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Q︰あたしに会いに……? A︰紹介したい人が。

 ノルマ達成! 割とギリギリでした……。書くの遅すぎ……。

 レイの家があるスィロネクト王国は、サラクの街があったカルネルフ王国の二つ隣に位置する。

 それはつまり、帰るのにも一苦労ということで。

「……レイ。もしかして、今までもずっと歩きで旅をしてきたの?」

「はい。たまに、行き先が同じ人の馬車に乗せてもらったりして……あ、噂をすれば、ですよ」

 後ろを振り向くレイにつられて、メリナも後ろに目を向ける。するとそちらには、商人のものなのか荷物を積んでいるらしき馬車が。

 特に止めた訳でもないのに、馬車はレイ達の横で停止する。

「おや、姉弟で旅ですかな?」

 声をかけて来たのは、御者台に座っていたいかにも商人らしき男。それにレイはにこやかに答える。

「はい、そうなんです」

「ほう、仲睦まじくて良い事だ。ちなみにどちらへ?」

「スィロネクト王国です」

「おぉ、これはまた遠くへ……。しかし偶然ですな。私も同じ方向なのですよ。間のポルネア共和国までですがね」

「そうなんですか、偶然ですね!」

「そうですねぇ、凄い偶然もあるものだ。……そうだ、ポルネアまででよければ乗っていきますかな? 丁度私も、一人退屈していたところだったんですよ」

「一人……? 護衛とかはいないんですか?」

「えぇ。大した商品もない、帰り道ですからな。幸いこの辺りは魔物の類はいないし、盗賊も大した旨味もないような相手をわざわざ襲ったりもしないでしょう」

「なるほど……そういうことなら、お言葉に甘えさせて頂きますね」

「そうしてください」

 そんなこんなで。

 途中まで、馬車に乗っていくことになりました。

「……えぇ……」

「いやー、幸運でしたね」

 そういう加護だもの。


 ✦ ✦ ✦ ✦ ✦


「ありがとうございました、商人さん」

「いえいえ。こちらこそ、おかげで楽しい帰り道でしたよ」

「…………」

 手を振って離れていく商人。それをにこやかに見送るレイ。そして、何とも言えない表情のメリナ。

「姉様?」

「……いえ、なんでもないわ。うん。なんでもない」

 こういう加護なんだ、と、諦めることにした。賢明な判断である。

「さ、折角ですし一泊してから出発しましょうか」

 んーっ、と伸びをして、そう提案するレイ。

「そうね。……そう、なんだけど、一ついい?」

「? 姉様、どうしました?」

「えっと……ここから先も、こんな風に運任せで帰るのかなーって……」

「あぁ……運任せと聞くと不安になりますよね。僕も最初はこれでいいのかな、って感じだったんですけど、次第に慣れますよ」

「つまり……」

「運任せでもなんとかなっちゃうのが僕の加護なんです」

「あっはい」

 気のせいか、レイもどこか諦めたような表情を。……きっと、なんだかんだで苦労してきたのだろう。

「それじゃあ、宿を探しましょうか。おあつらえ向きに空いている宿があるはずですから」

「はずって……本当に、便利な加護ね」

「こういう時は、ですけどね」

 肩を竦めながら言うレイ。

「さ、とりあえず今日はゆっくり休んで、また明日頑張りましょうか!」

「宿もそうだけど……レイの加護のおかげで、思ったより楽な道程になりそうね」

 結論から言うと。

 部屋が広くて従業員の対応がよくて食事が美味しくてお手頃価格、そんなコスパ最強の宿が丁度一室空いていた。義姉に甘えたい義弟と義弟に甘えてほしい義姉。同室に異論はなかった。

