第425話:対話 その3
久しぶりに前書きをお借りいたします。
本日(9/9)、拙作のコミカライズ版の5話目後半が掲載されます。
よろしければそちらもお読みいただければ幸いに思います。
レウルスがぶつけた疑問。
それを聞いたレベッカは小さく口元を歪め、クリスとティナは僅かに雰囲気を変える。しかしレベッカはともかく、クリスとティナは狐の面をつけているため表情の変化は読み取れない。
「その質問に答える前に、こちらから一つ質問を……ねえ王子様、貴方はグレイゴ教がどんな宗教だって聞いているのかしら? とても気になるわ。ええ、とても……ね」
質問に質問を返してくるレベッカだが、おそらくは自身が持つ知識とすり合わせるためなのだろう。そう判断したレウルスは自身の記憶をひっくり返す。
初めてグレイゴ教に関して話を聞いたのは、エステルと初めて会った時のことだ。
その時はラヴァル廃棄街を襲ったキマイラとの戦いで負った傷を治してくれたからと、コロナの勧めで礼を言いに行ったのが始まりである。
エステルと出会い、この世界における宗教に関して知った。あくまでレウルスが住まうカルデヴァ大陸における宗教に関してでしかないが、レウルスにとっては初めて得た宗教に関する情報である。
それが精霊教とグレイゴ教であり、“これまで”でレウルスは二つの宗教に関して色々と知ったわけだが、この時レウルスの脳裏に浮かんだのは最初に聞いたエステルの話だった。
「……強力な魔物を“神”として信仰しているけど、率先して倒してもいる変な宗教だ」
「ふふっ……変な宗教ですか」
精霊教に対して似たようなことを言えば笑顔でジルバが殴りかかってきそうだが、レウルスの返答を聞いたレベッカはどこか面白そうに笑う。
「それなら追加で質問しましょうか。グレイゴ教徒が探し回り、率先して倒している強力な魔物とは一体何かしら?」
「そりゃあ上級の魔物……」
そこまで答えたところでレウルスは言葉を途切れさせる。
上級の魔物と一口に言っても、その全てが危険というわけではない。中にはユニコーンのアクシスのように、人間と共存できる魔物も存在するだろう。レウルスにとっては喧嘩友達であるヴァーニルのように、“戦いを挑まなければ”比較的冷静な魔物もいる。
そんな上級の魔物も含めて良いのかと迷ったレウルスだが、グレイゴ教の基準でいえばアクシスもヴァーニルも倒すべき相手なのかもしれない。だが、これまでの経験からレウルスは疑問を覚えた。
(そういえばコイツら、町に噂を流してミーア達ドワーフの集団を狩ろうとしてたな。結局は『城崩し』が出たからうやむやになってたけど、いくら集団とはいえドワーフは中級の魔物だぞ……)
ミーア達が元々山の中に築いていた村には、五十人近いドワーフがいた。中級の魔物でもそれだけ数が揃えば上級に匹敵するのかもしれないが、“本物”の上級の魔物には及ばないだろう。
レウルスがこれまで出会っただけでも『城崩し』にスライム、アクシスに『首狩り』、そしてヴァーニルと弱い相手はいなかった。
ミーア達だけで勝てる相手がいるとすれば、精々『城崩し』ぐらいだろう。それも徹底的に装備を整え、『城崩し』の外皮を貫ける武器を用意しなければ蹴散らされるだけで終わるはずである。
アクシスに関しては実力の底が見えなかったが、少なくとも『首狩り』が逃げ回るぐらいには腕が立つはずだ。スライムやヴァーニルに関しては勝ち目があるとは思えず、『首狩り』に関しても反応できる速度がなければ首を落とされるだけで終わる。
それでも一応とはいえ、ドワーフの集団は上級に相当していたのか。それとも“別の目的”があったのか。
「……上級の魔物だとは思うんだが、そうでない可能性も否定できねえな」
結局、言葉に迷ったレウルスが出した結論は曖昧なものだった。
