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産廃水滸伝 ~産廃Gメン伝説~ 15 黒いダイヤ  作者: 石渡正佳
ファイル15 黒いダイヤ
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忠告

 翌朝キング土木の王寺が伊刈に電話をかけてきた。「伊刈さん、油を調べてんでしょう」王寺がずばりと言った。

 「え、なんで知ってんの」

 「伊刈さんとこの役所の車のナンバーばればれすよ。昨日ローリーを追っかけてたでしょう」

 「まいったな。車変えるしかないか」

 「そんな必要ないけどよ、油はやべえって。ゴミとはレベルがちがあよ。俺らはみいんな知ってっけどよ、こればっかりは伊刈さんでもムリだわ。やばすぎますよ」

 「何がやばいのかな」

 「だから本気にさせちゃいけませんて」

 「調べてるだけでもやばいのかな」

 「誰に聞いたか知らないけどあの会社にはほんとに触んない方がいいすよ」

 「ユニバーサルのことか」

 「だめだめ言ったらだめだって」

 「なんでそんなにみんな気を使うんだ」

 「伊刈さんならわかると思うけどさ、そこが一番上じゃないんだわ。その上もあるし、その上の上もあるっしょ」

 「ガソリンスタンドは表向き不正軽油撲滅とかいうポスター貼ってるけど、裏じゃけっこうどこも不正軽油を入れておくタンクを持ってるんだね」

 「だからそれを言ったらだめだって」

 「もしかして全部やってんのかな」

 「全部じゃないよ。タンクを作る土地がなきゃできない。街中の小さいスタンドはムリだよ」

 「なるほど」

 「昔はね、A重油で重機やダンプを回すなんざ常識だったんだよ。それから春先に余っちまった灯油をちょこっとくすねて混ぜたりとかね。取締りを厳しくしたもんだからだんだん本格的になっちゃったんだよ」

 「GSが買った不正軽油はどうやって売ってるの」

 「そのまんまじゃ質が悪いからほんとの軽油と混ぜて売るんだよ」

 「そこまで常識になっていて、どうしてお目こぼしになってるのかな」

 「パチンコ屋の換金とおんなじだよ。法律なあんてあってないようなもんだよ」

 「法律が甘いのは先生に献金してるからかな」

 「それもあるでしょうよ。金本がやってるピッチの処理なんて油のほんとに下の下の最後のカスみたいなのをさらってるだけだけど、それだって儲かるんだから上はどんなに儲かるかって思いますね」

 「金本を知ってるんだ」

 「そらあ知ってるよ。伊刈さんと仲良くしてんのもね。とにかく油を追うのはやめられないかね」

 「確かに世界で起こっている戦争はみんな油の利権が原因だからね。それで何万人も殺されているからね」

 「ほんとそうっすよ。油がほしくてアメリカみたいな国だって血眼じゃないすか。伊刈さんがどうこうできるってもんじゃないすよ。ましてや俺たちみたいな一生カスだけ食ってるゴキブリになんもできないすからね。だから俺はね、約束してほしいんだ。伊刈さん油には金輪際もう触らないってね」

 「それでみんなで触らぬ神に祟りなしってことなのか。わかったよ、もう止めるよ」

 「ほんとに頼んますよ」

 「金本を知ってるなら豊川も知ってるかい」

 「ああよく知ってるよ。一時ははぶりがよかったみてえだけど長続きはしねえと思ったよ。かええそうなことしたわな」

 「奥さんのシンディさんはどうなったか知ってる」

 「ああ知ってるよ。ゆんべ病院で死んだってよ。子供もやべえみてえだな」

 「エイズで」

 「まあね」

 「そっか。それじゃ金本も落ち込んでんだろうな」

 「金本は逃げたよ。伊刈さん知らないの」

 「え、どういうこと」

 「豊川が死んだんであいつのとこにケツが回ってんだ。それで逃げたわ」

 伊刈はしばし沈黙した。

 「王寺さんには関係ないことかもしれないけどできたら頼みがあるんだけど」

 「なんだい」

 「シンディさんの葬式出してやってくれないかな」

 「ふうんなるほど」

 「あんな病気で死ぬってことは母国でもこっちでもよっぽどひどい仕事してたってことでしょう。それで豊川さんと知り合って子供ができて、これからってときに最後はこれじゃかわいそうだよ」伊刈は豊川の自宅の鏡台の上にあったシンディの着飾った写真を思い出していた。

 「シンディに会ったことあるのかい。かわいい顔した女だったよな」

 「会ったことないですよ。写真で見ただけ」

 「そっかわかったよ、俺に任せとけ。伊刈さんの頼みだ。これで俺も男になれるわ」

 約束どおり王寺はシンディの葬式を出した。そのあと王寺もまた行方不明になってしまった。

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