第36話:吸血種 その3
「吸血種……ねえ」
そう呟いたナタリアの声は普段と比べて数段低く、刃のような鋭さが込められていた。それと同時にレウルスは首筋にヒヤリとした寒気を覚え、無意識の内に短剣を握る。
相も変わらず扇情的な雰囲気を振り撒いていたナタリアだったが、この時ばかりは色気よりも殺気に似た危険な空気を感じ取るレウルスだった。
「それは坊やが“推薦”したという少女のことかしら?」
「っ……さすがトニーさん。手回しが早いな」
どうやら既にエリザに関する情報が出回っているようだ。トニーは門番であり、ナタリアは冒険者組合の受付である。レウルスがエリザと食事をしていた時間があれば、情報を共有することなど容易いだろう。
レウルスは自分が短剣の柄を握っていたことに気付くと、慌てて手を離す。ナタリアはそんなレウルスの行動を気にしていないのか、手に持っていた煙管をくるりと回した。
「坊やは亜人について何か知ってるかしら?」
「……亜人?」
ナタリアの質問に対し、レウルスは首を傾げる。言葉の意味自体は理解できたが、自身の記憶に引っかかるものはなかった。そのため首を横に振ると、ナタリアは講義するように説明を行う。
「代表的なものとしてはエルフやドワーフ……人に近い姿をしているけれど、魔物に分類される種族のことよ」
(エルフとドワーフ? そういえばエステルさんもエルフとドワーフがどうとか言ってたな。キマイラもそうだったけど、聞き覚えのある単語が出てくるのはどうにも違和感があるが……)
エルフとドワーフ。それはレウルスにも聞き覚えがある単語だった。前世で遊んでいたゲームでも出てくる、ファンタジー世界ではメジャーな存在――だったはずだ。
もちろん、この世界のエルフやドワーフがレウルスの知っているものと異なっている可能性もあるが。
「人に近い姿をしている魔物、か……もしかしてこれまで会ったことがあったり?」
知らなかっただけで、この世界に生まれてからの十五年間で亜人に会っていたかもしれない。そう考えたレウルスだったが、ナタリアは首を横に振る。
「近いというだけで、大抵は外見だけで亜人と判断できるわ。エルフの場合は耳が長い、ドワーフの場合は成人しても背が小さい……頭に角が生えた鬼族も見分けやすいわね」
簡単な説明ではあったが、レウルスにはそれだけで理解ができた。特に鬼などは前世で生きていた日本でも馴染み深いのである。
「吸血種も……まあ、亜人の一種だと思ってちょうだいな。ただしその性質は魔物というよりは人間寄りで、場所によっては亜人に含まないこともあったはずよ」
「……それってもう人間で良くないか?」
少なくともエリザが名乗るまではただの少女にしか見えなかった。亜人だ何だと言われても、見分けがつかない上に人間とそう変わらないのならば人間で良いだろうとレウルスは思う。
「そうね……でも、吸血種には人間にない特徴があるの。“それ”がある以上、やはり亜人として見るしかない」
人間にはないが、吸血種だけにある特徴。それはその名が示す通りのものだろう。
「他者の血を“吸うことができる”……それが吸血種の特徴よ」
(そこだけ聞くとやっぱり吸血鬼だな)
嫌悪感を滲ませたナタリアの言葉。それを聞いたレウルスは眉を寄せた。
「特徴って言うからには何か意味があるんだろ? まさか血を吸って栄養補給するわけでもないだろうに」
エリザはドミニクが作った料理をこの上なく美味しそうに食べていた。少なくとも血を吸うだけで生きているわけではないはずだ。
「というか、血を吸うだけで良いなら俺もできるぞ? この前までは狩った魔物を生で食べたし。生肉に血が滴っていようがそのまま食べ切れるんだが……」
そもそも、レウルスからすれば血を吸えると言われても『それがどうした』と答えるしかない。さすがに人間を食べたり血を吸ったりする気はないが、この世界に生まれてからというものの食べ物を選り好みできる環境ではなかったのだ。
