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Ⅵ.- Ⅱ‐nd. ‐ minus. *不測の事態*

 『無関係』ーーと言う訳では無いんだけどな。



 華月 陽藍は敢えて言わなかった。激昂に激昂を重ねさせる事は無いと。


 紀端 友理奈、彼女は海と巧に、『無関係』で巻込まれた訳では無かった。


 本当の理由は直夏と彼女の『喧嘩』の方だと告げれば、直夏はどうなるだろうか?


 『……無理、だな』言える訳は無かった。『巻き込んだ』と言うならば、それはお前なのだとは。


 昨日、友理奈に会うまでは陽藍も、息子達のいざこざエネルギーの余波に、友理奈の感情が巻込まれたと予想していた。それ程に友理奈はもう直夏に、『近い関係(間柄)』なのだろうと。


 昨日友理奈を見て得た感想は、『いつかの…友美ヨメに似ている』と言う事だった。


 妻・友美は、昔から『魅力』と言うモノが『溢れでる』体質で、ナンパ、セクハラ、中傷、etc.の標的の様な存在だった。感受性が豊かな彼女は『画家』だった事がある。しかし、優秀な師に可愛がられる反面、作品よりも『彼女自身』の魅力に魅了された愚図に付け回され、襲われたり等、精神のバランスを欠く様な事ばかりに巻込まれ、神として力を得た陽藍が、彼女の『力』つまり才能や魅力を『奪った』。正確に言うならば、『預かり、保管』をした。自分自身に。魅力を中和された妻は、やっと『普通』に暮らせる様になった。やや、『残り香』の様なものは在ったが…昨日友理奈を見た『印象』だ……かつての『妻』の『其れ』に似ていたのだ…。


 其れを更に直夏の、自分達から受け継がれた、『神としてのエネルギー』が『強めて在る』ーー状態だと陽藍は思った。お互いに無意識だとしてもだ。余程『相性』が良かったのだろうーーそういう事だ。






 つまり陽藍は、『昨夜お前が(多分やんちゃして)彼女を散々に可愛がり過ぎたせいだろ?』








 とは、流石に言えなかった。隣に居る、直夏の父ーー夏央ナツも言えない様だった。


 『……夏美なら……言えるかも知れねーな。』とは思ったが、夏央ナツの妻、夏美なつみも、今は仕事中で其処には居なかった。この事態に?と言うなかれ。夏美や友人達が陽藍や仲間達の『事業』を回していたのだ。神様業務ではなく、『人間業務』の資金調達の方だ。常に『不測の事態』には『金が必要る』と陽藍は思っていた。『子育て』にもなーーと。


