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第一話 初めてのVRMMO

「おおっ!」


 目の前に広がる光景に、俺は思わず驚嘆の声を上げる。

 そこには、アニメや漫画でしか見たことのない、いかにもファンタジーらしい草原が広がっていた。


 世界初のVRMMO、《サクセスオブスキル》。

 今年四月に発売され、現在熱狂的な人気を誇っている。テレビやCMでもひっきりなしに宣伝されていたので、目にはついていた。


 しかし、俺自身は特に興味はなくスルーしていた……のだが、高二の一学期の終業式。

 発売日直後にプレイを始めていた悪友の林原和樹に「どうせ暇なんだろ」と招待ボーナス目的で誘われたのだ。


 まあ、夏休みは特に予定もなかったので暇潰しに手を伸ばすことにした。どうせ子供騙しと軽い気持ちでログインしてみたのだが、俺はその凄さに圧巻する。

 風の匂い。踏みしめた草むらの感触。プレイヤーとモンスターの戦闘の音。その臨場感は、まるで異世界に飛ばされたかのようだった。

 俺は先までの考えを心中で開発スタッフに謝った。


 次いで自分の服装を見る。

 皮のブーツに皮のズボン。皮の服に、枯れ草色のマント。腰には細めの剣が鞘に入れられて提げられている。

 確か、これらの装備を確認するにはステータス画面を開く必要があった。


「えーと、確か指でSって書くんだっけ」


 ぶつぶつ呟きながら、俺は指で宙にSの文字を描く。

 すると、目前にタブレットのような物が現れた。これでステータスや装備の変更を行うのだ。

 まず、ステータスを見る。


名前:ユウト・カミシロ

性別:男

レベル;1

クラス:剣士

HP:15/15

MP:5/5

攻撃:8

魔攻:2

防御:10

魔防:3

敏捷:3


 クラスはキャラクター設定時に剣士、魔術師、僧侶、弓士、騎士の五つから選べる。そこは無難に剣士を選ぶことにした。

 しかし、初期レベルだけあってステータスのショボいこと。

 まあ、和樹の話だと10レベルごとに能力値にボーナスもあるらしいし、まずはそれを目指して頑張るかな。

 さて、次は装備と。


武器:鉄の剣

頭部:

腕:皮のグローブ

胴体:皮の服

腰:皮のズボン

足:皮のブーツ

装飾品1:マント

装飾品2:


 初期装備らしい名前がずらりと並んでいる。。

 しかし、某RPGをやっている身としては、最初に鉄の剣をもらえるのはかなり嬉しい。いやまあ、その分数値は低いのだけど。

 そうしてタブレットをめくると、次はスキルの設定画面だ。生活スキルなんて言うのもあるが、とりあえず攻撃だ攻撃。

 攻撃タブをクリックすると、こんな画面が表示される。


スキル1:ブレイズソード

スキル2:


 スキル2から下は黒くなって、触ってもうんともすんとも言わない。何か解放条件があるのだろう。

 とりあえず、初期スキルのブレイズソードを指で弾く。


ブレイズソード

消費MP:2

威力:15

発動速度:B


 これまた初期スキルらしい性能だ。今の俺のMPだと2回が限度。

 威力というのがどういう意味かはわからないが、なんとなく弱そうに感じる。


 チラッと、横目で辺りを観察する。

 他のプレイヤーがうねうねとした液体状のモンスターや、狼のようなモンスターと戦っているのが見える。

 ぶるっと体が震えた。すごい、戦ってみたい。


 善は急げと、手頃な所にいる液体状のモンスターに近づく。タブレットで調べると、どうやらありがちなスライムという名前らしい。だが、変に凝っていないところは好感が持てる。

 ピコンと脳内で電子音が響き、スライムの上に赤のバーが出現する。どうやら、モンスターのターゲットになったことを知らせてくれるようだ。

 

