Ⅲ-rd. ‐Ⅱ. 奇跡って起きるみたいだよ…
「友理」名前を呼ばれた。ってこの呼び方はーー
振り返ったその先に、信じられない人が居たーーそれは、
「っ?!直夏?!」
まさかの元彼だったーーなんで、何で居るのよ?!
※ ※ ※
それは未だ昨日の事、やっと街に着いた私ーーと、旅の共の冒険者三名。何故だか街の外壁の門の所で、門の番の騎士さんとやらに(※名前は知らない)、質問攻めにされ、…困り、今の所頼みのガイの方に視線を向けると何やら言いたそうに、此方に動き掛けたーーのだが、違う方向から其れは阻止されてしまった。何か……外壁の、門の側の門とは違う出入り口らしき場所から、……目の前の方とは違う、やっぱり騎士さんなのかな?ーーが、出て来てしまったんですけど…。どうしよう…やっぱり私は中には入れて貰え無いの?と思っていると、又違う所から、援護射撃が来た。
「ちょっと待ってくれ、ソイツ、俺の連れだからな」と。今度こそガイだった。…もう少し早く、助け舟出して欲しいのですよ、ガイさん。ちょっと泣き入ってます。
其処で又、想定外の事を言われた。「アルバード、何をしているんだっ」と。
アルバードって誰だろうと思っていたら、私とさっきまで会話と言うか質問攻めと言うか、そのやり取りをしていた門番さんの事らしい。名前はアルバードさんだそうです。
怒られるっと、理由も分からず身構えてたら、騎士さん、新しく出て来た方のおにいさんが、私の方を向いて言った。「大丈夫ですか、お嬢さん。どうぞ是非こちらへ。手当てをさせていただけませんか」と。 えっ!! お金取られるのかな!? 持って無いです! ごめんなさい!
困ってとりあえず断ろう、遠慮しようと焦ると、又ガイからの助け舟。ガイ君!ナイスだ!ポイントが上がるよ! まあ、何のだと聞かれると知らないけど…(苦)
「…だから、そいつ、こっちの連れだって言ってんだろ。…連れてくな。(たくっ、金取るぞお前等、…そろそろな)」
ガイが苦々しく吐き捨てる様に言うと、騎士さん2も黙っていない。ムッとしながら、言い返して来た。ーーガイに。「彼女は酷い怪我をしている。手当てが必要だ。口出ししないで欲しいな。そちらでは、…治せないのだろう?」と。…なんかちょっと喧嘩腰…口調、怖いよ。
「いや、待って下さいっハザーズ先輩っ。先に、先に声を掛けたのは、この僕ですがっ(…何でこの人、先輩風吹かせて割込んで来たのかな? ナンパの邪魔とか本当最低だよ。ったく)」
門の番の騎士君ーーえぇと、…アル………、アルバード君!が、何故だか口を挟む。…そしてあからさまに険悪になって行くーーーガイの様子。…恐い……です。 皆様、穏やかにお願い出来ませんか? ……何か、原因は私が転んで傷だらけとか、そのせいで服とか汚して身形が汚いとか、其れな気もーーするけど。……そもそも。……………異世界とかに来てしまったこの状況が…原因なのかな。
だって私がこの世界に転がり込んでいなければ、(文字通りに)…ガイとか皆、此処で険悪な雰囲気になっていないーー筈だよね。 ガイだって、お友達だって、普通に門をくぐれて、今頃仕事終わりで一息ついて居た頃なのかも知れない。 そう思ったら凄く悲しくなって来た。
本当ごめんなさいって。
思わず怯えて反省していると、今度はナフィートさんが、思ったよりも近くに来ていて、びっくりする位近くで、私へと話し掛けた。「ユリナ、大丈夫かい? 顔色が悪いね」と。
そう言って急に私の顔に触れようとするから、びっくりし過ぎて、泣きたくなった。…近いっ、近いよっ! 何、急に? 何で触ろうとしたのっ?! あ、怪我してたらしいから、それの心配? …でもそれ、…今かな? …空気とか読んで? お願いだから。 …びっくりするから触らないで……一応私も、女の子だよ、……女子だよ、女子。 それともこの世界の男性は、あまり親しく無い、会って間も無い異性の顔とか行き成り触るの…有り…なの? 思わずって感じで、ナフィートさんから、一歩、二歩、後退ってしまった…。態度悪いかも知れないけど。
そこでもっとびっくりする位の声色と声量で、ガイがもう『叫んだ』。怒鳴るって感じで。
「ヴァズッ!」
そのままその勢いで此方に来て、私とナフィートさんの間に入る様な感じに為った。ので、少しほっとしてしまった。…ガイ、何か…やっぱりちょっと良い奴だね。……眼付きが更に悪いけども。
「…。今のはナルフィが…悪いな」と、居た事を忘れていた…ダーナスさん…君から、少し呆れたと言うか、ちょっと怒ってる様にも聞こえる声色が届いた。 何でちょっと怒ってるんだろうと思ったけど、…仕事帰りで、中々街に入れないこの状況だから仕方無いか、ちょっと怒るよね。…ごめんなさい。 今気付いたけど、ダーナス…君は、ナフィートさんを…ナルフィ…て呼んでるみたいね。色んな約し方が有るのね、ナフィートさん。…今はそれは、どうでも良いけど。何だかそう…思ってしまったので。
