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世知辛異世界転生記(漫画版タイトル:餓死転生 ~奴隷少年は魔物を喰らって覚醒す!~ )  作者: 池崎数也
11章:真実と成長とそれぞれの想い

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第476話:いざ特訓 その1

 スペランツァの町から西へと徒歩で三分ほど離れた森の中。そこには、レウルス達――レウルスとエリザ、サラとミーア、ネディに加え、ナタリアとコルラード、そしてヴァーニルとティナの姿があった。


 レウルスは『首狩り』の剣と短剣、あとは普段着と軽装だが、エリザは冒険者として活動する際の防具を全て身に着け、手には雷の杖を握っている。また、ミーアも防具こそつけていないものの手に鎚を握っていた。


 サラとネディは普段通り無手だが、ナタリアは動きやすいようレモナの町でも着ていた戦装束を身に纏い、手には愛用の杖を持っている。コルラードも剣こそ身に着けているが防具の類はなく、ティナも薄青色の着物一つと非常に軽装だった。


 ヴァーニルは普段通り人の姿に『変化』したまま、催し物を見かけた暇人のような顔付きでレウルス達についてきている。


 中途半端に武装した形だが、レウルス達がわざわざ森の中へと足を運んだ理由は単純である。ナタリアに弟子入りしたエリザの特訓と、レウルスと『契約』したミーアの調子を確かめるためだ。

 レベッカやクリスが戻ってこず、ナタリアも取れる時間が限られているため、余裕がある内に済ませてしまおうと考えたのだ。


 町の周囲、空堀から五十メートルほどは木々を伐採し終わり平地と化しているが、アメンドーラ男爵領全体から見れば平地に変わった場所はほんの微々たるものである。

 歩き続けると木々が鬱蒼と生い茂る森の中へと入ってしまうが、レウルス達が足を向けた先には木々がない、ぽっかりと開いた平地が広がっていた。


 以前、キマイラと遭遇した際にレウルスが暴れに暴れ、木をまとめて数十本切断してしまった場所である。体を動かすには丁度良い広さがあるということで、この場所を選んだのだ。


 ティナが同行しているのは、レウルス達だけでなくナタリアまで町を離れるとなると監視の目がなくなるからだ。今更ティナが何かを仕出かすとも思えなかったが、グレイゴ教徒を一人で町に置いておくというのも気が咎めたのである。


 そうして円状に木が伐採された場所まで移動すると、ナタリアがエリザを連れて距離を取り、早速指導に取りかかる。


「ふぅ……ようやく時間が取れたわけだけど、どうかしら? “わたしの話”を聞いてから、雷魔法以外の属性魔法を使えそうな感覚があったりする?」

「あるような、ないような……曖昧過ぎてよくわかりません」


 師事するということでエリザも素の口調に戻り、なおかつ敬語を心がけて答える。それを聞いたナタリアは苦笑し、エリザの肩を軽く叩いた。


「お嬢さん……いえ、指導するのだからエリザと呼ぶけど、固くなると上手くいくものも失敗するわ。普段通りを心がけなさいな」

「は、はい……いや、うむ。わかったのじゃ」


 エリザは何度も頷いてから雷の杖を構える。そしてエリザが魔力を練り上げ始めるのを見て、ナタリアは鋭く目を細めた。


「そうね……あなたの場合、最初の頃は『詠唱』をして、無理矢理雷魔法を使っていたわよね。それなら、あなたにとって属性魔法を扱えるというのは“当然のこと”だと強く意識してみなさい。雷魔法だけでなく、他の属性魔法も当然使えると……ね」

「う、うむっ!」


 ナタリアの言葉にエリザは大きな声で返答し、集中するために目を閉じる。それを見たナタリアはエリザの集中を乱さないよう小さな、それでいて落ち着きを含んだ声色で話し始めた。


「あなたも知っている通り、魔法というのは魔力を使った世界への干渉よ。どう意識するかによって使いやすさも変わるし、威力にも影響するわ。ああ、返事は良いからそのまま集中していなさい」

「…………」

「そう、良い子ね。あなたの場合、『強化』を使えるし『詠唱』や杖が必要とはいっても雷魔法も使える。スラウスが様々な属性魔法を使えた以上、“あなたも同じように”魔法を発現できる……そう自分に言い聞かせて」

