさんーー間違った、暴言・冒険者君、あいつ、嫌、間違ったあのにいさんは、どうやらそこそこの、有名人。『素行のよくなさ』で。やっぱり悪いのかー。ですよね。ごはん屋さんのウエイトレスさん達にもえらい嫌われてるとか……ただ、前に態度があれ過ぎて、他の客に『伸された』事が有るとか無いとかで。伸した方の男が、やっぱり冒険者風で?


 その後この街で、見掛けないらしく、なので暫く大人しくかったアヤツも、……態度がもう略元通りだとかで。………。とってやる…。彼奴がーー『ダン』なんとか言う『穴ぐら』だか何だかんだで獲って来た『稼ぎ』……。たっぷり使わせてやる!洗濯で!




 と、まあ、昨夜変なテンションと、スイッチが入っちゃった私でした。(ちょっと反省)


 でも、洗濯屋自体は、『いいと思う』って、葉緑のおばさまが。お花屋の奥さんも、ジャズミンのウエイトレスさん達も、良いと思うって。ですよね?私もそう思う。


 なので、この教会のスペースを借りて、やってみようと思うのですよ。因みにこの教会、只今『空き家』為らぬ『空き教会』だから、使って大丈夫だって。らっきぃ。無料ですよ、無料。


 神様借りますねー。稼ぎますねー。って、『帰れる』までの、『生活費』が賄えれば良いんだけどね。昨夜ちゃんと計算してみた!宿屋のおばさまとか、ジャズミンのウエイトレスさん達とか、頼みたいって!そうだよね2。そう来ると思ったのよ。雑貨屋さんも、冒険者にそれとなく薦めてくれるらしい。代わりに雑貨屋で、樽(桶?)とか、石鹸とか、買うんですよ。後は『乾かす』ーー場所なんですけどね。



 広さは十分。むう〜やっぱり、普通に物干し竿だよね〜。それっぽい物が在れば、利用したいなと見に来たけど。……ないかも。無いな。さてどうしましょうか。先ずは中の御掃除しますか。


 あ、因みに、お水は大丈夫。無料の共同井戸がちゃんと。教会の目の前に。故に宿屋のおばさまオススメなのだけどね。洗濯にはお水ですからね。



 あの『冒険者』と言っている人達の何が駄目って。『汚れ』と『におい』ですよ。埃っぽいと言うのかなんと言うのか……。無理。ガイは……見た目ちょっとぼろぼろ服だったけど、においはセーフだった。…まあ、ナフィートさんも…匂いは…大丈夫だった。(多分中身は無理だ。なんかトラウマだよ…)ダーナスはね。……………汗埃くさかっ………以下略。(苦)



 その他、『冒険者』の人達って、みんな同じ様〜な服装なんだよね……。で、多分そうであろう、あの人達…………略皆合わせて『清潔外』だった。…………洗えよ。服とか。…………たまにねえ、…………獣臭が……。…………いつ洗ったの皆さん?………洗って無いの?




 ガイサース様は……………フローラルなフレーバーフレグランスだった。『香水』的な物が有って、タオルとかと同じ要領で、服に香りを纏わせてるとかで。『お香』に近いのかな?後、ガイサース様、『香り袋』も持ってたよ?………この『差』何?………言っちゃ駄目なやつですか?



 因みに。雑貨屋さんに聞いたら、『香』も『香り袋』も売ってたよ?普通に。滅茶苦茶高いとかでも無く。




 香りで獣や魔獣とやらが来るのでは?だって?いいえ。獣も魔獣も自然が好きだから『森』に棲んでるそうなので、『お花』なこうを嗅ぎ付けても、襲いに来ないそうです。しかもこの世界の獣や魔獣は、どことなく『良い薫り』がするらしい…………そして美味しいらしい。因みに攻撃しないと襲って来ないんだって。ただたまに、『間違って』『嫌いな』『人間エリア』に、来てしまうドジな子もいて、理由は良く分かっていないらしいけど、その子達は『襲って』来るので、気を付けないといけないらしい。……ガイの話と……少し違うねえ。………あのいい加減男め。ちっ。おっといけない。




