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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

もう居ない君にもう一度会いたい

作者: ポンタ

俺は終わりゆくこの世界がゲームだってことを知っている。そして隣に居たあの子の事も覚えている。

俺が彼女と出会ったのはこのゲームが開始されてから数日後のことだった。召喚獣としてあの子の前に出た時は緊張と不安でいっぱいだったなぁ。

あの子は満面の笑顔で俺を抱きしめた。俺は狼で抱きしめられないのが今でも悔しい。それからあの子とたくさんの冒険をした。


楽しかったなあの時は。

あの子が自分ばかりに戦わせては悪いと自分で初めて戦った時。まだレベルが低くって逆に倒それそうになったっけ。その後俺があっさり倒した後は彼女の機嫌はすごく悪かったなぁ。あの時は大変だった宥めるのが。


そしてあの時は嬉しかった。

初めて大規模なクエストに挑んで大金を手に入れた時。真っ先に自分の装備ではなく俺の装備を買ってくれた事。答えられるはずがないのにどっちがいい?なんて聞いてさ。でもちゃっかり俺の好きな方を買ってくれる所は流石だ。


その装備で挑んだフィールドボスはすごく強くって負けてしまったけど君は涙を堪えながらもっと強くなるって誓い合ったっけ。


それからは危なく火山に落ちそうになったり。奇襲を受けてデスペナを受けたり。大ギルドに誘われて入ってみたり。そこで喧嘩をして辞めたり。その腹いせにボスに挑んだらレアドロップしたり。


楽しかったなぁ。でも、そんな幸せも長くは続かなかった。

最初はちょっとログアウトの時間が変わる程度だった。プレイヤーがログアウトしている間俺はプライベートルームと呼ばれる場所で彼女を待つ。その間は自由に動き回れるんだけど、彼女が居ないのは退屈だ。


それからしばらくは変わらなかったがある日彼女がパッタリと来なくなってしまった。


どうしたのかな、親に怒られてるのかな?ゲームが嫌になった?勉強が忙しい?もしかして俺の事が嫌いになった?


しばらくして彼女は戻ってきた。嬉しくてつい甘え過ぎたけど彼女はいつも通りちょっと悲しそうに俺を見つめた。


「ガル、私ね。病気なの」


その時初めて聞かされた言葉の意味はしばらくは分からなかった。その後も何度か長くログアウトしていたけどそれでも楽しかった。いつでも君がいたから。


それから2年がすぎた頃。彼女のログインの頻度はますます悪くなっていった。君の顔が見る度にやつれて行くのが目に見えてわかった。


その頃には俺は狼の最終進化系であるトワイライトウルフになっていたのでログインしている間は彼女を乗せていろんな所に行った。


虹が見える草原や遊園地のようなカジノ。景色が綺麗な場所を見る度に君はとてもいい顔になるんだ。その顔がずっと続くといいなって思ってた。


最後に彼女がログインしたのは何時だろうか。

サービス開始から5周年の記念感謝祭の日にログインして俺に黒い首輪をくれた時以来か。


久しぶりに会えていっぱい甘えていると彼女は悲しそうな顔をして今度手術をすること。そして成功する確率が非常に低いこと。そしてもう俺と会えないかもしれない事を泣きながらに伝えてログアウトしてしまった。


俺はAI。所詮はデータで感情は作り物だとしても。彼女を守りたいという気持ちは誰にも負けないつもりだ。


窓から見えるゲームの景色が冬になり夏になりまた冬になっても俺は待ち続けた。そして運営からこれまでの感謝とサービス終了のお知らせが届いても俺は待ち続けた。


あと1時間でこのゲームは終わる。同時に俺も削除されてこの世界から消されてしまうだろう。だけど、俺は彼女に、あの子に最後にもう一度会いたい。


欲張りかもしれない。もう何年もログインしてないしもしかしたらもう居ないのかも知れない。ただそれでも、俺は待ち続ける。世界が終わるまで。




ピコンッそんな音が聞こえた。何時ぶりだろうかこの音はログインする時の音だ。


暫くするとベットの上に光が集まり人の形を成していく。


「、、、おはよう。ガル」


いつの日かと変わらぬ調子で出てきた彼女に俺は飛びついた。


どこに行ってた。病気は治ったのか。今まで何してた。なんで急にログインした。


思っていたことが全てどうでも良くなるほど俺は今幸せだ。


「少し街を見て回ろうか!ガル!」


「ウォン!」


窓から見える街はサービス終了間近ということでいつもとは真逆の賑わいを見せていた。


魔法を空に向けて撃っていたり花火型のアイテムを空に打ち上げたり。騒がしい街中を俺と彼女の二人で歩く。


途中で昔一緒にプレイした連中を見つけてはしゃいだりしている彼女を見て、良かったと思った。


そしてサービス終了5分前の知らせが来ると彼女はプライベートルームに戻ってきた。どうやら最後は二人で過ごすらしい。


プライベートルームにきた俺達はこれまでのことを話しながらサービス終了のカウントダウンを待つ。


残り1分になった時。彼女がふと言った。


「ガル、私ね。もう長くないの。このゲームの終わりみたいに、もうすぐ終わっちゃうんだ。でもね、怖くないの。私にはお父さんやお母さん。そして、ガルがいるもんね!」


残り時間10秒。街の中でありがとー!や愛してたぜー!と言ってログアウトする連中でごった返す中。俺は彼女の膝の上でその時を待っていた。


「じゃあね、ガル。私ねあなたが居てくれて楽しかった。いっぱい思い出をくれて、ありがとう」


そしてカウンターが0になった時。俺と彼女はホログラムとなりながら見つめ合う。


「ありがとうねガル。また会えるといいね」


『ありがとう。ミハネ』


彼女が消える寸前。俺の思った事が声に出た。運営の計らいかな。聴こえていたかな俺の声は。


また、会えるといいな。どこかの世界で。


そう思いながら俺は静かに消えた



ありがとうございます

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