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世知辛異世界転生記(漫画版タイトル:餓死転生 ~奴隷少年は魔物を喰らって覚醒す!~ )  作者: 池崎数也
間章:ラヴァル廃棄街と『魔物喰らい』

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第141話:魔法具とは その2

「……魔法人形?」


 カルヴァンの言葉を聞いたレウルスは首を傾げながらエリザを見る。ドワーフであるカルヴァンとミーアを除いた場合、知っている可能性があるとすればエリザだけだと思ったのだ。

 サラに関しては諦めている。先ほどカルヴァンに冷たくあしらわれて凹んだのか、今はレウルスの膝の上に座って大人しくしていた。


「おばあ様に聞いたことがあるような……ないような……」

「エリザでもそれぐらいなんだ。俺が知るわけねえわな……それで、どんな魔法具なんだ?」


 自信がなさそうに表情を歪めるエリザを横目に見つつ、レウルスはカルヴァンへ話を振る。


 これまで聞いたレウルスの大剣やエリザの杖と違い、特殊な魔法具だということだけは推察できるのだが――。


「“種類と質”によって大きく変わるが……質の良い魔法人形の中には人間に化けさせることができるものもある」

「……は?」


 真面目そうに、それでいて不機嫌そうに語るカルヴァン。対するレウルスは、聞き間違いだろうかと目を丸くする。


「人間に化ける? 人形が? えっ……なんだそれ……」

「そうなるよな……ああ、そうなるだろうさ。それぐらい馬鹿らしい魔法具だよなぁクソッタレめ……」


 カルヴァンは酒を呷ると、大きくため息を吐く。


 人間に化けさせてどうするのか、化けるといってもどの程度の精度なのか、自立行動などは可能なのか――そういった疑問ならばすぐに浮かぶレウルスだったが、“どうやって”魔法人形を作るのかは微塵も想像できない。


 カルヴァンが作った真紅の大剣も、レウルスからすれば理解できない部分が多い。

 しかし、先ほどカルヴァンが挙げた“仕組み”はそのどれもが話を聞けば理解できた。使った素材と技術によって作り得るものなのだと、そう納得できたのだ。


 エリザの杖で例えるならば、雷の『宝玉』を素材に使ったから雷魔法が使いやすくなる。ついでに言えば鈍器としても刺突用の武器としても使えるよう、形状を整えてある。

 その結果としてエリザの杖が出来上がったのだが、課程を説明されれば誰でも納得できるはずだ。


「いや……待て待て待て。化けるってどんな感じにだ? 一目見ただけで人形だってわかるぐらいなら化けさせる意味もないだろ?」


 カルヴァンの話に度肝を抜かれたレウルスだが、実物がない以上想像で補うしかない。人間に化けるといっても、精巧な人形で通じる程度のクオリティしかないかもしれないのだ。 


「俺が知ってる魔法人形は、化けさせたい相手を想像するだけで発動する物騒な代物だ。それも顔、声、体つき……そういった特徴を丸々真似しやがる。触れば温かいし、心臓だって脈打ってるぐらいだ」

「そ、それだけなら大した脅威にはならない気がするんじゃが……もしかして、喋り方なども真似るのかの?」

「その辺りは“どこまで想像したか”によるみたいだが、普通に喋るぞ」


 それはちょっとした――否、間違いなくホラーではないだろうか。下手すると魔法人形と“元々”の人間が入れ替わっているということもありそうだ。


「しかも、化けさせた相手の技術なんかも模倣しやがるんだ。魔法が使えるなら魔法を、武術を身に着けているなら武術を、知略に長けているなら知略を……さすがに『加護』まで模倣できるかはわからねえがな」