 彼ーー陽藍に綺麗事は不要だった。『世の中は金で回って在る』それが彼の持論であり、根底だ。『人生の付属品』みたいなものだなと。





 父が直夏を、直夏の父・夏央となんとか『やり込め』ごまかし続けていた頃ーー


 律と巧は再会していた。


 「巧っ」律がやっと見付けた弟に声を掛ける。「無事でなにより」と一安心だ。


 「律、いやでも、……海が、…逸れた。……ごめん」と、巧。


 うん、仕方無いと頷く律。とりあえず無事な巧に会えて良かった。すると巧が言う。

 「ん、でもあと、さっき言った…」「ああ、友理ちゃんね」と返す律。


 大丈夫、大丈夫と律が軽い。心配する巧。

 「…まじで?大丈夫なの?あのひとは…何?菜々実さんの友達とかなの?なんか…直兄ちゃんの事も知ってるとか?言ってたけど、…なに?(なんで?)」


 律がああと言う。「友理ちゃん?どっちかと言うと、菜々実より俺の友達かな?」と。弟、巧に説明する。

 巧がはてな?と言う顔になる。「うん?」と言うと、律が続ける。

 「友理ちゃんね、直夏の今カノ。多分そろそろ結婚?的な」と。巧が目を剥く。

 「まじで?!直兄ちゃんが?!え…彼女いたんだ……仕事忙し過ぎて……職場近くに住み始めちゃったひとが…(彼女)…いたんだ」と。


 律が意外そうに「もう3年位になるかな?俺が菜々実と結婚した頃にはもう付き合ってたよ」と。

 ………。まじか、直兄ちゃん。巧はちょっと驚いた。……知らなかった。大学卒業してから、彼女出来ないか作んないのかと思って少し心配もしてたのに……そっか、と。



 「………今までの彼女と…………タイプ確実に違う…………よね」と。 

 「そんなお約束は言ってやるなよ」と律は巧を窘めた。


 「…そんな事より、律のその格好は何?…なんでコスプレしてんの?」と。

 弟に聞かれ、てへとも言いそうな感じで答える兄。

 「まじでコスプレだね。これあれだよ。陸兄ちゃんのさ」と。ああと言う弟。

 「ゲームのキャラ・コス?…やたらと本格的なのは…なんでなの?」と、兄、三男『陸』が作った携帯電話配信サービス・アプリ、『ロープレリア』の事を思い出す……三男陸は凄く、兄弟の誰とも似て居なく、良く次男・龍兄のパソコン(ノート)を奪っては父に怒られていた。兄・龍は諦めていた『陸だから』と。訳の解からない理由で…心が広いのだと巧は思った。さてその陸の作った『小遣い稼ぎ』ゲームだが、システムが絶賛され、ハードに移築された。今や全世界に普及している大人気ゲームだ。無論移築条件として、陸本人もハード版開発に関わった。ハード版開発会社から『是非社長に!』と懇願されたとか何とか…。当人は『それは小遣い稼ぎの範疇外』と言わんばかりに華麗なるスルーをし、素知らぬ顔で大学で数学を教える講師を仕事にしているらしいのだが……巧は本当の所は、当時子供過ぎて良くは知らない……。


 さて置き、ハードに移築された際のイベントで作られたのが、律が今着ている『衣装』だった。因みにだが友理奈が『テーマ・パーク?』と思った理由も律の着ていた『衣装』のせいだった。突っ込みを入れようかと思ったが彼女は内心で『律君、モデルだし』で片付けた。そんな細やかな事だ。更に言うなら友理奈の言う『直夏が遊んでいた知り合いが作ったと言うゲーム・アプリ』とは無論だがこの『ロープレリア』の事である。巧は昔よく、夢中で遊び過ぎて、タブレット端末を父に没収された苦い思い出の代物だ。律の着ているのは、その中の『プレイヤー・衣装』である。因みに『剣士』スタイルだ。カスタマイズやジョブ・チェンジやジョブ・プラスも出来、本当に面白い夢のゲームだった。『其れ、ノーマル?(タイプ?)』等と、マニアな話に流れそうだったので、律が其れを止め、巧もそうだなと反省した。しかし気にはなり、此れだけは聞いておいた。 

そのコスはどうやって用意したのかと。律は、「お父さんに出掛けに着せられた」と答えた。

 「陸兄ちゃんが態々来てくれたから、…一緒に来てくれるのかと思って喜んだらさ、…此れ、着せられただけだった……しかも撮影された……ゲームの宣伝にアップされるよ……俺。流石の陸兄ちゃんの『計算高さ』だよ……」と。そう、三男陸は、『誰よりも』計算が好きである。数字、数学馬鹿で在る。自他共に認める其れで在る。弟(達)の災難も、金にする男ーー華月家三男、陸、得意分野は打算より算段。堅実でも在る。危うい橋等は渡りもしない。最大の武器は頭脳。スタンスは『我感せず』。クール・ビューティー為らぬ、『クール&ブレーン』と言った風で或る。