「…………」


 ナタリアの言葉を聞きながらもエリザは集中し続け、自身の魔力に意識を向ける。


 自身よりも卓越した吸血種(スラウス)が魔法を使うところを何度も見たからか、以前と比べれば僅かながら感覚の変化がある。それを感じ取ったエリザは少しずつ、感覚の変化を手繰り寄せるようにして深く、自己に埋没していく。


(雷魔法以外の属性魔法を使えるのは当然のこと……火炎魔法も使えるし、氷魔法も使える、風魔法も使える……)


 そう自分に言い聞かせながら、エリザはスラウスが魔法を使っていた光景を思い出す。


 下級魔法に中級魔法、更には合体魔法。魔法使いとして、吸血種として、何十歩も先に在るスラウスの魔法を鮮明に思い出していく。


 レウルスと『契約』でつながっているため、魔力に不足はない。むしろ以前と比べて多く感じるほどで、エリザは拙いながらも自身の魔力を手繰り、操っていく。


 ――だが、それだけで成功するのならば苦労はしない。


「……………………」


 数分ほど集中し続けたエリザだったが、額に汗が浮かび始める。それでもなお集中を保とうとするエリザを見て、不意にナタリアが両手を叩いた。


「っ!? な、なんじゃ!?」


 パチン、と乾いた音が響き、エリザは虚を突かれたように集中を乱す。そしてナタリアへと視線を向けると、当のナタリアは意地悪げに微笑んだ。


「この程度の音で集中を乱すと危険よ? 今は訓練中で魔法も発現していなかったけど、強力な魔法を撃とうとしている最中に集中を乱すとどうなるか……わかるわね?」

「う、む……わかるのじゃ」


 強くなりたいと願うエリザではあるが、味方ごと魔法で吹き飛んだら洒落にならないのだ。そのため少しだけ不満そうにしながらも素直に頷くと、ナタリアは笑みの種類を変えて柔らかく微笑む。


「それなら次はわたしの杖を持ってみなさいな。この杖はね、王都の職人が風の『宝玉』を使って作り上げた逸品よ。風魔法が使いやすく、なおかつ魔力の消耗も抑えてくれる魔法具なの」


 そう言いつつ、ナタリアはエリザへと杖を手渡す。エリザは自身の雷の杖をナタリアへ渡すと、ナタリアの杖を恐々握り締めた。逸品だと聞いたこともそうだが、ナタリアが長年使ってきたであろう“相棒”を手渡されたことに恐縮したのである。


 それだけ信頼されているのか、あるいは期待されているのか。エリザは大事そうに、両手で杖を握り締めて意識を集中させる。


(あ……この杖……)


 軽く魔力を通してみると、返事でもするように杖から手応えが返ってきた。エリザは返ってきた手応えを追いかけるように魔力を込め続け、杖が促すままに軽く振るう。


 ――草木を揺らすように、一陣の風が吹く。


 それは込めた魔力と比べれば遥かに弱く、攻撃には到底使えないような微風だった。それでも簡単に風魔法が使えたことにエリザは驚愕し、自らが握る杖に視線を落とす。


「……その杖は魔法具だけど、才能がない者が使っても風魔法は使えないわ。魔力を込めると特定の効果を発揮する魔法具もあるけど、その杖はあくまで風魔法を使える者……わたしが使うためのものだもの」