 とか考えながら、掃除していた時だった。




 「友理」




 と呼ばれたのは。




 空耳だと思った。だって直夏の声だったから。




 私は声の方ーーつまり戸口の方を振り向いて、



 「直夏………」




 直夏が居た。…………直夏だ。ふらふらとそちらに向かう。この近距離がもどかしい。



 直夏が、戸口に立ったままで、余計もどかしい。



 「…………直…夏?」そう声を掛けるとーー、直夏がよろめいた。そしてそのままずるずると倒れた。慌てた私は急いでそれを支える。直夏は倒れたと言うより、へたり込んだ。



 「やっ、え?」慌てて直夏に手を伸ばす。触れたのか触れられたのか、直夏が其れを止める。『大丈夫』と。


 「ーー大丈夫?」覗き込む私。つらそうな彼。ただ大丈夫だと又繰り返し言うーー。


 「悪い、大丈夫だ…」そうは見えない。


 「……ユリ、こっちきて…」もう十分近いのに?更に手を伸ばすと、掴まれて、引き寄せられて抱き締められた。ぎゅっと。『……良かった無事だった』って。


 「直夏?…怪我してないの?」辛そうではあるけど。



 彼は『うん』と言って大丈夫だと言った。『ごめんちょっと疲れただけ。直ぐ治る。』と。更にぎゅっとして。『ーー癒やして?』とやたら甘い事を言った。やばいこの人偽者だ。



 『直夏?……本物?』って思わず不安で聞いたら、…呆れられた。真顔で『……………。なんでだよ。本物だよ。……たくっ』て。……だって。



 『…………ひとりにしてごめんな』って。………………!だって。



 「…………直夏はそんな優しい事…言わない。」「!!」




 …………。「……これからは言う。努力するから。」ユリナーーって、滅茶苦茶甘い口調で、ゆっくり直夏の腕の中に収納された私。暫くーーそうしてたーー。直夏の体温だ。涙出て来た。





 暫くして。直夏が何か感じとって。ゆっくり体を離した。ぐずってる私。やばい油断したよ。



 又呆れた顔されて、又涙を拭かれた。既視感だ。直夏の手が、いつの間にか髪を撫でていた。此れ、気持ち良くて好きだ。直夏の顔がゆっくり近付いて来て、キスされるって分かった。


 私は初めてデートした日の失敗を思い出した。……やっぱり直夏の顔が、ゆっくり、…近付いて来て。私の様子を伺う様に。ずっと好きだった人につきあってと言われて、信じられずに半信半疑のままの初デート。一緒に出掛けるのは初めてじゃ無かったのに。緊張してて。……慌てて。空気読めない子のリアクションして。『避けた』みたいな反応してしまい、『……ごめん』て直夏に言われてしまって。初キスは…………失敗した。あの日は泣きたかった。



 好きって上手に言える方法を教えて欲しい。なかったら、作って?




 「っ、ん、直…っ、」やっぱり上手に出来ない。苦しくなってしまう。粗い息を吐いて、…。恥ずかしいので直夏の腕の中に顔を埋めてしまった。直夏の体がびくりと硬直した。慌てて離れる私。



 「ごめんなさいっ」ってあやまったら、何故だが余計深いキスをされた。強く留められて、放してくれなかった。「や、癒やしてって言っ、」「今癒やされてる」ーーそれから………。また、全部直夏のペースだった。




 ※ ※ ※




 「ーユリナ、いい香りがする」そう言った直夏が私の『香り』を堪能してた。『ーなんの香り?』「昨夜ーー貰った石鹸の香り……」『貰った?』「ん、お花屋さんで貰ったーーお花の香りの石鹸………」『アロマ?』「ーーーー、うん」




 今ここにいる理由はーー後でいいかな?      帰れても帰れなくてもーーーーー






 もう直夏だけこうやって居てくれればいいーーもう側に居ないのは、いやだよ。





 それから。教会の内側で。少し落ち着いてから。話した。やっぱり今は帰れなかったーー





 ※  ※  ※





 森にいたのに、此処何処だ?


 海の目の前には、やや寂れた建物があった。


 「……十字架クロス?」



 屋根の上に十字架らしき飾りが見えた。………「…教会って事?」




 海はその建物の方へ歩みだした。




 ※ ※ ※



 「ーーごめんユリ、……無茶した」と直夏が言う。


 「…ん、……大丈夫」友理奈は少し気だるかったが、大丈夫だと言った。直夏のひざの上に座らされた格好で。……膝抱っこで、髪を撫でられ軽く頬に触れ軽いキスをされて…。ごそごそと乱れた衣類を整えた。下着がずれた位だから直せば大丈夫……。直夏がそれを手伝う様に整えてくれて少し擽ったい。



 整え終えると満足して、又自分を椅子代わりに友理奈を抱きかかえた。




 かたん




 ふいに音がして目をそちらにーー




 「ーーは? …海……? ーーなんで居るんだ?」と。





 直夏が呆れた様な言い方をするーーーー多分、『居るから』じゃ無いかなあ?それは。



 そもそもは『海』君とやらを『律』君は探しに来た訳でーーと、友理奈は思った。

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