上級の、危険な魔物を草の根分けてでも探し出して倒して回る物騒な宗教――言葉を飾らずに言えばそういった印象をグレイゴ教に対して抱いていたレウルスだったが、改めて考えてみると腑に落ちない点もいくつかある。
ミーア達ドワーフに関しては、エリザのように育てて狩るのが目的だったのか。しかし、“あの場”に来ていたのはカンナとローランである。レベッカ達の話を信じるならば過激派ではなく正道派に属するカンナが、そのようなことをするのか。
「以前、中級の魔物……いや、亜人の集団に対して噂を流してから倒そうとしていたことがあった。上級の魔物と何度か戦った身としては、いくら中級の集団といっても上級に匹敵するとは思えなかったからな……単純に上級の魔物なら何でも狩るわけではないんだな?」
ある程度の確信を込めて尋ねると、レベッカは笑みを浮かべながら頷く。
「正解ですわ。ちなみに、その時動いていたのは誰だったのかしら?」
「それをやろうとしたのは正道派……名前を言ってしまえばアンタの知り合いのカンナとローランなんだが、さっきの話と噛み合ってないよな? 何が目的だったのかは知らないが、正道派らしくないんだが……」
この場で話を聞いただけで、正道派に関して深く知ったわけではない。それでもカンナやローランが取る行動としてはおかしいように感じられた。
そんな疑問をぶつけるレウルスに対して答えたのは、クリスとティナである。
「派閥はあるけれど、互いに敵視し合っているわけでもなければ手を組まないわけでもない」
「大司教からの指示があれば過激派がやるような仕事を正道派のグレイゴ教徒が担当することもある」
一枚岩ではないが、ある程度の結束はあるらしい。少なくとも“上司”から命じられれば派閥を超えて協力し合うようだ。
クリスもティナも平然と答えたが、これはこれでグレイゴ教内部の運営に関する情報だろう。知って良かったのかと思いながらもレウルスは新たな疑問をぶつける。
「……わざわざ噂を流していた理由は?」
領主――当時のヴェルグ子爵が解決できないことを解決して、マタロイに少しでもグレイゴ教徒を増やそうとしたのか。
カンナとローランならば、そのような手間をかけずともミーア達を仕留めることができたはずだ。ドワーフの村に行くには『迷いの森』を抜ける必要があったが、木を切り倒しながら進むなど“抜け道”はいくらでもある。
「…………」
しかしレベッカ達は何も答えない。レベッカは意味ありげに微笑み、クリスとティナは沈黙を守るだけである。
(これまで割とペラペラと喋っていたけど、いきなり黙ったな……何か重要な理由があったのか? それとも……“噂を流すこと”自体、何か意味がある?)
思考を巡らせるレウルスだったが、レベッカ達が答える様子はない。一番口が軽そうなレベッカでさえ沈黙しているほどだ。
それならばとレウルスはクリスとティナを交互に見る。しかし、二人の表情は窺い知れず、狐の面が無機質に視線を返してくるだけだった。
(……グレイゴ教徒の話を鵜呑みにするのもまずい、か)
狐の面を見ていたレウルスはそう自分を納得させる。それと同時に前世の記憶が刺激され、なんとなく唾を眉につけてみた。
「……何をしてるの?」
すると、それまで黙って話を聞いていたネディが興味を惹かれたようにレウルスへ尋ねる。
「いや、あのお面を見てたらつい……えーっと、なんだっけ? 狐や狸に化かされないようにするためのおまじない……だっけ?」
眉唾物とまでは言わないが、素直には納得しかねる。そんな意識から自然と動いていたレウルスだったが、ネディへの発言が聞こえたのか、クリスとティナが何故か身を震わせた。
「話を戻しますわ、ええ、戻します。王子様の疑問に関してですが……」
そして、そんなクリスとティナの反応を隠すようにしてレベッカが口を開いた。