自分のことながら魔物の種類を問わずに――さらには生だろうと焦げていようと毒があろうと食べるのは、色々と問題がある気がする。それでも飢えるよりは遥かにマシであり、今後も改めるつもりはないが。
レウルスはそんな自分と吸血種であるエリザを比べた場合、どちらが物騒か明白だと思った。繰り返しになるが、人間を食べる気には到底なれないが。
「……坊やはもっとまともな食生活を送りなさい。ドミニクさんのところにいるのだし、食事で困ることはないはずよ」
「“食えるもの”があったら逃さずに食うのが俺の信条でね。それで姐さん、吸血種が血を吸うと何が起こるんだ? 血を吸った相手を吸血種にするわけじゃないんだろ?」
自分でずらしてしまった話題の修正を行うレウルス。ナタリアは呆れたようにため息を吐くと、持っていた煙管を机に置いて頬杖をつく。
「わたしも詳しいわけじゃないけれど、そんな話は聞いたことがないわね。ただ、人間の血を吸うことで魔力を得ることができる……それが吸血種よ。坊やは忌避しないのかしら?」
「……? いや、そんなことを言ってたら俺も吸血種と大差ないんだけど……」
確証があるわけではないが、レウルスとて食べたものを魔力に変換しているのだ。血を吸うことと大差はない。むしろ腹が膨れるからといって血だろうと肉だろうと、挙句の果てに木の根っこだろうと食べる分性質が悪いと思えた。
「血を吸うのよ? おぞましいと思わないの?」
繰り返し念を押すように語るナタリアだが、レウルスの答えは変わらない。
「冒険者やってたら嫌でも血を見るだろ? 血を流すことと吸うことに大きな差は……まあ、あるんだろうけど、冒険者が忌避する理由にはならないと思うんだが……」
そう言いつつ、レウルスの脳裏に過ぎる物があった。
前世の日本に留まらず、諸外国でも血を忌避することがある。場所によって呼称は異なるが、“穢れ”だ何だと距離を取るのだ。
(なんだっけな……宗教が関係してるんだっけ? 仏教? 神道? キリスト教?)
元々大して詳しくない上に、前世の記憶はボロボロだ。思い出すことをすぐに諦めると、ナタリアの言葉を理解しようと思考のリソースを回す。
(魔物を殺して血を見るのは良いけど、人間同士じゃ駄目……いや、吸血種が人間から血を吸うことが駄目なのか? 前世でも他人の血を輸血されるのが嫌な人がいるって聞いた覚えはあるけど……)
ナタリア個人の感想なのか、それともこの世界に生きる人間が持つ“常識”なのか。ナタリアの反応を見る限り後者の可能性が高そうだが、レウルスとしてはそれに賛同する気持ちはなかった。
「悪いけど、姐さんの言いたいことは理解できたが納得はできねえよ。こちとらクソみたいな村の中で農奴として育ったもんでね。血が汚いとか言ってたら自分と似たような境遇で死んだガキを埋葬することもできねえ」
そう言ってレウルスが思い出すのは、シェナ村で過ごした日々の記憶だ。
農作業は肉体的に過酷だったが、時折“強制された”遺体の埋葬は精神的にも過酷だった。それも自分よりも年下の、五歳にも満たない子どもを埋めた時の無力感は筆舌に尽くし難い。
好んで見捨てたわけではないが、レウルスとて両親の庇護もなしに生きるだけで必死だったのだ。村の上層部から命令されたというのもあるが、彼らあるいは彼女らを弔ってやりたかったという心情もある。
エリザの怯えた表情を見て剣閃が鈍ってしまったのも、その辺りの記憶が原因なのだろうとレウルスは自己分析した。
泣き叫び、絶望し、最後には餓死もしくは過労死した幼児を埋葬したのは、はたして何人だったか。奴隷として売り払われるまでに埋めた子どもの数は、少なくとも両手の指では数えきれないほどだった。
エリザが“そんな彼ら”と似たような表情を浮かべていたことが引っ掛かり――今は必要のない感傷と思考だと打ち切る。
