あとがき
どうも、作者の池崎数也です。
本編のあとがき欄でも書きましたが、これまで拙作にお付き合いいただきありがとうございました。
拙作を読んでくださった方、感想欄に書き込んでくださった方、誤字脱字の報告をくださった方、レビューをくださった方、皆々様に改めて感謝を申し上げます。
さて、これまでの作品同様、色々とネタバレやら裏話やらを含めた『あとがき』を書ければと思います。
いきなりあとがきから読まれる方は滅多にいないと思いますが(これまでの作品で何人かいました)、ネタバレでも裏話でもなんでも来い、拙作への印象が変わる可能性があってもオーケー、という方は下へスクロールされてください。
改めまして、池崎数也です。
そしてまずは重ねて御礼申し上げます。
このあとがきが読まれているか、仮に読まれているとしても掲載を始めた当初に読んでくださっていた方に完結までお付き合いいただけたのか、わかりません。ですが、敢えて書かせていただきます。
6年半もの長きに渡り、拙作にお付き合いいただきありがとうございました。
掲載を始めたのが2017年の10月1日、この『あとがき』を書いているのが2024年の3月と、ずいぶん時間が経ちました。掲載当初は毎日更新していたものの、いつしか延びに延び、物語終盤では数ヶ月更新が滞ることも珍しくありませんでした。申し訳ございません。
また、途中まではいただいたご感想に返信をしていましたが、途中から返信できなくなって申し訳なく思っています。内容には目を通していましたが、返信する気力が尽きていました。
それでも更新の度に感想をくださった皆々様に感謝しつつ、本作の『あとがき』を以下につらつらと書いていきたいと思います。
・完結した感想
前作『平和の守護者』の『あとがき』で、私はこう書きました。
『似たような文量の物語を書けと言われれば、多分無理じゃないかなと思います』
――と。
書いてんじゃん、というツッコミを自分に入れながら完結まで書き上げた次第です。
約3年間で約300万字、300話の『平和の守護者』と比べ、『世知辛異世界転生記』は約6年半で約330万字、話数は膨らんで633話となりました。
小説を書き始めて早20年。書いた年月の長さは半生をとうに過ぎましたが、前作でやらかしたことをまたやらかしている自分に呆れるやら悲しくなるやらです。途中までは意識していたものの、好き勝手に書いてしまいました。
この6年半、様々なことがありました。拙作のヒロインと同じ名前の病気が流行したり、災害に見舞われたり、親知らずの抜歯のために入院して手術を受けたり、魔女の一撃を食らって救急車で搬送されたりと、世間も私事も問わず本当に色々なことがありました。
更新が滞った時も『もう打ち切りで良いかな』とか『次の作品に手を出してしまおうか』と悩んだり、『そもそも創作意欲が湧かない……書こうとしても指が動かない……』と物書きとして初となるスランプに悩まされたりとかで、グダついてもいました。
それでもなんとか完結までこれました。今はひとまず、安堵の気持ちでいっぱいです。
・『世知辛異世界転生記』のコンセプトについて
作者基準ですが、俗に言う『俺Tueee』です。一度書いてみたかったんです。
ただし主人公が最強ではなく、条件を満たせばある程度強くなれる素養があって、転生した影響で人間性が削れてて、思考回路は食欲に直結。直感に優れるものの常識や知識が足りないため策略や謀略では役に立たない。そんな塩梅の主人公が織り成す物語でした。
過去作の長編が異世界転移の『異世界の王様』、現代ファンタジーの『平和の守護者』という流れだったので、今度は異世界転生モノを書いてみたい、という思いから始めました。
異世界転生モノということでチート能力、ハーレム、ファンタジー要素は入れたいと思いつつチート能力である『熱量解放』には伏線を仕込み、ハーレムは主人公の人間性を削ることでハーレム(家族)に、ファンタジー要素は『異世界の王様』の世界観を流用しました。
あとはいつも通り強いおじさまキャラを放り込んでぐつぐつ煮込んで完成です。
・主人公について
前作の主人公は特殊な能力こそあるものの努力!訓練!努力!実戦!努力!とひたすら努力するタイプだったので、別のタイプの主人公にしたいと思って誕生したのがレウルスです。
チート能力というよりも転生した影響でバグった能力を持ち、転生したことを差し引いても異世界の人間と比べて異質なことがわかって自分自身に疑問を持ってしまう。しかしながら前世でまがりなりにも成人かつ社会人として生活していた経験から、疑問を持ちながらも折り合いをつけてしまえる部分もあって……と少し複雑な性格になりました。その一方で脳が食欲に侵されていました。
転生した際に混ざった『喰らうモノ』の影響で敵対した相手限定ですが殺人に対する忌避感もほとんどなく、魔物が相手だと能力的に有利を取りやすい。ただし人間魔物問わず戦闘技術が高い相手だと一転して不利になりやすく、ごり押しできない相手には勝ちにくいのがレウルスです。
『熱量解放』によって短時間のみ格上殺しが可能になるものの、継戦能力が低いため使いどころが難しい。作中でも触れましたがジルバのように高い戦闘技術を持つ相手だと相性が悪く、立場的にあまり想定しなかったもののナタリアが相性最悪。そんな感じの歪な強さを持った主人公でした。