「我々……とわたしが言うと後ろの二人に怒られそうですが、正道派としては上級の魔物に限らず、上級に相当するであろう危険な魔物だけを狙っています。例えばわたしのオトモダチみたいに」
そう言ってレベッカが指さしたのは、レベッカの背後で地面に伏せている巨大な翼竜である。
「今でこそわたしが操っていて大人しいですけど、“コレ”はコレで小さな村をいくつか滅ぼしたことがあるぐらいには強力です。強さ的には辛うじて上級に届くかどうかですが、コレを操ったことでわたしは司教に選ばれました」
「……倒すだけが昇進の基準じゃないってことか?」
どうやらレベッカは翼竜を従えたことで司教になったようだ。ギリギリとはいえ上級の魔物を従えられるのなら、本人はそれ以上に強いと判断されたのだろう。
(……ん? でもコイツの場合、呼び名がおかしかったような……『人形遣い』はともかく、『傾城』ってのは……)
魔法人形もそうだが、魔物を操ることから『人形遣い』と呼ばれているのだろう。だが、そうなると『傾城』という呼び名がどこからきたのか。『魅了』の『加護』があれば城の一つや二つ、落とすこともできそうだが――。
「レベッカは特殊。普通は上級の魔物を倒して司教になる」
レウルスの疑問を打ち切るようにしてティナが言葉を発する。それを聞いたレウルスは思わずティナの方をじっと見た。
「ちなみに、二人とも司教で十位なのはなんでだ?」
最初に名乗った時、クリスもティナも第十位の司教だと言っていた。それはアリなのかと疑問に思うレウルスに対し、二人は小さく頷く。
「二人で上級の魔物を二匹倒したから」
「一人で一匹ずつ倒していれば別の位階だった」
特に隠すようなことでもなかったらしく、クリスもティナもよどみなく答える。二対二だったのか、二対一を二回行ったのかはわからないが、二人で一人前というような形で考えられているのだろう。
そうしてクリスとティナの事情に関して軽く触れたレウルスだったが、そこで我に返った。一つ話を聞く度に色々と聞きたいことができて脱線したが、グレイゴ教徒が強力な魔物を狩る目的を聞きたかったのだ。
レウルスが本来の目的に立ち返ったことに気付いたのか、クリスとティナは小さく咳払いをした。
「色々と話が脱線したけど、話を戻す」
「我々グレイゴ教徒……特に司教等が戦う理由に関しては、言えない部分も多い。でも、強いて言えば“弱者”のため」
「……弱者のため、ねぇ」
予想外の言葉が出てきた、と言わんばかりにレウルスは眉を寄せる。
「そりゃなんだ? 弱者を救う……つまり世のため人のため、とでも言うつもりか?」
色々と迷惑を被った身としては、素直には聞けない話だ。レウルスとしては鼻で笑い飛ばしたい気持ちになりながらも、話の続きを促す。
そんなレウルスの反応をどう思ったのか、クリスもティナも淡々とした口調で言葉を続けた。
「一つ、例え話をする。中級でも上級でもいいけど、大した兵力もいない平和な村を強力な魔物が襲ったとする。他の町や村に伝令を出して応援を呼ぼうにも、確実ではない上にその応援が到着するまでに数十人が殺されてしまう」
「もしかすると数十人では済まず、その村そのものが滅ぶかもしれない。そこに、その魔物を“どうにかできる”存在が通りかかって、被害が広がる前にその魔物を倒した……それは悪いこと?」
そう言われてレウルスは想像する。
クリスとティナに倣い、レウルスにとって最も大切な場所であるラヴァル廃棄街でその例え話を想像する。
ラヴァル廃棄街を治めるのがナタリアではなく、ジルバのような外部の人間とはいえ極めて腕が立つ者がおらず、冒険者の質も現状と比べてすこぶる悪い。
レウルスも戦う術を持たず、エリザ達もいないような、そんなラヴァル廃棄街を上級の魔物が襲う。実際には町の傍にラヴァルがあるため状況も変わるのだろうが、廃棄街の“目的”に沿って見捨てられたとすれば、状況は絶望的だ。
