あるところに
カルラは異質な子供だ。
白樺を思わせるなめらかな肌の白さ。
艶やかで豊かなうねりのある黒髪。
常に眠たげにまどろませている深い森を思わせる深緑の瞳。
オーストリディアの王族の特徴である雪のような白い肌や金褐色の髪、青の瞳などは一切受け継がぬその姿はある種の妖しい美しさを持っている。
オーストリディアには森の民という少数民族がいる。
村などに定住せずにあちらこちらを放浪し、自然の力を操るという森で生き森で死ぬことを誇りに思う流浪の民。
カルラの母親は森の民の巫女だったが、森の中の精霊の泉で禊を行っていた時に狩りの途中の国王に見つかり、手篭めにされ、カルラを孕んだ。
国王もまさか1度の契りで孕むとは思っていなかったが母親は正真正銘穢れなき乙女だったことは自身が証明しているので側妃として迎え、国政には混乱はないと判断し母娘を放置した。
そして母娘の受難が始まる。
正妃には疎まれ、毒を盛られ、侍女は素性の分からぬ森の民に仕えたくないと見て見ぬ振り。
国王に至っては気の迷いと側妃にしてそれきり母親を構うことは無かった。
母親は満足に自然と触れ合うことすら許されぬ後宮という鎖に心を壊し自害した。
『森に帰りたい。』
カルラが10歳を迎える日のことだった。
葬儀すらおざなりにされ荼毘にふす母親を見てもカルラは涙すら流さずに見送った。
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