なお、趣味嗜好は前世基準のため、ナタリアみたいな成熟した女性キャラが序盤からパーティメンバーにいて秋波を向けられていたらすぐにゴールしていたと思います。それを避けるためにパーティメンバーが幼い感じになってしまったという裏話もあったりで……。
前世のこともあったため、女性に対しては恋をするよりも愛を抱くタイプで、転生してからの境遇も酷かったことから家族愛に飢えていました。
書いていて割と楽しいキャラではありましたが、次回作を書くことがあれば努力家タイプの主人公にしよう、と思うキャラでもありました。
・愛着が湧いたキャラ
今作でもたくさんのキャラクターが登場しました。当初の予定になかったキャラが増えたり、予定していた死亡フラグを圧し折ったり……なんだかんだで愛着の湧くキャラが多かったです。
中でも上位三人を挙げるとすれば、一位ルヴィリア、二位コルラード、三位レベッカになります。
ルヴィリアは当初の予定だと死亡するキャラでした。というか、レウルスが殺してしまう予定でした。しかしいざ書いてみると愛着が湧き、いくつか考えていたルートを混ぜて生存させることに……本当は嫁いだ先で吸血種スラウス(極悪人ver)が作中以上に大暴れして吸血種もどきになって、討伐に来たレウルスに斬られる予定でした。
一度目の告白と同じように、満天の星空と満月の下で二度目の告白をしつつ息を引き取る予定でした。変更して良かったと思います。
コルラードは初登場時は小物っぽい感じにしつつ、実際は世事に長けて多芸、強さはほどほどながらもレウルスにとっては剣術の師。自分の能力が生まれついてのものであると薄々察していたレウルスにとって、様々な技能、技術を努力で身に着けて器用万能に近い水準まで磨いたコルラードは常に尊敬に値する人物だった、という形で書いていたら作者も好きになったキャラでした。
書いていてギャップが楽しいといいますか、前作でもそうでしたがこういうおじさんキャラって書くのが楽しいです。その影響もあって当初は予定していなかったアリスが登場し、コルラードを恋的な意味で仕留めるならガンガン行こうぜタイプだよね、となりました。ナタリアと政略結婚して常時胃痛を抱えるエンドも考えていましたが。
そして最後にレベッカですが、尖ったキャラは書いていて楽しいのもあって愛着が沸きました。生まれ持っての能力によって周囲を狂わせ、自分も狂い、それでいて完全には壊れきれなくて。自分の『魅了』の力を受けても耐えきって否定してくれる誰かを求めていたのがレベッカでした。
『魅了』の力を耐えきるというのがレベッカにとって重要で、ジルバのように最初から通じない、あるいは通じてしまうのは論外。耐えて否定することができる=過去、それができなかった者達が悪いという逃避の深層心理がありました。同時に、レウルスにとっても人間らしい感情を強制的に呼び起こすレベッカはキーパーソンでした。
レウルスの人間部分には『魅了』が効くものの、『喰らうモノ』には効かず効果が半減。それによってレベッカが望んだ『王子様』として執着される形となりました。
・世界観について
今作の世界観は過去作『異世界の王様』から流用したものになります。もちろん今作だけを読んでも問題がないよう書いたつもりではありますが、根底の部分には『異世界の王様』がありました。
そのため大陸名や地名、作中で登場する魔法や魔力の扱い、魔物や亜人、魔法具やその他アイテムなど、今作で付け足したものもありますが基本的には踏襲した形になります。
誤解を招きそうな表現になりますがスターシステムみたいな感じで過去作を作品に活かしたい、という思いがありました。現在の小説家になろう様に当時の読者の方がどれぐらい残っているかわかりませんが、昔拙作を読んでくださった方が覚えていてくださったらニヤリとできる要素を入れたいな、と。
ただ、もっと掘り下げたかったですが作者の腕が伴いませんでした。初めての試みでしたがもっと上手く演出したかったと後悔が残ります。
作中に登場したシンとスノウ=リトル、レウルスが戦った魔法人形のレンゲなど、掘り下げたかったもののその背景は今作の本筋にはそこまで関係ないな、と……前者二人はお助けキャラといいますか、世界観の説明に使いたかったものの作者の出し方が下手だったためレウルスに戦闘技術の大切さを教えてお蔵入りしました。
余談ですがシンは三十代、スノウは十代、レンゲの素体も十代でした。
・書籍化&コミカライズについて
前作に続き、今作でも書籍化することができて嬉しく思っております。
書籍化だけでなくコミカライズもしていただき、思いのほか好評で第2部という形で書籍化された分を超えて漫画化していただけたりと、驚くやら喜ぶやらで。
それまで作者の脳内だけにあった映像が漫画という形で描かれているのを見ると、小説の挿絵とは異なるなんとも形容しがたい感慨が湧きました。
書籍化およびコミカライズのお声がけをしてくださったTOブックス様、書籍版のデザイン担当のそゐち様、コミカライズの作画を担当された麻日隆様、葵瑞希様には改めて御礼申し上げます。
他にも色々と書きたいことはありますが、長くなりすぎるのでこれぐらいにして筆を置きたいと思います。
拙作にお付き合いいただきありがとうございました。ここまで『あとがき』を読んでくださり、重ねて御礼申し上げます。
またいつか、拙作の閑話か別の作品でお目にかける機会がありましたら少しでも覗いていただければ幸いに思います。