そこにグレイゴ教の面々が手を差し伸べ、絶体絶命の危機を救う。襲われた者だけでなく、家族や友人、町の仲間をまとめて救い上げる。
なるほど、それはたしかに素晴らしいことだろう。魔物という脅威に晒された無辜の民を救うなど、まるで英雄か正義の味方のようだ。
仮にそのような状況で救われたのなら、感謝もすれば恩にも感じるに違いない。
「そりゃ良いことだろうよ……“村人にとって”は、だけどな」
だが、クリスとティナの話を額面通りに受け取れるほどレウルスも若くはない。他者を助けることまで否定するつもりはないが、素直に感心するにはグレイゴ教との因縁が深すぎる。
「その町や村を治める人間からすると、自分の管理下にない戦力が勝手に解決していくんだ。感謝するかもしれないが、その後のことを考えると素直には喜べないだろ」
かつてジルバからも聞いた話ではあるが、そうして人助けの“押し売り”をして信者を増やしている可能性もある。
過激派の存在を知ってしまった後となっては、信者を増やすために自作自演をする可能性すら否定できなかった。
「もちろん、その土地の領主がどうにかするのが筋ではある。でも、それでは間に合わないこともあるし、そもそも戦力が不足していて返り討ちに遭う可能性もある」
「そうなる前に魔物を倒して被害を抑えることは悪いこと?」
しかし、クリスとティナの意見は違うらしい。自作自演の可能性を無視したように話す二人に、レウルスは小さく眉を寄せた。
(この二人……仮面で顔がわからないけど、だいぶ若い……いや、幼いのか?)
物事を良いか悪いかで見ているように感じられ、レウルスは思わずそんなことを考える。外見や声色だけで判断するならば“若い”が、外見以上に幼さを感じてしまった。
「悪いとは言わねえよ。ただ、領主の統治に不満を抱かせてグレイゴ教に入信させることもできる……それだけの戦力があって、実行もできるんだ。良い悪いの一言じゃ片付けられないだろ?」
一面から見れば良いと断言できることも、他の面から見れば悪いと断言されることもある。
ただ、それだけのことなのだが――。
「逆に問いたい」
「領地の問題を解決できない領主に価値はあるの?」
(……んん?)
ずいぶんと極端な方向に話が飛んだな、とレウルスは内心で疑問を覚える。
レウルスが知る領主――マタロイにおいては貴族の立場にある人間は、そのほとんどが優秀だ。
貴族という立場に相応しい見識を持ち、それぞれが自身の領地を富ませるべく様々な手を打ち合うような手合いばかりである。
レベッカの暗躍により、その立場を息子であるルイスへ譲ることになったヴェルグ“子爵”のような人物もいるが、これはレベッカの能力がイレギュラー過ぎただけだろう。
無論、レウルスの生まれ故郷であるシェナ村のように、レウルスから見てそれはどうかと思う領地もある。しかし、少なくともレウルスが知る限りでは領主には優秀な人間が多いのも事実だ。
クリスやティナからすると、領主や貴族という立場の人間に何かしら思うところがあるのかもしれない。グレイゴ教の司教として行動する内に、あるいはこれまで生きてきた中で、レウルスでは想像もできないようなことがあったのかもしれない。
そんなことを考えるレウルスを他所に、クリスとティナは言葉を続ける。
「領主にも色々としがらみがあるのは理解している」
「でも、助けを求める者のすぐ近くに助けられる力を持った者がいた……それなら助けるべきだと思う」
そう話すクリスとティナの声色は、嘘が感じられない真剣なものだ。
少なくともクリスとティナは弱者を助けることを目的としているらしく、その手段としてグレイゴ教に身を寄せていることが察せられた。
「…………」