「さて、いきますか」


 タブレットを放り投げると、途中で粒子になって消える。こうやって消すらしい。慣れて現実でもやらかさなきゃいいな。


 そんなことを考えつつも俺は剣を鞘走らせ、中段に構えた。

 鉄の剣という設定らしいが、京都の修学旅行で買った木刀ぐらいの重さに感じる。

 あまり現実に近付けすぎても振れないので、ちょうどいい重さだ。

 装備のレベルが適正以下だとかなり重くなるそうだが、今の俺には関係ない。


「はぁっ!」


 それらしく声を出して、スライムに剣を振る。

 その液体に鉄の剣が突き刺さると、HPバーが半分ほど削れる。流石、名前にふさわしい弱さだ。

 スライムが体を丸める。どうやら攻撃態勢に入ったようだ。俺は迷った末、その攻撃を喰らってみることにした。ダメージを受けるとどうなるのか知りたかったからだ。

 スライムが飛び掛かり、俺の腹部にぶつかる。


「おぉ?」


 その部分が軽く振動する。携帯のバイブより少し弱いぐらいだ。

 自分のHPをタブレットで確認する。


HP:14/15


 おお、流石スライム。なんともないぜ。

 とりあえず、動作が面倒なので視界の邪魔にならないところへ俺のHPとMPバーを表示させ、タブレットを放り投げる。


 スライムが再び体を丸めていた。トロい。普通にステータス確認している内に何回か喰らうと思ってたのに。

 スライムが飛び掛かってくる。速度的には小学校のドッジボールで女子が投げたのと同じぐらいだ。

 掴むことさえしないのだから、避けるのは簡単だった。

 身を開いてかわすと、スライムは放物線を描いて地面に落ち、べちゃ~と広がる。

 なにこいつ、ちょっと癒される。


 しかし、倒さないことには次に進めない。

 鉄の剣を思いっきり振り下ろす。スライムの体に突き刺さり、HPバーが真っ黒になる。すると、スライムの体が光り、粒子となって消え去る。

 すると、目前にタブレットが現れ、戦闘結果が表示される。


経験値:1×2

ゴールド:1

ドロップ:


 まあ、あの弱さでは妥当な数値だろう。

 二倍になっているのは招待ボーナスの効果のようだ。確か一ヶ月ほど続くらしい。

 

 あ、そういえば、あまりにも弱すぎてスキルを使っている暇がなかった。

 俺は再びモンスターの姿を探し、狼の魔物を見つける。タブレットで調べると、ウルフという名前だった。


 少し強そうだが、まあ、さっきの感じならなんとかなるだろう。

 俺はウルフに近づき、戦闘状態に入る。

 今度はこちらが剣を振るうよりも早く、ウルフの方から攻撃してくる。体を丸めての体当たりだ。


 ……馬鹿の一つ覚えだろうか。まあ、初期エリアでそんな強いモンスターが居てもやる気を削ぐだけか。


 今度は、小学校高学年の男子が投げるドッジボールの速度だ。しかし、毎回最後までコートに残っていた俺には、どちらにせよ関係ないことだ。

 再び身を開いてかわす。ガラ空きの背中が目に入った。

 そこで、俺はスキルの名を叫ぶ!


「ブレイズソードっ!」


 鉄の剣が刀身の根元から炎のエフェクトが燃え上がる。間近で熱を感じるが、暖かい程度だ。


「おおっ!?」


 次の瞬間、俺は驚愕に悲鳴じみた声を上げた。

 体が勝手に動く!

 まるで自分の身体とは思えない。剣道の達人のように、一拍でウルフと間合いを詰め、炎の剣が瞬きの間に振り下ろされる。

 ウルフの赤いバーが一瞬で真っ黒になり、その体が光に包まれ……粒子となって消え去る。


「す、すげえ……!」


 炎の消え去った剣を手に、俺は感動していた。

 すごい。現実ではできない動きを、現実と同じ感覚で体験できるなんて!

 そんな俺の耳に派手な電子音が響き渡り、タブレットが現れる。

 こんなメッセージが表示されていた。


経験値:2×2

ゴールド:2

ドロップ:


 レベルが2に上がりました。


HP:15→20

MP:5→8

攻撃:3→5

魔功:2→3

防御:2→4

魔防:3→4

敏捷:3→4


 上がり幅はしょぼい。普通のオンラインゲームなら投げるところだが、数値なんて今はどうでもいい。


「よっし、とりあえずレベル10まで上げるか!」


 そう意気込み、俺はモンスターを探しに行くのだった。


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