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Q︰駄目かしら? A︰なのですっ!

 大丈夫、まだ一ヶ月は経ってない、大丈夫……。

 という自己暗示。

 街の中心部にある、他の家よりも大きな、しかし屋敷とまでは行かないような、そんな家。そこが、レイの実家、ヴィルゴート家だった。

「こんなことを言っては何だけど……貴族と言う割には、随分と……」

 その家を見て、思わず呟くメリナ。その後に続く言葉が何か分かったレイは、彼女が言う前に口を開く。

「小さいですよね。元が平民だったから、というのもあるんですけど、家族揃ってあまり派手なのは好きじゃなくって……それも平民だったからなのかもしれませんけど。一応これでも、貴族になった時に少し大きくしたんですよ。あ、ちなみに、隣にあるのがラナの家です」

 その言葉に隣に目を向けると、そちらにも周りと比べると少し豪華な家が。ラナの実家だ。実はラナの家、平民としては結構裕福だったりするのだ。

「わざわざ建て直さなくったって、引っ越せばよかったのに……」

 と、その当時を思い出すようにしながら言うラナ。レイは少しだけ照れたようにしながら、

「うん、その話も出たんだけどね……産まれた時からずっと一緒だったラナとは、離れたくないな、って……」

 家が隣な上、親同士も仲が良く、更に産まれた日も近い二人。この街では仲の良さで有名な――ついでに、世話焼きな大人達を「いつになったら付き合うんだ」とヤキモキさせることでも有名な幼馴染だった。

「レイ、そんな……もう」

 美しい金色の髪を照れ隠しのように弄りながら呟くラナ。しかし言葉が出なかったのか、そんな意味の無いような文になってしまう。

(ふふっ、微笑ましいわね……なんか、本当に弟を見てる気分)

 メリナさん、テレテレモジモジする二人を見てニヤニヤ。

「え、えっと……それじゃあ、中に入りましょうか」

「そ、そうねっ! あれだけ騒ぎになったから、きっとおばさまやフェリアちゃんにももう伝わってるはずだし、あまり待たせる訳にはいかないわよね! ……あ、おじさまにも」

(不憫……レイのお父さん――あっ、一応私のお父さんということにもなるのかしら? まぁとにかく、不憫……)

 先程のレイの発言と同じ様に、忘れられていたかのように付け加えられるお父さん。しかし、少なくともこの二人やヴィルゴート家の面々からはこんな扱いである。

 閑話休題。

 自宅の門を開け、少し進んで扉に手をかけるレイ。その直後――

「おにーさま!」

「うわっ!?」

 中から扉が開き、女の子が飛び出してくる。それを咄嗟に受け止めるレイ。

「おかえりなさいなのです、おにーさまっ!」

 レイの腕の中で顔を上げるその女の子の顔には、満面の笑みが浮かんでいる。レイと同じ銀髪に、中性的なレイの顔を女の子寄りにしたようなその顔。彼女がレイの妹であることは、メリナにもすぐに分かった。

「ただいま、フェリア。母様はいるかな?」

「はいっ! おにーさまが帰って来たと聞いて、歓迎の準備をしているのです! あ、一応おとーさまもいます!」

「そっか、ありがとう。父様もいるんだね。別にいなくても良かったのに」

 笑顔でそんなことを言い出すレイ。普段の彼からは想像も出来ない言葉に、メリナが思わず目を丸くする。

「あっ、ラナおねーさまも、ご一緒にどうですか?」

「ありがとう、フェリアちゃん。なら折角だから……そうだ、あたしのお父さんとお母さんを呼んで来ても?」

「はいっ! 大歓迎なのです!」

「うん、それじゃあ呼んで――」

 と、隣の家に向かおうとするラナを、レイが引き止める。

「ラナ、その前に……」

 メリナにチラリと目を向けるレイ。

「あ、そうだったわね。フェリアちゃんは任せて」

「よろしく。……フェリア、少しいいかな?」

「? はい、どうしたのです?」

「うん、この人のことなんだけど……」

 レイが目を向けるのを見て、初めてメリナを認識するフェリア。

「……どちら様なのです?」

 首を傾げるフェリアに、レイはシンプルに答えることにする。

「この人はメリナさん。僕達の姉様になる予定の――」

「却下! なのです!」

「えっと、フェリア、話は最後まで……」

「おにーさまは渡さないのですっ!」

「フェリアちゃん、メリナさんはあなたのお姉ちゃんにも――」

「うー……フェリアはおにーさまがいればいいのです……」

「……うーん」

 困ったな、と、頭をかくレイ。チラリとメリナを見る。彼女は小さく笑うと前へ。

「……フェリアちゃん、初めまして。私、メリナっていうの」

「……おにーさまに聞いたのです」

「ふふっ、そうよね。ねぇ、フェリアちゃん。レイの――お兄様のこと、好き?」

「当たり前なのです」

「そうね、すっごくいい人だものね。私もね、レイのこと好き。フェリアちゃんと一緒」

「好き……恋人になりたい、のです?」

「うーん、それはラナちゃんに譲らないといけないかな。そうじゃなくて、フェリアちゃんがお兄様のこと大好きなのと同じ好きなの。だから私は、レイに姉になってくださいって言われた時、いいよ、って言ったし、私もこんな弟が欲しいと思ったのよ」

 メリナはそこで一旦言葉を切ると、若干涙目になっているフェリアの目を真っ直ぐに見つめ、再び口を開く。

「私ね、フェリアちゃんも好き。まだ会ったばかりだけど、こんなに可愛い子見たことないもの。だからね、フェリアちゃんのお姉さんにもなってあげたいの。フェリアちゃんみたいな妹がいたら絶対楽しいと思うから。……駄目、かしら?」

「……うぅ……」

 小さく唸り、考えるようにするフェリア。メリナはそんな彼女の瞳を見つめ続ける。

「うー……」

「フェリア、僕からもお願い」

「……おにーさまがそう言うなら……あっ、そうなのです! おにーさまのおねーさまになりたければ、フェリアを認めさせてみろ! なのですっ!」

 ビシィッ! と、メリナに指を突きつけて言うフェリア。メリナは一瞬キョトンとした表情を浮かべたあと、思わず吹き出してしまう。

「ふ、ふふっ……フェリアちゃん、可愛いっ!」

 そのまま、フェリアを思いきり抱きしめるメリナ。

「うっ……こ、これは、おかーさまよりも大きいのです……こんなの、凶、器……はふぁ」

 フェリア、陥落。

「えっと……なんかよく分かんないけど、あたし、別にいらなかったってこと? ……まぁ、いいわ。それじゃあレイ、お母さん達呼んでくるわね!」

「あぁ、うん、行ってらっしゃい。僕達は先に入ってるけど、勝手に入っちゃっていいからね」

「分かったー!」

 ブンブンと手を振りながら家へと向かうラナ。レイはそれを自分も手を振って見届けると、未だフェリアを抱きしめるメリナに声をかけ、中へと入って行くのであった。

 フェリアの語尾は「〜なのです」にするって決めてた。あまりくどくなり過ぎないように注意して行きたいところです。が、既に乱発してしまった気配。いや、多分大丈夫でしょう。

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