「…………」


 付け足すように言われたが、レウルスだけでなく他の全員が沈黙していた。カルヴァンは相変わらず酒を飲み続けているが、不機嫌さは増すばかりである。


「……“完全に”模倣できるのか?」


 数十秒の沈黙の後、レウルスは尋ねていた。もしもそうだとすれば、強力な魔法使いを魔法人形で真似させれば相当な戦力になりそうである。

 だが、カルヴァンは静かに首を横に振った。


「さすがにそこまでは無理だろうな……どんな理屈で作り上げてるのか俺にもわからねえが、俺が知る限り能力の五割も再現できりゃあ上出来だろうよ。それ以上となると……それこそ天才、いや、鬼才の成せる奇跡だな」


 五割でも十分ではないだろうか。レウルスはそう考えるが、能力が五割であって外見や性格を完全に模倣されると考えると空恐ろしいものがある。


「……その口ぶりだと、見たことがあるんだな?」

「ああ……どこから流れてきたのかわからねえが、一度だけな。壊れかけでボロボロだったが、ちゃんと動いた。もう何十年前になるか……」


 記憶を探るように遠くを見つめるカルヴァン。レウルスはカルヴァンの作り話ではないことに戦慄するが、膝の上に座っていたサラがいつの間にか寝息を立てていることに気付いて少しだけ気を緩める。


「それで……その魔法人形はどうしたんだ?」

「ぶっ壊した。ありゃあ在って良いものじゃねえ。仕組みはわからねえが、おそらく外法の類だろうな」


 カルヴァンがそう判断したということは、“余程”のものだったのだろう。


「参考までに聞いておきたいんだけど、どうやれば作れるか見当ぐらいはついてるんじゃないか?」


 技術すらも模倣できるというのなら、職人であるカルヴァンにとって許し難いものだろう。それでも、職人の性として作り方に見当をつけていそうだ。


「……最低でも『変化』を『魔法文字』で刻める魔法の腕。材料は『魔石』に……いや、そこまでだな。その程度しかわからねえよ」


 カルヴァンは僅かに言いよどむ。材料に関して何か思うところがあるらしい――が、レウルスもわざわざ指摘することはなかった。


「なるほど、な……俺の剣が“基本的な”魔法具だって言われた理由がわかったよ。そんな物騒な代物があるならそれも当然ってわけだ」


 前世の知識を頼りに真紅の大剣と魔法人形を比べると、十徳ナイフとロボット並に違いがありそうだとレウルスは思考する。真紅の大剣は強力な武器だが、魔法人形は“できること”に幅があり過ぎるのだ。


 レウルスは実物を見たわけではないため想像でしかないが、魔法や武術の腕すらもある程度模倣できるとなれば、必要な時に必要な能力を持つ人間を知ってさえいれば魔法人形で代用できる。

 高性能なロボットに必要な機能をインストールするようなものだろう――自由度と能力の“精度”は魔法人形の方が上だろうが。


(これまで何度か思ったことだけど……とんでもねえなファンタジー)


 レウルスは小さくため息を吐く。魔法とは何ができて何ができないのか、その境界すらもあやふやになりそうだ。


「とまあ、それが俺が知る一番物騒な魔法人形だ」

「……一番ということは、他の魔法人形もあるように聞こえるんじゃが」


 エリザが頬を引きつらせながら指摘すると、カルヴァンは先ほどまでよりも表情を明るくしながら頷く。


「あるぞ。ただ、こっちは人間に化けるだとか能力を模倣するだとか物騒な機能はねえ。使用者が魔力を使って操るんだ」

(さっきの魔法人形がロボットなら、今度はラジコン?)