 しかし弟は可愛いらしく、「巧、これ食べな」と律は陸からの『ほら餞別。』の品を、弟に渡した。


 巧は空腹に、『餞別』の巧の大好きな『(特製)ハムカツ・サンド』を頬張った。「うまっ」と。


 もぐもぐもぐもぐもぐ……………「巧、お茶ある」と、兄が差し出した良くあるタイプのハンディな水筒から茶を飲むと、大好きな『ミルク・ティー』だった。ほっとする。そこで思う。そして言う。

 「律、これ、海の分ーー?」と。空腹と美味さに食べ過ぎてしまい、弟の分を心配した。しかし兄、律は意外過ぎる事を言った。



 「ーーいや?俺達は帰るよ?」と。……何?言ってんだ?律は?巧は律に聞き返す。

 「…海は?…見付けて一緒に連れ?帰らないと…」と。言いながらも本当は分かってる気はしたーー



 「お父さんの『ミッション』は、『巧を見付けて』帰って来る事。その時、海が巧と居なければ、『それはいい』って。」律の表情は真剣で、実行すると巧は思った。父の『ミッション』ならば、絶対だからだ。


 「…海は…どうすんの?」と巧は兄律に聞いた。律の返答は、

 「其れは『僕の仕事じゃ無い』」だったーー。巧はぐっと、いつの間にか拳を握ったが、分かったと言って、そうしてふたりは『この世界』から消えたーー海は兄と『帰る』機会を失ったのだ。


 兄、巧へと証拠にもなく切れて、まさしく『衝突』し、エネルギーの余波で『はぐれた』が為に。


 そのエネルギー『余波』が、『エネルギーの影響』を受けやすくなっていた友理奈を再び巻き込み、自分達の『近く』に『引き寄せて』しまったーーそんな事は海は知らないーーだが、父陽藍は『知らなかったから』で『そうか』と済ませてくれる程、ぬるい人物では無かった。親馬鹿故に酷く厳しかった。後何年一緒に居てやれるのか分からぬ息子に対して。出来る限り。




 帰りがけに巧は『紀端さんは?』と兄に聞いてみたが、『ヒーローは俺じゃ無い』と言われた。はてなと巧は思ったが、『すぐの役割奪ったら、俺は親友を失うかもだから』と又兄律が言うので、少し考えた。「直兄ちゃんが(自分で)迎えに来たいって事か…」と。巧が言うと律が言った。


 「物語の展開は、ドラマチックな方が、売れるに決まってるだろ?って、お父さんが。多分何か『企んでる』よ」と。




 ………お父さん………面白がってる……訳じゃ無い…………よね?と、巧は思ったのだが、帰ったら帰ったで、愛しい彼女に会えるので、弟の心配より帰れる方を喜んでいた。海も何だかんだで、お父さん(とお母さん)の子だし、大丈夫だろうと思い始めて。帰ったら律にこの前教わった、穴場のお洒落カフェに彼女を連れて行って来ようと思った。律オススメのチョコ・ケーキ、『オペラ』を食べに。それで持ち帰りで律にあげよう。今日の礼と、あと詫びに。後陸兄ちゃんも御礼言って……お父さんにも謝って……それから………



 巧は帰れたら帰れたで忙しいなと思いながら帰宅した。たった三日振りの『懐かしの我が家』に。



 「お、おかえり。」



 そう出迎えたのは、父や友や陸やましてや母でも無く、五男の『セイ』たった。


 律も巧も驚いたが、確かにそれはフランス・パリに演奏に行っていた筈の兄・青で、


 「巧、海のせいで大変だったんだってな。はは、無事で良かったな、巧。海もな、ちょっと行き過ぎたトコあるから、今度僕から言ってあげるよ。まあ、『帰って』来れたら?だけどな。」と、


 ちょっと恐い事を言いながら…。



 海にとっての『不測の事態』はーー又続く様だ。巧は再び弟海の心配をしたのだが、最早手後れであった。もう巧の手には負えなかった。

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