それが昨日の事。その後、どう収拾付けたのかと言うと。 ガイ任せでした。 ガイが騎士の人達に、『自分は回復魔法が使える』ーと言って、カードみたいな物を出して、見せていた。…身分証みたいな物なのかな…と思った。後で聞けばいい。 それからは、何やら騎士の2さん(ハザード…違うな、…ハザ…ハザーズ先輩だっ!)の方がやや何だか呻ってた…けど、騎士1の、…アルバード君…に、横目で睨まれて…苦々しく納得したみたいだった。 ナフィートさんは横にダーナスさんが張り付くみたいに、付き添って(?)騎士1&2さん達に、ダーナス君共々、ガイと同じ様なカードっぽい物を出して見せていた。…やっぱりそれが、身分証なのかなと。 で、私。 私の場合は、今度はガイがお金だと思うけど、丸いコイン状の物を何枚か騎士1&2さん達に差し出して、…何故かちょっと拒まれて、…そして更にガイの眼付きがキツくなって…て、ちょっとガイ…流石にそれ以上は…と、ちょっと引く位、私がビビった所で、騎士1のアルバード君が、其れを受取り、用紙に何か書いて、ガイに渡してた。 後で聞いたら領収書的な、仮の身分証明書らしかった。
そこでやっと門を通して貰えて、時間にしたら約10分位の揉め事だったのだけれど、物凄い疲労感だった。 そしてそのまま疲れに任せて眠りについたーーとかなら、素敵な話だったかも知れないけど、未だ続いて、ガイに連れられて行った場所は『冒険者・ギルド』って呼ばれている場所だった。うん?私、冒険者に成るのかな?と思ったら違うと言われた。
ガイが窓口と言うか(嫌、オープン・カウンターなんだけどね、そんなノリで)受付け的な所に行って、「ポーションをくれ」って。
…ポーションって何か分からなかったけど、カウンターの中のおにいさんは怪しい液体の入った瓶をガイに渡して、ガイはカウンターに先程みたいな、コイン状のお金だと思われる物を又数枚置いて…あれ、さっきのとは、コインの色が違う様な気も…そんな内に、ガイがその瓶の中身を飲み干した! えっ! それ、色やばいよっ?! と、思ったけど、そんな事よりも、液体飲んじゃったガイの身体は何だか一瞬、ぱあっと発光するし、はい?!って思う間も無く、ガイが普通にこっち戻って来て、一瞬私が思わず『びくっ』としてしまうと…だって…アノ人…光ったんだもん…一瞬…一瞬でもさ……そんな私にガイの顔が一瞬歪む。 笑いたくば笑いなさいな。 びびってるわよ。っと、開き直っていたら、…言われた。
「膝だせ、ひざ」と。 スカートから既に出てるよ…とは、恐いから言わなかった。
丁度、私の後ろにちょっと座れるベンチ風の椅子ぽい物が在って、ガイに其処へと促されてちょこんと座った。固い椅子だったけど、疲れてたから、此れ、立てなくなりそうだよ…と思ってたら、ガイ君が私の前に、座った。で、さっき手当してくれた包帯らしき布を、わざわざ外した。…何?と思ったら今度は、その怪我の辺りに手をかざして、するとその辺が『ぽわっ』と暖かく成ったーー様に感じた。…正直一瞬で良く分からなかった。けれどガイの手が其処から退くと、さっきまでじんじんと痛かった膝頭の怪我が治っていたーー
…治ってるよ。凄いね、何これ。聞こうと思って気付いた。これ、魔法なんだと。ガイ君、実は凄い奴なのかしら? とりあえず私は素直に『ありがとう…』と言っていた。 ガイは何だかそれに応えるでも無く、顔を横に逸してから、立ち上がった。…え? 何? まさか気を抜き過ぎて、見えてはいけない物を見せてしまったか…いや真逆。 私、脚は成るべく綴じていたよー…ね? 聞く訳にもいかなかったので、事故だと言う事で納得して貰おう。 良くある、良くあるよ、…無いよ。(苦) くっ不覚っ! ガイが顔を逸し続けているよ。 見えてたらごめんよ。…わざとじゃ無いんだよ。
と、そこで、今まで大人しくしていた、ナフィートさんが話し掛けて来たーーそう、二人まだ居たんです。ガイが付いて来なくて良いと言ったらしいんだけどね。…何故か二人して未だ居るのよ。
「ユリナ、良かった。痛みはもう無い?ーーどうかな? ほら、手を貸そうか、遠慮せずに摑まって。立てるかな? どう?」と。
うん、色々と、色々と、つっこみたいのよ、今。
先ずユリナって、気安くありませんか?おにいさん。
後、手当てしてくれたの、ガイです。ナフィートさんじゃ無くてね。心配してくれるのはいいよ。嬉しいよ。心配されないよりは。でもこの人……距離感近くないですか? 馴れ馴れしいって言ってしまうのは、私の性格が悪いせいなの? でも、何故かこう…ちょこちょこと、触って来ようとするこの感じが…私の気にし過ぎなの? 悪気が無ければ、其れは…いいの? 出そうに為る溜息を必死に堪えると、下を向いた顔を覗き込む様に、又ナフィートさんの顔が近付いて来た。ーー息を飲んだ。 もう少しで悲鳴を上げてしまう所だったーー不覚にも。何に対しての不覚だか、解らなく為っていたーーその時、
一瞬事態が理解出来なくて、後から思考回路が追い付いた。
ナフィートさんの身体が、向こう側に飛んだのだ。
その音が後からやって来た感じだった。
ナフィートさんが、受付けのカウンターの方側に、正しく『すっ飛んだ』ーーそして派手な音を立てて背中からずしゃあっと、着地ーーー最早逆スライディングをしたーーー
呆気に取られたが、その事態は、ガイが起こしたのだと、その時気付いた。ガイは治療の後、私の斜め前辺りに立って居たので、その様にナフィートさんが入って来たーーみたいな構図と言うか図式だったのだ。なので横に居たガイに、首根っこと言える部分を掴まれて、そのまま後方に投げ飛ばされた訳だ。ガッガイ、しれっと何してるのっと思ったら、そこでダーナスの声がした。(もう私は、君とか疲れた…誰か気持ち分かるかな?)
