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イージー・ラバー  作者: いちる
シガレット
13/23

勘違いからの三本目 そのに

なんとか目標どおりに投稿できました…。

次回も頑張りますが、遅れるかもしれません。

オーナーと夫人に見送られながらエントランスに出ると、ホテルのお客様がタクシーに乗り込むのが見えた。

ホテル前で待機していたタクシーはそれが最後だったらしい。

夫人がすぐに呼ぶとは言ってくれたけれど、駅までそう遠くもないので丁重にお断りして歩くことにする。

ワンメーターの為に呼び出すほどのVIPじゃないもの。


ホテルは少し高台にあるので、帰り道は緩やかな下り坂を下ることになる。

下り切った先の大きな道路は駅ではなく高速道路に向かっているので、右に曲がって公園沿いを歩く。この道を真っ直ぐ行って、コンビニの角を曲がってしばらく行けば駅に着く。

行きにも通ったから道は覚えていた。


さっきまでまだ明るかったのに、秋の日はつるべ落としとはよく言ったもので、どんどん暗くなってきた。駅に着くまでに真っ暗になりそう。


ふと公園の中をみれば、誰かいた。

こんな時間にひとりで何してるのかしら?

薄暗いからよくわからないけど、シルエット的に男性だと思う。多分若い。

ますます不思議だと思ったら、その人が振り返って目が合った。そのままじっと見られている。え、やだ怖い。


不自然に見えないように急いで立ち去ろうと、チラチラと確認しながら早足で公園の前を通り過ぎる。

植木で姿が見えなくなる少し前、動かなかったその人が歩き出すのが見えた。

方向としては私の進む方角、植木が途切れる出入口の方へ。

途端に、背筋が寒くなった。


痴漢? 変態? 引ったくり? 通り魔の可能性もあるし…もし、強姦魔だったりしたら…。

恐怖心に持っていたビジネスバッグの取っ手をぎゅっと握る。

どうしたらいい?


ホテルに引き返すのも、追いかけて来られたら坂の途中で捕まる気がするし、今からコンビニまで走るのも、このヒールじゃきっと追い付かれちゃう。というか出入口まで先回り出来るかも不安。

誰か通りすがりの人でもいないかと周りを見ても、薄暗い道には誰もいない。二車線の道路はけして狭くもないのに、なぜか車も通っていない。


え、絶体絶命? いやいやいや、まだ相手が犯罪を犯そうとしてるとは決まったわけじゃないし。

とりあえず誰かに電話してやり過ごすことにしよう。全く被害に遭わないとは限らないけど、牽制にはなるものね。


その場に立ち止まって、目線は周囲を伺いながらビジネスバッグを漁る。あぁ、パーティ中電源切ってたっけ? それより誰に電話しよう?

考えつつも探せば、その手に少し固い感触がして取り出す。それはスマフォではなかった。

薄暗い中でもキラキラしいパッケージのイージー・ラバー。

1時間だけ現れる恋人。


『それじゃあ、また』


耳にタカハシの声が甦る。

こんなとき、電話より誰か側にいた方が安全だ。路上犯罪に巻き込まれるのは、大抵がひとりのときだもの。

今、側にきてほしい。


「お願い…」


私は小さく呟いて、イージー・ラバーのボックスから一本取り出した。


ちょうどそのとき、誰かがこっちに向かって歩いてくるのが見えた。

多分、さっきの公園にいた人だ。

震えそうになるのを堪えてライターを開く。

2回失敗して、やっと点いた火を口元へ持っていく。頼むから消えないで。

近付いてくる姿は、更に暗くなった周囲のせいでますます恐怖心を煽る。



怖い!

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