クリスとティナの話を聞いていたレウルスは、無言でレベッカを見る。するとレベッカは苦笑しながら肩を竦めた。
「御立派でしょう? 少なくともこの二人は本気でそう考えていますの」
「……ああ、“御立派”だな」
レベッカの皮肉に対し、レウルスも肩を竦めて返す。
何があったのかはわからないが、クリスとティナには譲れない信念があるのだろう。
そして、クリスもティナもレウルスとレベッカの言葉に強く反応することはなかった。
「グレイゴ教徒にも色々といる。純粋に強さを求めている者、魔物によって不幸な目に遭った者、生まれ故郷を守りたいと思っている者」
「中にはレベッカみたいな例外もいるけど、ただの信者を除くと、グレイゴ教徒の多くは強さを求めるに足る理由を抱いている」
(グレイゴ教徒にも色々あるってことか……)
これまでの経験から敵としか捉えていなかったが、教義はともかく個人で見ればグレイゴ教徒にも色々とあるのだと理解できた。
レベッカ達が話そうとしない、伏せている何かしらの情報は気にかかるが、その情報を知る一部のグレイゴ教徒達が派閥を超えて協力し合っていることも知れた。
それでも、レベッカよりは信用できると思うが、クリスもティナもグレイゴ教徒という括りの中にいる。
(……話半分に聞いておくか)
グレイゴ教徒全員に話を聞いたわけではなく、クリスとティナがレアケースということもあり得る。色々と話を聞けたが、全ての情報を鵜呑みにするわけにはいかないだろう。
スラウスのことがあるため今だけは協力し合うべきだろうが、それが無事に片付けばその後は――。
「ああ、そうそう……最後に一つ」
レウルスの表情から何か悟ったのか、レベッカが笑顔を浮かべながら口を開く。その笑顔はどことなく意味ありげで、それに気付いたレウルスは心中で身構えた。
「こちら……グレイゴ教は精霊教に対してどう対立すれば良いかわからないと言いましたね。ですが、精霊教からすれば“対立する理由”がある……それは御存知?」
「……グレイゴ教徒が精霊を殺したからだろう?」
過去に何度か精霊を殺したと聞いている。そしてそれは、信仰対象を害された精霊教徒からすれば絶対に許しがたい所業だ。
少なくともレウルスはエステルやジルバからそう聞き、それに納得もしている。
立場上精霊教に関わらざるを得ないレウルスではあるが、仮にサラやネディを害されれば何があっても下手人を殺すだろう。
それは信仰の問題ではなく身内を害されたから報復するだけの話だが、身内を精霊に置き換えれば精霊教徒の気持ちも理解できるのだ。
絶対に許さない、絶対に殺す。“そうなる”とわかっているが故に、レウルスはジルバの行動にも理解を示せる。
――既に身内に危害を加えられているからこそ、グレイゴ教を信用できないとも言えた。
そんなレウルスを真っすぐに見ながら、レベッカは言う。
「たしかにグレイゴ教では過去に精霊を殺しました。ですが、それは必要だからそうしただけですよ、ええ」
「なに? それはどういう……」
「グレイゴ教徒が、倒すべき相手だと判断した……危険で厄介な、倒すべき上級の魔物にも匹敵すると判断したからこそ殺した。“それだけのこと”ですわ」
本当のことなのか、それともレウルスを混乱させるための嘘なのか。レベッカは蠱惑的な笑みを浮かべながらそう告げると、その視線をレウルスの傍にいるネディへ向けた。
「そちらの精霊は大丈夫でしょうけど、もう片方の精霊には気を付けた方が良いでしょうね……ええ、本当に、気を付けた方が良いでしょう」
「…………」
レベッカの視線を受け止めたネディは無言で見つめ返す。
「ふふっ……まあ、わたしはこちらの二人に言われる通り、グレイゴ教徒としては特殊ですから。信じるも信じないも王子様の自由ですわ」
レベッカはネディから視線を外すと、そのままレウルスをじっと見ながらそう言うのだった。