ナタリアの言葉に意識を集中させるレウルスだが、血は穢れだから忌避するという考え方もあるのだろうとレウルスは納得した。ナタリアを否定する気もなければその考えに染まる必要もないのである。
「吸血種ってのは必ず血を吸わないと生きていけないのか? 血を吸わないと死んだり、血を求めて暴れたりするのか?」
「そういう話は聞いた覚えがないわ。ただ、人の血から魔力を得た吸血種は強力な魔法を操るとも言われているの……かつては血を“集めすぎて”力を強めた結果、町一つを滅ぼした吸血種もいたと聞いているわ」
どうやら過去に物騒な吸血種がいたようだ。それはそれで吸血種を忌避する理由になるのだろうが、レウルスとしてはやはりピンとこなかった。それでもナタリアが何を警戒しているのかは理解できる。
「なるほど……危険な存在かもしれない、その可能性があるってだけでこの町に受け入れるわけにはいかないか」
「そういうことね。でも、坊やが推薦状を渡してしまった……何かあった場合に責任を取れるのかしら?」
レウルスの行動を咎めるように突いてくるナタリアに、レウルスは腕組みをして唸る。
エリザはナタリアが言うような危険な化け物とは思えない。もちろん演技の可能性もあったが、レウルスが斬りかかった時に見せた反応は自然なものだった。あれが演技だったとすれば、レウルスには最早お手上げである。
そして、ナタリアのいう責任とは自分で始末をつけられるかということなのだろう。万が一エリザが危険な本性を隠していた場合、自らの手で討てるのかと聞いているのだ。
「一応聞いておくけど、吸血種って不老不死の化け物だったりはしないよな? 別の生き物に化けたりしないよな? 目を見た相手を操るとか、殺した相手の数だけ自分の命が増えるとか、バラバラにしても死なないってことはないよな?」
「馬鹿げたことを心配しているようだけど、坊やがいた村では吸血種はそういう存在だと思われていたの? もしそんな力があったら今頃は吸血種で溢れ返っているわね」
エリザにも確認したことではあるが、ナタリアはレウルスの懸念を呆れた様子で否定した。吸血種という存在はさすがにそこまでの化け物ではないようだ。
「責任か……」
だが、責任という言葉が引っ掛かった。元日本人としては少々敬遠したい言葉ではあるが、今の状況でそれはできないだろう。
「坊やの推薦ということでこの町に受け入れる……それはいいわ。坊やには推薦状を与えたし、坊やもそうやって受け入れられたクチですものね。ただ、坊やとその吸血種の女の子では境遇が違いすぎるわ」
――境遇が違いすぎる。
その一言にレウルスは首を傾げた。レウルスが見た限り、吸血種と人間という違い以外で目立つものはそれこそ性別ぐらいだと思ったからだ。
「その吸血種の子の出身地は?」
「……ハリスト国? ってところらしいんだが」
だが、続いて行われたナタリアの質問に内心だけで納得する。
「ハリスト国? ラヴァル廃棄街から徒歩で行こうとすれば一ヶ月以上かかるわよ? しかもここまで来るには国を一つは跨がないといけない……わざわざ何をしに来たのかしら?」
「本人が言うには逃げてきたって……」
「その話が本当である証拠は?」
「ないな」
要はレウルスと違って身元の確認が取れないのだ。
レウルスの場合はシェナ村から奴隷として売られたという事実があり、ナタリアもそれを確認した。レウルス本人に“色々と”おかしな点はあるが、嘘はついていないと判断されたのである。
そんなレウルスと比べて、エリザの場合は確認するのが不可能に近い。ナタリアの言葉が本当ならばエリザは遠く離れた国から来たことになる。
レウルスがいたシェナ村は徒歩で二日程度の場所にあり、確認を取ることも容易だった。それが出来ない以上、エリザの話には何の信憑性もないのだ。