「あ~今のもナルフィが悪いな。ガイ、ガイがやらなきゃオレがやってたなあ~それ」
……どれよ、それって言うのは。…何か恐っ。ダーナス、…。どうして笑顔なのかな?
投げ飛ばされたナフィートさんは…なんだか悔しそうだった。けれど何故だが文句を言い出す事は無かった。 そしてその後は、ガイに睨まれて、無言のまま、二人とは別れた。ダーナスの方はガイに軽く手をあげ、合図の様な挨拶なのかをしてから、ナフィートさんと連れだって行ったけど、ナフィートさんの方は、悔しそうに顔を歪めたまま、去って行った。ので私は二人に挨拶すら出来なかったけど、ガイの様子を見てると、そんな場合では無いと思った。
大丈夫なのかな? ガイになんて言って謝ったら良いのかが、よく分からなかった。大丈夫じゃないよね。ダーナスは分からないけど、ナフィートさんは怒っていた。と思う。でもガイも怒っている。初めから…仲が悪いとかでは無いよね? 多分仲良いんだよね? 何か言おうと思ったら、ふいにガイに腕を掴まれて、『目立つから』と促された。そのまま連れて行かれる。少し歩き辛いが、離してと言える雰囲気では無かった。
そのまま宿に連れて行かれて、部屋にお仕込まれ、ちょっと待ってろと言われ部屋の中で待つと、5分位で戻って来て、着替えであろう服を渡された。…ガイの服だよね?と、受け取りつつも思えば、『それしかない』と言われた。これしか無いのに借りて良いのか聞くと、私に貸せるのはと言う意味だと分かった。…貸してくれるらしい。しかし、私自身が汚れたまま着替えたら、着替えも汚してしまうよ…と思い、身体を洗いたいと言うと無理だと言われた。着替えを汚すからと言うと、又ちょっと待ってろと言われ、今度はもう少し待っていたら、戻って来た。水らしい物ーー嫌、液体(多分お湯じゃなくてお水。)が入った入れ物と、タオルには遠い布を持って。『これしか無いらしいから、我慢しろ』と。えっとせめて、顔って洗えませんか?と聞いたら、『それ(水)で洗え』って。まじかガイさん。…まじっぽいな。
「井戸で今汲んできた水だーー綺麗だよ」と。違う其処じゃ無いよ。でももういいよ。
「ありがとう。」と言っておいた。桶(みたいな入れ物)はどうすれば良いか聞いてみたら、此れ宿のだよねと思ったら違った。ガイの私物だった。布も『洗浄の魔法掛けてあるから清潔だ』と。いたれりつくせり、だった。もう一度有難うと、じゃあ借りるねと言って、後で返しに行くと言ったら、『部屋から出るな』と言われた。…ガイの部屋って隣だよね。…出掛けるの?と思ったら、『晩飯の調達』だそうで。それまで待っていろと。(絶対部屋から出るなと)
ガイが実は凄く良い奴なんだと、気付いてしまった…私の長い一日が……その日やっと終わったのだった。
多分お金は取られるけど。…仕事だしね。
そんな事を考えながら眠りについた、その翌日、宿から出た私はーー其処で信じ難い人に遭遇した訳だ。
「ーーなんで…いる…の?」
「友理ちゃん、大丈夫っ?」そう直夏の横で私に聞いたのは、直夏の友人のーー律君と言う青年だった。
どうして二人が、此処に居るの? 誰かーー誰か教えて? まさか此処、新手のアトラクション・シティとかじゃ無いーーよね?
コスプレとか出来る感じのさ。 そんな呑気な話じゃ無いよね?これ、 …現実だよね?
夢じゃ無いなら、テーマ・パークじゃ無いなら…奇跡とかですか?
何で直夏と律君が居るの? お願いだから、説明してよっ




