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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

Termine

作者: 黎鴉

短いのですが、よろしくおねがいします。


「じゃあ、また明日ね。 お兄ちゃん。」


 彼女の言葉に青年は微かに顔を歪めた。


 それに気づかずに自分に背を向け、市場の人混みに紛れていく彼女を目で追いながら彼は今にも泣きだしそうな震えた声で呟く。


「……ごめんね。僕には明日なんてないんだ。」


 今日の深夜には、青年は文字通りこの世から消える(・・・・・・・・)ことになる。


 だから、今日会ったのは――――あの子は知らないものの――――お別れのつもりだった。


 義理ではあるが、大切な妹だ。別れぐらいは言っておきたい。特に、この最期(結末)が望んでのものではない場合は。


 覚悟は十分すぎるほどにした筈だった。しかしその一言はその覚悟さえも揺らがせてしまうものだった。


 なぜだろうか。昔から彼は再会の約束には弱かった。


 しかし、それでも、魔王である彼女(・・)の存在は徐々にではあるが着実に世界を蝕んできている。


 この国の隣の大国、リーア帝国の上層部では魔王を討伐するための騎士団を編成しようという話も上がっているという噂だ。


 まぁ、普通の人間には、勇者や魔王に傷は与えられても致命傷を与えたり倒すことは不可能なのだから意味はないのだが、怪我をすれば痛いものは痛い。


 それに、この国の、仮にも王子である自分を殺させるだなんて、そんな重荷を他人に背負わせる訳にはいかない。だから、青年は約束した。


 ―――― 同時にお互いの命を絶つことを


 魔王は勇者にしか殺せず、勇者は魔王にしか殺せない。その上、《神》とやらのおかげで自殺も許されない。とれる選択肢はこれしかなかった。


 青年は一段、また一段と、彼女が囚われている塔の頂上に足を進める。


 遂に、天辺まで辿り着いた。ここにいるのは、青年(勇者)少女(魔王)だけ。


 初めて見るくらいに晴れやかな雲ひとつない空。そこを舞う美しい飛竜の群れ。


「死ぬにはもってこいの日だね」


 少女(魔王)は少し悲しげに、それでもうれしそうに笑う。


「…………そうだね。でも、ずっと一緒、だよ」


「そうね。これから訪れる死の瞬間も、何度生まれ変わっても。ずっと一緒」


 青年と少女は微笑みあう。青年のシルバーブロンドの髪と少女の眩いブロンドの髪が、ほのかに夏の匂いのする風に凪いだ。


 そして、二人はお互いの武器を取り出した。青年は輝く白金の輝きの直剣を。少女は漆黒の細剣を。


 さいごに二人は、左右が逆なだけの同色の瞳を交わした。緋と蒼、蒼と緋のオッドアイが、同時に甘く細められる。


「さようなら。僕の憎んだセカイ」

「さようなら。私の愛したセカイ」


 一瞬後、二人の剣は同時にお互いの心臓を貫いた。彼らは剣が心臓に突き刺さったまま相手を強く抱き締め、そして同時に喀血した。


 さいごまで、青年と少女は微笑んでいた。自分の愛する人の剣に心臓を貫かれた姿で抱き合いながら。


 そうして、彼らは静かに息絶えた。息絶えてもなお、青年と少女の腕は固くお互いを抱き締め、その口元には穏やかな笑みが浮かんでいた。

いつか、この作品の連載版(このようになった経緯など)を書くかもしれません。その時は、文才も全くない私の作品を、気晴らし程度にでも読んでいただければ幸いです。

恋愛物を書いたこともなく、そもそもが初投稿なのでアドバイス等お願いします。

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