 魔法人形にも色々とあるらしい。レウルスとしては先ほど聞いた魔法人形のインパクトが強すぎたため、魔力で操作できると聞いても脅威を覚えなかった。


「魔法が使える貴族が影武者に使ったりするらしいが……まあ、数を揃えられればそれなりに脅威かもしれねえな」


 カルヴァンとしては“許せる”魔法人形らしいが、レウルスにとっては先ほどよりも興味を引かれない。膝の上で眠るサラを起こさないよう注意しつつ、頭の中でこれまで聞いた話をまとめていく。


(魔法が使える、あるいは使いやすくなる魔法具に、俺の大剣みたいに武器に何かしらの効果をもたらす魔法具……それがまあ、“普通”の魔法具なんだろうな。それでいて魔法人形みたいな例外もある、と……)


 自分では到底作れそうにないため興味は引かれにくいが、どこで魔法具を持った敵と遭遇するかわからない。そういった意味ではカルヴァンに話を聞いて正解だっただろう。

 特に、何も知らずに人の姿を真似る魔法人形と遭遇していたら困惑したに違いない。


(まあ、カルヴァンでさえ一度しか見たことがないみたいだし、俺達が遭遇する可能性は低いだろ……)


 内心でそう締め括り、レウルスは話題を変えるべく口を開く。


「そういえば、ミーアは鍛冶よりも魔法具作りの方が向いてるんだろ? 何か作ったりはしないのか?」


 レウルスが水を向けた相手はミーアである。カルヴァンに怒られて委縮していたようだが、レウルスが質問をすると表情を輝かせた。


「ボク? うーん……今はまだ『魔法文字』の練習中かな? とりあえず『強化』ぐらいなら刻めるし、何かに刻む必要があるなら練習がてらやるよ?」

「おいレウルス、あまりうちの馬鹿娘を甘やかすんじゃねえぞ? 魔法具作りに向いてるってのは事実だが、あくまで向いてるだけだ。今の時点じゃ半人前もいいところだぞ」

「むっ……反論したいけど事実だから何も言えないよ……」


 ミーアはどこか悔しそうに視線を逸らす。ミーアもカルヴァンの娘として、職人気質なのだろう。自分にできることをしっかりと把握し、更なる向上を目指しているらしい。


「……まあ、最低限ではあるが、剣の研ぎなら問題はねえ。俺が打ってやった剣もコイツに面倒みさせてやれ」


 ミーアの表情に思うところがあったのか、カルヴァンは少しだけ語調を柔らかくして言う。それを聞いたレウルスは小さく笑うが、すぐに疑問を覚えた。


「おっちゃんの娘だし、俺の愛剣を預けるのも吝かじゃないんだけど……触ったら燃えるんだろ? 大丈夫か?」

「おいおいレウルステメェこの野郎。ドワーフ舐めてんなオイ……打った剣の整備ができない? 馬鹿言うな。燃えてもやるんだよ!」

「無理言わないでよ父ちゃん!?」


 冗談なのか本気なのか、カルヴァンは酒臭い息を吐きながら言う。おそらくは酔っているのだろう。


「だ、大丈夫だから! 多分、レウルス君が許可をしてくれればボクが触れても燃えないから! もし無理そうならレウルス君に研ぎ方を教えるから! 手取り足取り教えるから!」

「燃えるってわかってるなら、『無効化』を使いながら握ればいいだけだろうがよ……」


 カルヴァンが小声で呟くが、ミーアには聞こえていない。


(『無効化』を使えば大丈夫なのか。でもいきなり剣が燃えたら『無効化』を使う暇もないだろうし、そもそも俺が使わないと鞘から抜けないんだよな……盗まれる心配はしなくても良さそうだ)


 レウルスはカルヴァンの呟きが聞こえていたが、愛剣の防犯対策の方が大事だった。気が付けば焼死体が転がっているという事態も招きそうだが、その辺りは気を付けるしかない。

 愛剣のためならば、その程度の苦労は苦労でもなんでもないのだ。


「とにかく、魔法人形とやらには気を付ける必要があるのう……希少品のようじゃし、生きてる間に見ることすらないかもしれんがの」


 カルヴァンの話を聞いて得た教訓はエリザの一言に尽きる。レウルスも同意を示すように頷くと、膝の上で眠り込むサラを起こすべく揺らし始めたのだった。

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