 んでもって道程。

 長くても一日も歩けば馬車に拾ってもらえた二人。めっちゃ、楽だった。


 ✦ ✦ ✦ ✦ ✦


「ありがとうございました」

「いや、いいってことよ。また会おうぜ!」

 丁度同じ行き先だった冒険者の馬車に乗せてもらい(有力な冒険者は移動用に馬車を持つことが多い)、スィロネクト王国はカインズの街、レイの故郷へと到着した二人。

「んーっ……一年ぶりですね!」

 思いきり腕を伸ばし、懐かしの空気を吸い込むレイ。メリナは、そんな彼を微笑ましげに見る。レイの幸運に関しては、完全に慣れた。慣れなきゃやってらんない。

「お、レイ君じゃないか! そうか、そろそろ一年だったな」

「あ、武器屋のおじさん! お久しぶりです!」

 なんて、若干強面の男性が話しかけてきたのを皮切りに、

「ん? レイ君だって?」

「おや、久しぶりだねぇ」

「「「わー、レイお兄ちゃん、帰ってきたー!」」」

 大勢の人に囲まれてしまうレイ。彼は少し困ったように笑いつつも、とても嬉しそうにしている。

(凄い、人気者なのね……)

 そんなレイを見て、メリナは微笑を浮かべる。

 レイは、一年ごとに短い時間しかこの街にはいられないという。それでも尚、皆にここまで歓迎されるのだ。彼女はそんな人間を今まで知らなかった。

 と、そこへ。

「レイっ!」

「! この声……!」

 少女の声が飛び込んでくる。喜びが手に取るように分かる、そんな声だ。

「ねぇ、レイが帰ってきたって本当なの!? ちょっ、ど、どいてっ!」

 その声の元であろう少女が、人混みをかき分けかき分け、中心にいるレイのもとへ真っ直ぐ向かって行く。

 そうして最後の人の間からひょっこり顔を出した少女。彼女はレイの姿を認めると、その瞳を潤ませ――

「レイっ!!」

「ラナ!」

 レイに、思いきり飛びつく。レイはそんな彼女を尻もちをつきながらも受け止めると、自分に強く抱きつくラナに応えるように、彼女を抱きしめ返す。

「うぅ、レイぃ……一年は長いよぉ……」

「……そうだね。僕も会いたかったよ、ラナ……」

(へぇ……そういう関係)

 レイの、数少ない敬語を使わない相手であるラナ。二人のやり取りを見て、メリナさん、ニヤニヤ。ふと見ると、周りの皆もニヤニヤ。

「……でも、これでも、いつもよりは少し早く帰ってきてるんだ」

「? そうなの……? ハッ! ま、まさか、あたしに会いたくて……もう、レイったr」

「実は、紹介したい人がいてさ」

「……え? う、嘘……」

 絶望したような表情になるラナ。レイはそんな彼女には気づかず、メリナの方へ。

「と、年上……しかも、おっぱい大きい……そ、そうよね、あたしなんか……」

「ラナ、皆さん、この人が――」

「レ、レ、レイの――」

「僕の姉様になる人です!」

「バカーーっ! ……え?」

 思いきり叫び、直後、硬直。

「え? え? ね、姉様? えっ?」

 すぐに復帰し(たとは少し言い難いが)、狼狽えるラナ。

「こ、恋人とかじゃ、ないの……?」

「ううん、違うよ。さすがに、ここまで年の離れた人は……」

「カハッ」

 メリナ、レイの何気ない一言に大ダメージ。

「そ、そうよねっ! 凄い年の差だもんね! よかったぁ……」

「グフッ」

 更なるダメージ。メリナはその場に崩れ落ちた。集まる同情の視線。子供は無邪気なのだ。

「さ、母様やフェリアにも報告しないと! ……あぁ、後父様にも」

 忘れられていたかのように付け加えられる父様。増える同情の視線。向かう先はヴィルゴート家。

「あ、あたしも行くっ! フェリアちゃん抑えないといけないし……」

「……やっぱり、フェリアは認めてくれないよね……。はぁ」

 思わず漏れるため息。前途多難な彼にも、ほんの少しだけ同情の視線が集まった。

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