「でもよ姐さん。もし嘘を吐いてるとしても、もう少しマシな嘘を吐くと思わないか?」
ナタリアの言いたいことは理解できたが、エリザが嘘を吐いている可能性は低いとレウルスは考えている。確認ができないという点では変わりがないが、もう少し近い場所から逃げてきたという方が信じやすいはずだ。
そもそも、嘘を吐いてどうするというのか。レウルスを騙して良いことなど何もなく、ラヴァル廃棄街も強力な魔物が出たら見捨てられるような場所だ。
かつてのレウルスが疑われたようにエリザを他所の間諜だと疑おうにも、わざわざ吸血種などと名乗る必要もない。吸血鬼だと勘違いしたレウルスが斬りかかったように、悪目立ちすることこの上ないのだ。
「そうね。でも、そう思わせておいて実は……なんて可能性も捨てきれないわ」
「それを言い出したら何も信じられねえよ」
疑おうと思えばどこまでも疑うことができるのだ。ナタリアもそれを理解しているのか、吐き捨てるようなレウルスの言葉に笑う。
「それならどうすれば良いか……わかるわね?」
そう告げるナタリアの表情は、ぞっとするほど艶っぽい笑みだった。レウルスは背筋に寒気が走ったのを感じたが、努めて気付かなかった振りをする。
「俺が連れて来たんだ。エリザのことは俺がしっかりと“面倒を見る”さ」
「ふふふっ……そうね、坊やはこの冒険者組合の一員ですものね。しっかりと面倒を見てもらわないと……ね?」
レウルスはナタリアと視線をぶつけ合う。レウルスは鋭い目つきで睨み、ナタリアは意味深に微笑みを返した。
そうして視線を交わすこと数秒。先に折れたのはレウルスである。
「他に行く宛てもなさそうだったし、この町で働くことを勧めさせてくれ。魔力を感じたから多分魔法を使えるだろうし、冒険者として登録させて当分は監視する……それでどうだ?」
レウルスだけでなく、冒険者組合としても監視の目を向けておく。そうすれば何かあってもすぐに対応できるだろう。そう考えたレウルスだったが、ナタリアは微笑んだままで頬に手を当てた。
「他国の人間を受け入れること自体が問題なのだけど……まあ、“それ”はいいわ。話を聞いた限り、おそらく問題もない」
「……姐さん?」
後半の呟くような声を聞きそびれ、レウルスは怪訝そうな顔をする。ナタリアはそんなレウルスの様子に笑みを深めると、からかうように言う。
「なんでもないわ……その子、若いんでしょう? 娼婦として働くのも手よ?」
「若いっつーかガキだぞ……それもガリガリに痩せた」
自分の年齢を棚に上げ、呆れたように肩を竦めるレウルス。
ナタリアが冗談なのか本気なのかいまいちわからない。それでも本気だった場合は面倒なことになると判断し、レウルスはこれで話は終わりだと言わんばかりに背を向けた。
「最後に一つ、聞かせてちょうだいな。どうして坊やはその子に肩入れするのかしら?」
その問いかけに足を止め、レウルスは肩越しに振り返る。
「言ってなかったか……命辛々逃げてきたって境遇もそうだけど、勘違いで斬りかかって殺しかけた。その分は償う必要があるだろ? つまり“借り”があるわけだ」
「坊やらしいわね……その子、まずは一度連れてきなさいな」
エリザを連れてきた理由に関しては納得したのか、ナタリアはレウルスから視線を外す。レウルスがドミニクに対して恩義を抱き、ドミニクを死なせまいとキマイラに立ち向かったのはラヴァル廃棄街の住人ならば誰でも知っていることだ。
そんなレウルスが“借り”があると言えば、おおよその場合で納得してくれるのである。
ナタリアもそれを知っているからかそれ以上は何も言わず、レウルスもそれ以上何も言うことなく冒険者組合を後にした。これから先の話はエリザ自身を連れてこないとどうにもならないのだ。
「しかし……姐さんと一対一で話すのはしんどいな」
冒険者組合の外に出たレウルスは、ナタリアの表情を思い出して肩を落とす。
