[5/24 21:05] 狂う世界
現在、私は篠山市から脱出を図ろうと建物の影に身を潜めながら、行動していた。
今から、約2時間前…。
私は一人の人間を殺してしまった。
すぐに警察へと自首しようと思った。
だが、警察へと電話で連絡したが、繋がらなかった。
付けっぱなしだったテレビから緊急のニュースが流れて、それが聞こえてくる。
私は、男の死体をそのまま放っておいて、ニュースに目を向けた。
テレビ画面の隅には“速報”と映っている。
『 た、大変です! ○○県篠山市で謎のテロリスト集団により…市が占拠されてしまいました。テロリスト集団の数は少なくとも300はいる模様だと警察は調べております。これがその時の映像です!』
――…え?
私はニュースキャスターが言った言葉に耳を疑った。
――篠山市って…ここ…だよね…。
映像が流れ始めて、私は顔を真っ青にする。
それは私が殺した男とまったく同じ迷彩の服を着た集団が大量の市民を銃で射殺していくものだった。
射殺された市民の中には私と同じ学校の制服を着ている人もいた。
『け、警察はこのテロリスト集団が同県内の軍の銃を奪った犯人グループだと見ています…。生存している篠山市の市民の方々、すみやかにその場から逃げてください!』
――…うそ…嘘だ…、こんなの…ありえない!
何度もそう思った。だが、これが現実だ…。
その事実として、私の隣には既に息はないが、得体の知れない男がいるのだ。
そう…。
さっきまでいた世界が一瞬で180度、姿形を変えて私を未知なる恐怖へ誘った。
もはや、自首するなどそれどころではない。
私は急いでここから逃げる支度の準備をした。
動きやすい服へと着替えをした後、必要な分の食糧、携帯電話、懐中電灯と最低限の持ち物を斜めがけリュックサックに入れる。
そして、男を殺した際に奪い、使った銃を手にした。
銃のマガジンを抜いてみる。
確認をしてみたが、そのマガジンにある残弾数は限りなく0に近かった。
私は殺した男の体に予備のマガジンがあるかを探してみた。
――この男は一人で行動していたんだ。一人で行動しているなら、弾もその分多く持っているはずだ…!
私の思った通り、調べたらこの銃に合うマガジンが二つ、男の胸のポーチに収まっていた。
男の胸に収まっていたマガジンをとり、一つは銃へ装弾して、もう一つは着ていた服のポケットへと入れる。
これで支度は一応、済んだはずだ。
念入りにもう一度確認し終えた後、私は自宅から外へ出た。
それから、二時間。
なんとか、今までテロリストに見つからずに行動していたが、死と隣り合わせの緊張感がこうも苦しくて恐いとは思わなかった。
建物の影に隠れて相手に見つかりにくいとはいえ、やはり恐い。
多分、篠山市の市民全員はこんな事になるとは思ってもみなかっただろう。
銃を持っていた手が汗ばんでいる。
ここら辺で一息入れた方が今後のためにもいいかもしれない。
部活の疲れもあまりとれていないし、何よりこの二時間走りすぎて喉が渇いてしまった。
私は地面へと座り込んで、リュックサックに入っているペットボトルを取り出すとそれを口に運んだ。
ゴクッ、ゴクッ…。
「ふぅ〜…美味しい」
自分がちゃんと生きている心地がして、本当に美味しかった。
半分くらいまでのみ終えた後、ペットボトルの蓋を閉めて、リュックサックへと直す。
様子を見て、20分くらいはここで休憩をとろうと思った。
ここで私は、自分が持つ銃を調べた。
ワルサーP99とフレームに名前が彫られている。
確か、この銃はドイツの銃器メーカーで作られたはずだ。
装弾数は16発。使用弾薬は9mmパラベラム弾。
かの有名な映画の主人公もこの銃を使ったらしい。
前に一度、銃に詳しい友達から聞いた事があるが、まさか、それがこの銃だとは奪い取った当初は思いもしなかった。
今頃、彼も無事ならいいのだが…。
ブー! ブー!
「そろそろね…」
タイマーを掛けておいたマナーモードの携帯電話が振動を起こして、私はその合図と共に、立ち上がる。
最初の目的地は警察署だ。
警察の人に保護を求めた方が安全だろう。
警察署まで、ここからなら徒歩でも十分に行ける距離だ。
――…大丈夫だ。私は…絶対に死なない。
そんな強い思いを抱きながら、私は進路を警察署へと向けた。
大羽 唯
[所持品]
・ワルサーP99 [16発]
・ワルサーP99 マガジン(1)
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[]内は弾数。
()内は所持数。