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産廃水滸伝 ~産廃Gメン伝説~ 15 黒いダイヤ  作者: 石渡正佳
ファイル15 黒いダイヤ
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会議の罠

 古森は犬咬市の倉庫からの硫酸ピッチの搬出は始めたものの、八鹿市の倉庫は手付かずのまま放置していた。犬咬市とは違って八鹿市は政令市ではないので、産廃の指導権限がなかったが、隣接するコンビニから苦情に対応しないわけにはいかず、県庁に撤去指導を要請していた。

 そこで県庁が八鹿市役所に古森を呼び出して撤去指導のための会議を開催することになった。犬咬市には県庁から会議に参加するように要請がなかったが、たまたま八鹿市役所に状況確認の電話をした喜多が会議のことを聞いた。

 「やっと県庁が八鹿のピッチの指導を始めるそうです」喜多が伊刈に報告した。

 「対応が遅いなあ。で、どうするんだって」

 「明日市役所で会議だそうです」

 「会議か。なるほど」

 「古森が来るそうですよ」

 「じゃ渡りに船だ。うちも出よう」

 「呼ばれてないのにいいんですか」

 「うちもまだ千五百本残ってんだ。八鹿の千本より多いだろう」

 伊刈の方から県庁に会議の参加を申し入れ、翌日喜多を連れて八鹿市に向かった。会議は県庁産業廃棄物課の三瓶指導班長、塚本主査の二人が仕切る形で始まった。

 「どうして犬咬ばかり撤去してるんですか。八鹿はどうするつもりですか」三瓶が眉間に皺を寄せながら言った。

 「やりますよ、もちろんやります。やらないとは言ってないでしょう」頭ごなしに言われて古森はむっとしたように答えた。

 「撤去計画書を出してもらえますか」

 「なんでそんな面倒なものを。犬咬じゃ出せと言われてないですよ」

 「県では出してもらうことになってます」

 「なら出しますよ。出せばいいんですね」

 「マニフェストも必ず一台出すごとに切ってください」

 「犬咬じゃ自社運搬なら要らないと言われましたけどね」

 「県ではそういうわけにはいきません。自社運搬でも必ずマニフェストを交付してください」

 「わかりました。ご指導には従います」

 「いつから始めますか」

 「今撤去する会社と交渉してるとこだから、ちょっと待ってくださいよ。それでさ相談なんですけどね、犬咬の分を全部終わりにしてから八鹿って順番じゃだめなんですかねえ」

 「どうして犬咬が先なんですか」

 「フォークが一台しかないんですよ。あっちこっち移動すると効率が悪いからね。今犬咬の倉庫に置いてあるからね。それにね」

 「なんですか」

 「犬咬の倉庫のオーナーが早く片せってうるさいんだよね」

 「八鹿を先にしてください」

 「それは命令なんですか」

 「命令が欲しいなら出しますよ」三瓶がむっとしたように言った。

 「八鹿市も少し始めてもらえないですか」やり取りをじっと聞いていた八鹿市役所の盛長衛生課長が恐る恐るという感じで発言した。

 「ちょっと発言いいですか」伊刈が手を挙げた。

 全員が伊刈の発言に注目した。

 「今日はオブザーバー的に出席させてもらったんで県庁に任せるつもりでいましたけど、例えば二週間ずつ交互に出すってことでどうですか。二週間あれば五百本出せるでしょう。犬咬は残りあと千五百本くらい、八鹿は千本くらいだから、五百本ずつ出せば五回で終わるでしょう。今は犬咬にフォークがあるから、犬咬、八鹿、犬咬、八鹿、犬咬って順番でどうですか」伊刈の妥協案の提案に頷く顔が多かった。

 「古森さん、今の案はどうですか」三瓶も伊刈の案に乗った。

 「いっぺんにやっちゃったほうがいいんだけど、皆さんがそうしろっていうなら面倒だけどしょうがないですね」古森は渋々頷いた。

 「撤去先は近畿ケミカルですか」塚本が発言した。

 「いえ今度から北陸ニッソに変更します」

 「聞かない会社ですねえ。そこは許可あるんですか」

 「ありますよ。許可証持ってきました」吉森はしわくちゃの書類を塚本に提示した。FAXで取り寄せた北陸ニッソの許可証だった。

 「普通産廃の許可証じゃだめですよ。特管産廃(特別管理産業廃棄物)の許可はあるんですか」塚本が書類をチェックしながら言った。

 「特管もばんばんやってますよ。管理型の最終処分場もあるし、東北じゃ一番の会社ですよ。ここなら間違いありません」

 「じゃ後で特管の許可証をもらえるかな」三瓶が言った。

 「いいですよ」

 「普通産廃の許可証も必要じゃないかな。硫酸ピッチだってPHが落ちてるのもあるし全部が全部特管産廃じゃないから」伊刈が言った。この発言が後に伊刈の身を危うくする罠になろうとは、この時は予想だにしなかった。

 「運搬はどこがやるんですか」塚本が再び発言した。

 「持ち込んだ会社にやらせますよ」

 「なんて会社かな」

 「一社じゃないんですよ。いろいろですから、後でまとめて報告しますよ」

 「じゃ犬咬と八鹿を交互に五百本ずつ出すってことでいいですね」三瓶が会議を締め括った。

 「いいですよ」古森が撤去を約束したので会議は波乱もなく終了した。

 こんなに簡単に撤去を約束してほんとにできるのかと、会議室を提供した八鹿市の盛長課長はかえって不安な表情だった。

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