エリザが目を覚ませば“事情聴取”があるのだろうが、手加減は期待できそうになかった。
冒険者組合を後にしたレウルスはその足でドミニクの料理店へと戻る。そしてドミニクとコロナに一声かけた後、最早自室となっている物置の扉をそっと開けた。
(寝てるか……)
手製の藁ベッドに寝かせたエリザは相変わらず眠ったままである。その眠りは深く、多少騒いだところで起きはしないだろう。
ラヴァル廃棄街にたどり着いた頃の自分もそうだったのだ。レウルスは内心だけで苦笑しながら扉を閉めると、背後に気配を感じて振り返る。
「レウルスさん、さっきの子は……」
振り返った先にいたのはコロナだった。エリザを連れて食事を取りに来た時は姿を見せなかったが、おそらくは二階にいたのだろう。眠りについたエリザに対し、心配そうな表情を浮かべている。
「ぐっすり寝てるよ。俺も経験があるからわかるけど、明日の朝まで起きないなきっと」
レウルスがラヴァル廃棄街に来て一ヶ月近い時間が過ぎているが、長年積み重なった疲労は今現在でも抜け切っていない。その影響か一度眠ると爆睡し、並大抵のことでは起きないのだ。
エリザもそうなのだろうとアタリをつけ、相変わらず心配そうな顔をしているコロナへと笑いかける。
「多分、俺と似たような境遇らしくてな……迷惑かけるけど、少しでいいから気にかけてやってくれないか?」
「それは構いませんけど……」
何か言いたげにレウルスを見詰めるコロナ。レウルスはそんなコロナの視線を不思議に思い、首を傾げた。
「何かあるのか? ……あっ、エリザの宿泊費は俺が払うから」
数秒経ってから合点がいったように手を叩く。物置で寝泊まりさせてもらっている対価としてレウルスは食費に宿泊費を含めて渡しているが、泊まる人数が増えるのならば渡すお金を増やすべきだろう。
「いえ、その、エリザちゃん……でしたっけ? その子がレウルスさんの寝床を使っているのなら、レウルスさんはどこで寝るんですか?」
だが、コロナが気にしていたのはそんなことではないらしい。レウルスのベッドが占領されている状況で、レウルス自身どこで眠るのか気になったようだった。
「……屋根さえあればどこでも眠れるし、問題はないな」
正直に言えばまったく考えていなかった。しかしながらそれを素直に言うのも気が咎め、レウルスは笑って流そうとする。
「良ければお母さんの部屋を使いますか? 物置に寝泊まりしてもらうっていうのも申し訳なかったので……」
「いや、それはさすがにちょっと……」
キマイラと戦った影響で気絶していた時ならばともかく、平時にドミニクやコロナの生活空間に足を踏み入れようとは思わない。ドミニクの妻でありコロナの母親でもある人物の部屋を使うのは、非常に気が咎めた。
加えて言えば、コロナは年頃の娘なのだ。外見だけは同い年に近いレウルスを傍に招くのは、些か警戒心が足りないのではないかと心配してしまう。
男は狼なのだ。前世を含めれば四十歳近いレウルスからすればコロナは娘のような年齢のため、余計に心配に思ってしまう。
「気にしなくて良いんですよ? レウルスさんが使うのなら、お母さんもきっと許してくれますから」
そう言って心底から微笑むコロナ。その笑顔を受けたレウルスは『やはり天使か』と内心で呟きながら首を横に振った。
「色々と思うところはあるけど、姐さんもエリザから目を離すなって言ってたからな。俺も物置で寝るよ」
物置は狭いため、横になって眠ることはできないだろう。それでも床に座り、壁に背中を預けて眠ることができるだけ上等だとレウルスは思った。
エリザに対する監視の意味もある。そんなレウルスの意思を汲み取ったコロナは心配そうな顔をしたものの、素直に引き下がったのだった。
どうも、作者の池崎数也です。
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