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産廃水滸伝 ~産廃Gメン伝説~ 15 黒いダイヤ  作者: 石渡正佳
ファイル15 黒いダイヤ
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林道ゲリラ事件

 北海道警が硫酸ピッチ不法投棄事件を摘発したという報道に犬咬市の廃対課内はざわついていた。林道脇の山林に次々に穴を掘ってはピッチを埋めるという単純な手口だったが、首都圏の業者から茨城の大洗港を経由してフェリーで苫小牧港まで運搬されたと捜査経過が公表されたからだ。

 「伊刈おまえもこい」仙道に呼ばれて一緒に環境部長室に行くと、所轄の栂池署長がやってきていた。産対課に出向している警察官ではトップの光岡課長補佐(警視)は既に入室していた。

 「今朝の新聞報道はもうご存知かと思いますが、実は北海道で不法投棄された硫酸ピッチが犬咬市の高千穂重機で製造された可能性があります」栂池署長が自ら説明した。

 「高千穂重機の背景は?」仙道が尋ねた。

 「九重社長は双和会との関係が深い人物です」光岡警視が代わって答えた。「これまでも偽造高速道路券の販売や不法滞在外国人ホステスの斡旋で検挙されたことがあります。そのほか差押不動産の占有、賭博マネーロンダリングにも手を出していて闇のビジネスのデパートみたいな会社です。儲かると聞けばなんにでも手を出すけちなやつですが最近まで不正軽油の製造にも手を出していたようです。仙道技監と伊刈班長が調査されているソウル交易に保管されているピッチも大半が高千穂重機から出たものと思われます」

 「それじゃ北海道の事件にもソウル交易の金本が関与しているんですか」伊刈が意外そうな顔で言った。

 「それはわかりません。ただ背後にピッチを処理する広域のシンジケートがあるようです」

 「その中心が高千穂重機だということですか」

 「いや高千穂重機は不正軽油の製造業者にすぎません。首都圏のピッチの流れを仕切っているのはマツダエンジニアリングの海老原という男です」栂池署長が説明した。

 「海老原は栃木県警にパクられたのでは」仙道が言った。

 「そうなんです。しかし海老原が検挙されてからむしろゲリラ事件が多発しているようです」光岡が答えた。

 「組織が解体したからですか」伊刈が言った。

 「そうかもしれません。これまでは不正軽油の製造と硫酸ピッチの違法処分がバランスしていましたが、海老原の逮捕でそのバランスが崩れたようです」

 「なるほど扇面ヶ浦の黒い滝事件も北海道の林道の事件も、海老原の逮捕で需給のバランスが崩れたせいだということですか」仙道が深く頷いた。

 「アウトローはアウトローなりにバランスが取れていたということです」光岡が念を押すように言った。

 高千穂重機の九重もマツダエンジニアリングの海老原も伊刈には初耳だった。不法投棄のことならなんでも知っているつもりだったが、不正軽油と硫酸ピッチの世界にはほとんど無頓着だったことを思い知らされた。ソウル交易の金本は二人の名前を出さなかった。それは二人が金本よりも格上の大物で、名前を出したら危ないと思ったからだ。

 「海老原は検挙済み、そうしたら次は九重の検挙ですね」伊刈が聞いた。

 「残念ながら、県税が行ってみたところでは高千穂重機の倉庫はモヌケの殻だったそうです。製造施設をどこかに移してしまったようで、ピッチもなかったということです」光岡が言った。

 「行ってみなきゃわかりませんよ」伊刈が発言した。

 「でも県税の検査から隠せるような小さな設備じゃないですよ」

 「県税とは観点が違います。製造設備もドラム缶も帳簿もなくても何かあるはずです」

 「伊刈さん、九重は危険な人物ですよ」栂池が言った。

 「大丈夫です。危険でない人物なんかいません。県警が行くなというなら行きませんが」

 「所轄としては別件で九重を挙げることを検討しています。叩けばいろいろ埃は出るでしょうから。しかし伊刈さんが調べることを妨げはしません」

 「金本はどうですか」

 「捜査情報なので」光岡が首を振った。

 「いや捜査に協力してもらうんだからかまわないでしょう」栂池が言った。

 「署長がそう言うなら金本の内偵も進めています。ただ金本は九重をかばっているようです。金本が口を割れば九重も挙げられるんですが難しそうなので別件逮捕を検討しているんです」

 「別件でいいんですか」

 「と言いますと」

 「伊刈そのへんにしとけ」仙道が伊刈を窘めるように見た。

 「いえなんでもないです」

 伊刈も露骨な警察批判はまずいと思いとどまった。警察的には別件であっても九重を検挙すれば面子は立つ。金本も九重を庇うことで組織内の立場を守れる。しかしそれでは真相に自ら蓋をするようなものだと言いたかった。

 「とにかく高千穂重機に行ってみます。現場を見ないことには何も始まりません」

 「ぜひ結果はご報告ください」栂池署長は頼もしそうに伊刈の発言に頷いた。

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