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世知辛異世界転生記(漫画版タイトル:餓死転生 ~奴隷少年は魔物を喰らって覚醒す!~ )  作者: 池崎数也
9章:アメンドーラ男爵領開拓記

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第382話:魔物の行方

 町の周囲から魔物が姿を消して以来、レウルス達が行う仕事に変化が起こった。


 それまでは町からあまり離れないよう注意しつつ、周辺の地形や植生を確認、魔物を見つければ排除に移る。そんなことを毎日繰り返していたのである。

 しかし魔物の脅威が減じたのならば、レウルス達が町から離れすぎないよう注意しながら活動する必要もなくなる。


 そのため数日様子を見てから魔物が戻ってこないことを確認すると、レウルス達は今まで以上にアメンドーラ男爵領“奥地”の調査に乗り出すこととなった。


 アメンドーラ男爵領――元々はモントラートと呼ばれていたその土地は、中々に広い。


 “普通”に歩けば東端から西端まで五日ほどかかり、北端から南端まで五日から一週間ほどかかるのだ。


 レウルス達の手によって現在建設中の町は、アメンドーラ男爵領の中でも北部に位置する。近隣の領地につながる街道との兼ね合いや水源の位置、耕作に向いた土地の広さなどから自然とそうなったのだが、アメンドーラ男爵領全体で見ればほんの一部分でしかない。

 領地全体の地図も詳細には完成しておらず、領地のどの場所にどんな資源が眠っているかもわからず、現状で判明している情報はそこまで多くないのだ。


 建設中の町周辺から逃げ出した魔物に関しても、その行方を探る必要がある。そのためレウルスはエリザ達を連れ、町から南へと下ってアメンドーラ男爵領の調査を開始した。


 “普通”に歩けば相応の時間がかかるが、レウルス達は全員が『強化』を使って移動できるためかなりの速度で移動できる。道がないため森の中を走ることになるが、レウルス達にとっては最早慣れたものだ。


 手入れが行き届いていないものの、街道も存在はする。しかしアメンドーラ男爵領と近隣の領地を隔てるように北から南へ縦断するように敷かれたもので、“内部”につながる道は現在建設中の町に続くもの以外は存在しない。

 そのためレウルス達はあらかじめコルラードが地図に記入したルートを極力通るようにしつつ、将来的に道を造るのに相応しそうなルートも探りながら移動を続けていた。


 そうしてアメンドーラ男爵領の北部から南部に向かって調査を進めるレウルス達だったが、開拓当初と比べると拍子抜けするほどに魔物と遭遇しなくなった。

 もちろんゼロというわけではないが、森の深さの割に遭遇頻度が乏しく、一日で十匹前後見かけるだけである。


 それも下級の魔物が大半で、中級以上の脅威になりそうな魔物はほとんど遭遇しない。岩山周辺から姿を消したグリフォンと遭遇することもなく、レウルスが首を傾げるほど順調に調査が進んでいた。


(どこかに潜んでるのか、それとももっと遠くまで逃げたのか……新しい縄張りを作ってたら下級の魔物はそこからいなくなってるだろうし、やっぱり逃げたのか?)


 森の中ということでミーアの先導に従って進みつつ、レウルスは内心だけで首を傾げる。


 レウルスが仕留めたグリフォンを確認したカルヴァン達ドワーフ曰く、“あの場”に残っていたのは若い個体ばかりだったらしい。


 経験を積んで慎重さを覚えたグリフォンは岩山周辺の縄張りを放棄し、怖いもの知らずの若いグリフォンは逃げ出さずにいたのではないか――そう推測できる程度には若い個体ばかりだったようだ。


 さすがにグリフォンの顔や体付きを見ても年齢などがわからないレウルスからすると、カルヴァン達の推測はなるほどと思わざるを得ない。

 魔犬などの若い個体も度胸試しのために単独で襲ってくることがあったが、それと似たようなことが起きたのだろう。


 だが、そうなると残りのグリフォン達がどこに逃げたのか。それが問題である。


 幸いなことに、建設中の町まで資材を運んでくる者に話を聞く限り、近隣の領地で不自然に魔物が増えたということはないらしい。グリフォンの群れを発見したという噂もなく、領地を巡回する兵士なども交戦したことがないようだ。

 そうなると、グリフォンや他の魔物は東西に別れて逃げたわけではなく、南へと逃げたのかもしれない。


 最初は町のすぐ傍でキマイラと戦い、その次は町から一時間ほど南へ進んだ場所にある岩山周辺でグリフォンや他の魔物相手に暴れたのだ。“押し出される”ようにして更に南へと逃げた可能性は十分にある。


 アメンドーラ男爵領を南に下ると国境があり、その先はティリエやポラーシャといった他国に通じているのだが――。


(さすがに他国まで確認しにいくわけにもいかないよな……)


 もしかすると逃げ出した魔物が他国に移動したかもしれない。そう考えるとレウルスとしても焦りを覚えるが、まさか調査の勢いに乗ってそのまま他国へ雪崩れ込むわけにもいかないだろう。

 また、人間と戦ったことで魔物が大量に逃げ出したなど、相手側も信じるとは思えない。


(グリフォンが見つかったり、何か痕跡があったりすればまだ違うんだけどな……)


 他の魔物ならばいざ知らず、グリフォンは空を飛べるため移動の痕跡も残り難い。追跡を行うのが非常に難しい魔物といえるだろう。


(うーん……一応、国境近くには砦もあるみたいだし、グリフォンが逃げたら兵士の目に留まって噂になる……か?)


