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泡姫  作者: 小湊春乃
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はじまり

泡姫ってタイトルは、決して変な意味じゃないですので。

この浮世では、報われない恋。

つまり片想いをしている人間が7割以上居るらしい。

恋だけではなく繋がらない気持ちや、やり場のない喜怒哀楽を抱えた人間(前者を重複する者もいる)をも含めると99.9パーセントの人間が浮世にしがみつき人知れず苦しみを抱えているのだという。


これは、老若男女の心の深い傷みを癒す若きヒーラー、橘ヒナの物語集である。


橘ヒナ。以降「ヒナ」。

ヒナは自称ヒーラーの26歳で、色が白く華奢な体つきをしている。

腰まで伸びたストレートロングの漆黒の髪。

透明な夜空のように透き通った黒い瞳。

その目元にかかるほどに厚みを帯びながら伸びた前髪。

少し切れ長だが、丸い黒い瞳。

また、高くはないが形のいい鼻は先端を尖らせ、猫の鼻がそうであるかのようにスッとまっすぐ彼女の薄い唇に向かって伸びている。

それらの構成要素は、ヒナを神秘的な女性に仕上げている。

男好きがするのはもちろんのことながら、同性の視線をも集める美しいものでもある。



今宵もヒナは、スマホアプリのラインを通してそんな哀しき仔羊と出逢おうとしていた。


ヒナと迷える仔羊との出会いはラインの機能であるID検索から始まる。

ユーザーの多くは、人気ミュージシャンの名曲のタイトルや、バンド名、もしくは歴史上の人物や、名所などを参考にIDを登録している。


それらのキーワードを入れて検索さえすればしばしば相手が見つかり、そこから出会いが生まれると予測した。


ヒナは、仔羊がたち普段その心の奥に眠らせている深い闇を癒したいと思ったのだ。

そうすることで、ヒナはヒナ自身の抱えた闇を癒せるだろうと思ったから。

ヒナの繊細すぎる感受性や勘の鋭さはひとつの才能であった。

孤独を愛するけれどとても傷つきやすい寂しがり屋のヒナ。


さて、ラインがキッカケで始まるというと性行為を目的とした男女がする出会い系のようであるが、ヒナは実際に会うことを望まないし相手がそれを望んできたとしてもやり取りはラインメッセージ上だけで行われるというスタンス。


これはヒナが始めた遊びではない真剣なゲーム。

生まれつきのヒーラーであるヒナに見初められた者はその人生が転換することとなるであろう。良い転換になるのか?暗転するのか?

それは今のヒナにすらも分からない。

神や悪魔にすら分からない。


今宵、消えそうな弱音を抱えた迷える仔羊は見つかるのだろうか?

頑張って書いていきますので、よろしくお願いします

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