[5/24 22:30] 忍び寄る影
「まず、武器庫の銃を確保しないとね。こっちよ」
三里さんが先導して、私はそれについて行く。
今、私達が持っている武器はそれぞれの2つの銃のみ。
弾薬もそう多くはなく、危うい状況だ。
私は三里さんに尋ねた。
「あの、武器庫にはどんな銃が置かれているんですか?」
「ん〜。そうね〜…」
三里は顎に手をおさえながら、答える。
「あたしもあまりよく入った事はないからわからないけど、…そうね。多分、サブマシンガンくらいおさえていると思うけど…」
「サブマシンガン…ですか」
「ええ。でも、もしかしたらテロリスト共に持っていかれたかもしれないわね」
悔しそうな顔を浮かべる三里。
確かに、サブマシンガンくらいの武器があれば、襲われた際にも対抗できると思う。
それが敵に奪われたとなれば、現状苦しいはずだ。
「そんな暗い顔しないで、大羽さん」
三里におでこ辺りを突付かれて、目を大きく開ける。
「…え。私、そんな顔していました…?」
おでこをおさえながら、三里に言う。
「ええ。そんな顔をしていたわ」
「す、すみません…」
――三里さんだって、きっと不安なのに普通な顔をして頑張っているんだ…。それなのに私は……。
嫌な自分を見つけてしまい、自分への嫌悪感が心の中で広がっていく。
「――大丈夫よ」
三里が私の肩にそっと手を置いて、落ち着かせるように話した。
その顔には優しい笑みが含まれている。
「あたしも一応警察よ。こういう事は初めてだけど、きっとなんとかなるわ。だから、頑張りましょう」
「……三里さん」
出会ってまだ数十分しか経っていないが、三里の性格が大体わかった。
自分の事よりも他人の事を心配する。
そんな面倒見がよい性格からは、きっと上司にも部下からも好かれていただろう。
――…強いな、三里さんは。
心からそう思う。本当に彼女は強い人だと…。
「…ここね」
ふいに三里が扉の前に立ち止まり、私もそれに合わせて止まった。
扉のプレートには〈武器庫〉と書かれている。
ドアを開けようと、三里がドアノブを回す。
だが、ドアは開かなかった。
「あら…? …鍵がかかっているわ」
何度もドアノブを回して、押したり引いたりしているがドアが開く気配はない。
「弾薬も少ないし、本当は銃を使ってドアを開けたくないんだけど…」
仕方ないといった顔で三里は銃を取り出して、ドアノブへと向けた。
「ま、待ってください! あの、鍵ってどこにあるんですか?」
私は三里に鍵の在り処を聞いてみた。
「え…? 確か、2階の“管理室”にあると思うんだけど…」
「私、取りに行って来ます!」
「一人じゃあ、危ないわ! 取りに行くなら、あたしも一緒に―――」
三里が心配して、一緒に同行しようとするが私はそれを止める。
「ありがとうございます。でも、下の階に鍵を取りに行くだけですし、三里さんはここで待っていてください」
それでも、心配そうな顔をして迷っていた三里に私は笑顔でこう言った。
「心配しないでください。それに何かあったら、大声で叫びますよ」
「……わかったわ。でも、くれぐれも気をつけてね」
「…はい!」
私は三里の注意をしっかりと聞いて、その場を後に二階の管理室へと向かった。
署内に入る前に構図をしっかり見ておいたので、各階にどの部屋がどこにあるか、多少はわかっている。
ただ、来たときに各階を見回ったが、どのフロアもひどく荒らされて、歩きにくく行動しづらい。
二階へと着き、倒れていた棚や机を避けながら、私は管理室へと足を運ばせる。
管理室は確か、二階署内の奥から二つ目の部屋だ。
管理室まで大体5分。
ドアのプレートには〈武器庫〉と同じように〈管理室〉と書かれていた。
私は念のため、ポケットから銃を取り出して、管理室内へとゆっくり入った。
「…真っ暗だ」
部屋内は三里と出会ったときと同じで、明かりが点いていなくて、暗かった。
私はリュックサックから、懐中電灯を取り出して、ライトを点ける。
こうも、真っ暗な空間ばっかり入っていると精神的に参ってしまいそうだった。
「武器庫の鍵は…っと」
私は鍵がたくさん吊るされている方へと目を向けて、〈武器庫〉の鍵を探した。
――…あっ! これね。
鍵のホルダーに〈武器庫〉と書かれた鍵を見つけて、それを手に取った。
用がすんで、管理室から出ようとした時に奇妙な音が聞こえてきた。
私は耳を澄ませて、それを聞き取ろうとする。
タッタッタッタ…!
――…これは足音?
しかも、だんだんと近づいてきている。
――まさか…!
扉から少し顔を出して、私は廊下を見た。
そこで私の瞳に映ったものは…。
テレビに映っていたのとまったく同じ迷彩服を着て、その肩に銃をぶら下げていたテロリスト達だった。
大羽 唯
[所持品]
・ワルサーP99 [16発]
・ワルサーP99 マガジン(1)
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[]内は弾数。
()内は所持数。