 地図を見た限りでは、アメンドーラ男爵領の最南部――他国との国境線付近には国軍が駐留するための砦が設けられているらしい。


 その砦に行くためには他の領地の街道を通った方が近い上に安全だが、アメンドーラ男爵領内の街道が整備されればそちらが利用されるだろう。それが何年、あるいは何十年後の話になるか、現時点ではわからないが。


 そうしてアメンドーラ男爵領の調査を進めるレウルス達だったが、他の魔物はともかく、グリフォンの行方に関しては結局分からず終いだった。








 レウルス達が行うグリフォンの調査に関しては芳しくないが、アメンドーラ男爵領内の調査自体は順調に進む。


 そして、そんなレウルス達の調査以上に順調に進んでいるのが町の建設である。


 レウルス達はほぼ日帰りで町へと帰還し、仮に長距離を移動するとしても一泊二日で町へと戻ってくる。そして、ほんの数時間離れているだけでも町の変化が理解できた。

 魔物の脅威が薄れたことでドワーフを始めとした作業者達の作業のペースが上がり、どんどん“町らしく”なっていくのだ。


 最初の一ヶ月で町の周囲に造られた空堀は、端の方からその幅と深さを増していく。


 空堀を広げた際に出てきた土により、町と外部を隔てる土壁も厚く、高くなっていく。


 町の内部では大まかながらも道や住宅地の区割りも済み、あとは実際に作業に着手して進めていくところ

まで来ている。


 町のあちらこちらに等間隔でトイレや井戸が造られ、生活環境の向上も進められている。


 井戸に関しては下水道の位置関係も考慮され、また、下水によって汚染されないよう深めに掘られていた。井戸の内部は石材によって補強され、更には『解毒』の『魔法文字』が刻まれた石材を設置することで水を綺麗にするという念の入れようである。


 住宅に関しては建材が少ないためそこまで進んでいないが、乾燥中の木材が使えるようになれば急ピッチで作業が進むだろう。それまでは住宅以外の部分に注力しているというのが実情だった。


 そうして作業が進む中で、最も多忙なのはコルラードだろう。


 各所の作業がどこまで進んでいるかを確認し、町の“設計図”からズレていないかを確認し、作業者達の体調や精神状態も確認する。


 現在町に蓄えられている食料や資材を管理し、資材を運んでくる者達がいれば応対し、足りない物があれば注文する。


 更に、レウルスが持ち込む問題を対処して――と、文句のつけようもないほど働いていた。


 常人ならば積み重なる作業の数々に対処できないどころか、最初の数日で疲れ果ててしまうだろう。それは最早殺人的とも言える作業量だった。


「作業着手から一年と経っていないのにここまで進むとは……宮廷貴族共に見せてやりたいほどであるな」


 だが、コルラードは日に日に姿を変えていく町を眺めながら、満足げに笑えるぐらいには余裕があった。


 多忙の極みと言える作業量だったが、これまでにない充実感とやりがいがあるのだ。ドワーフというコルラードにとって想定外の労働力が存在していることで、マタロイの歴史に名前を刻みそうな速度で町造りが進んでいる。

 また、当初は素直に言うことを聞かなかったドワーフ達やラヴァル廃棄街の作業者達も、生活を共にすることで徐々に協力的になってきた。


 町造りはまさに順風満帆で――だからこそ新たな問題が出てきたことに、コルラードは内心で眉を寄せる。


 このまま町造りが進めば、遠くない内に多くの人間が住めるようになるだろう。資材が揃えばドワーフ達があっという間に家を建てるため、住居に関しては問題がない。


 当初危惧されていた魔物による治安の不安定さも、現状を見る限り問題がない。むしろレウルスが暴れ過ぎた影響で魔物の素材が余り、商人達との取引でも余裕をもって対応できるほどだ。


 しかし、である。“箱”はともかく人が住むにはどうしても足りないものがある。


(町の建設が早すぎて畑が作れないのは贅沢な悩み、か……)


 当然ながら、人が生きていくには食料が必要だ。現在は他所からの支援によって資材と共に食料が運び込まれているため問題ないが、いざ自立して生活していくとなるとどうしても食料が必要となる。


 町の内部に畑を作ってはいるが、土作りを進めている段階でしかない。土地が荒廃していても育つように芋類を植えようとしているものの、どんなに収穫量が優れていたとしても畑の面積を考えると明らかに“足りない”のだ。

 町の近隣には畑作りに向いていそうな土地もあるが、さすがにそちらまでは手が回っていない。ドワーフ達の協力があっても、当面は自給自足の生活などできないだろう。


(それでも町造り自体は順調で……うーむ……どうしたものか……)


 想定の何倍も早く町造りが進んでいるが故の弊害。今はまだどうにかなるが、遠くない未来で問題になると判断したコルラードは一通の手紙を(したた)めた。


 町造りを開始して、既に二ヶ月近くが経過している。ラヴァル廃棄街とは距離があるため気軽に連絡を取ることができないが、さすがに定期報告をする必要があった。また、それと併せて問題をナタリアに伝えなければならない。


 確実にラヴァル廃棄街に到着できて、なおかつ移動に時間がかからず、その上でナタリアに報告もできる人材。

 それはコルラードの部下にはいなかったが、町造りには参加していた。


「……というわけで、任せたのである」

「了解です。任せてください」


 魔物の脅威が減じている以上、町造りのために残しておく必要性も薄い。力作業は捗るが、今回は報告の方が重要だ。


 そんなコルラードの判断のもと、レウルス達は一時的にラヴァル廃棄街へ帰還することになったのだった。

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