「風魔法を……使える者、だけ……?」


 エリザはナタリアの話を聞き、呆然と呟く。


「ええ……つまり、風魔法を扱える才能があなたにはあるということよ」


 エリザの疑問を肯定するようにナタリアが言う。それを聞いたエリザはじわじわと、数秒かけて理解した。


「やっ――」 

「ただし!」


 喜びの声を上げようとしたエリザだったが、それを遮るようにしてナタリアが声を張り上げる。真剣かつ気迫の籠った声にエリザは呼吸を乱され、ヒュ、と喉を鳴らす。


「現状ではあくまで“扱える才能”がある、というだけよ。鍛えなければ意味はないし、わたしの杖がなければ使えないようでは話にならない……わかるわね?」

「は、はい……」


 ナタリアが意図するところを理解し、エリザは恥ずかしそうに顔を赤らめた。風魔法を扱えるという“希望”に目が眩みかけたが、それだけでは何の意味もないのである。


 肩を縮こまらせるエリザの姿に、ナタリアは小さく笑って頷いてみせた。


「それでも、下級でも良いから風魔法を扱えるようになれば戦いの幅が広がるわ。この調子で他の属性魔法も扱えるかどうか確認していきましょうか」

「――はいっ!」


 ナタリアの言葉に目を輝かせ、元気いっぱいに返事をするエリザだった。








 そして、そんなエリザとナタリアから離れた場所では、レウルスがミーアと向き合っていた。


 その周囲にはサラやネディ、コルラードやティナ、ヴァーニルもいる。


「……あの、なんでボクの方にばっかり人がいるの?」


 さすがに気になったミーアが尋ねると、ヴァーニルがからかうようにして笑う。


「人がいる、という表現も面白いものよな。我は火龍ぞ」

「あっ、わたしは精霊よ! 火の精霊!」

「……ネディも精霊」


 ヴァーニルの言葉にサラが乗り、何故かネディも同調した。そんな周囲の声を聞いたレウルスは苦笑する。


「ティナも妖狐? の子供らしいし、人は俺とコルラードさんだけだもんな」

「そう……であるな」

「…………」


 何故か曖昧に答えるコルラードと、『この人は何を言っているんだろう?』とでも言いたげに無言でレウルスを見るティナ。


 そんな二人の反応に首を傾げたレウルスだったが、今はミーアのことを優先すべきだと意識を切り替える。


「それで? 『契約』を結んでみてどうだ?」

「うーん……今まで以上に魔力が漲っている感じがする、かな。それも、その、えっと……れ、レウルス君とつながっているのが、わ、わかる? あ、ま、魔力の話ね!」

「ん? おう」


 きちんと『契約』で魔力がつながっているのは、レウルスも感じ取っていた。そのため頷きを返すと、ミーアが顔を赤くしながら鎚をブンブンと振り回しているのが見える。


「魔力が増えたということは、それだけで『強化』も強まるということであるな……魔力が乏しい身としては羨ましい話である」

「コルラードさんも『契約』を結んでみます?」


 冗談混じりにレウルスが問いかけると、それを聞いたヴァーニルが真顔で釘を刺す。


「やめておけ。そこの只人が貴様と『契約』を結んだら爆散するぞ」


 それを聞いた瞬間、コルラードはそっと腹部に手を当て、瞬時にレウルスから距離を取った。


「やめるのだぞ? 絶対に、やめるのだぞ?」

「貴様が受け入れなければどのみち『契約』は結ばれん。だから安心せよ」


 どうやら敵対した相手と一方的に『契約』を結んで爆散させるという荒業は成り立たないようだ。レウルスはそんなことを考えながらミーアに水を向ける。


「魔力以外ではどうだ? 何か変わったことはないか?」 

「んんー……何か、できそうな感じ?」

「何かって?」


 ミーアは鎚を一通り振り回してから首を傾げる。これまでと比べれば鎚を振る速度が速くなり、なおかつ風切り音も強いものへと変化していた。


「これまで『強化』しか使ったことがないからよくわからないけど……もしかしたら属性魔法……かも?」


 ミーアは己の体に起こった変化をそう評する。魔力が足りなかっただけで元々素養があったのか、あるいはレウルスとの『契約』で変化したのか、“感覚”に変化が起こっているのだ。


 そんなミーアの言葉が聞こえたのか、ヴァーニルが心底不思議そうな顔をする。


「ん? 純血のドワーフが扱える属性魔法といえば土魔法に決まっているだろう?」

「…………は?」


 あっさりとミーアが抱えている違和感に関して言及するヴァーニルに、レウルスは思わず真顔を向けてしまった。すると、ヴァーニルは何故そんな顔を向けられるのかと困惑する。


「なんだ貴様……もしや我の話をまったく聞いておらんのか? それとも聞いた上で忘れているのか? 我、何度もドワーフのことを“土の民”だと言っていたはずだが……」


 そう言って、ヴァーニルは拗ねたように目を逸らすのだった。

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― 新着の感想 ―
[一言] エリザ、キャラ崩壊す。
[一言] 森の民はエルフだっけ? 水の民、風の民、卑の民とかも居るんだろうか?(目反らし
[一言] 純粋な『人』はコルラードさんしかいなかったようですw レウルス四天王(笑)、『風』のエルザと『地』のミーア、どっちの成長が早いでしょうね?
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