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イージー・ラバー  作者: いちる
シガレット
11/23

物は試しの二本目 そのなな

今回、話の都合上短めです。

そのあと、私とタカハシはデパートを出て、アパートまでの帰り道にあるスーパーに寄って、クリーニング屋でスーツを引き取って帰った。

結構な荷物だけれど、スーパーのビニール袋もスーツもタカハシが持ってしまったので私の両手は空っぽだ。肩にかけたショルダーバッグだけ。

別にいつも持っているから平気なのに。


「荷物、ありがとう」


何故か入ろうとしないタカハシに、玄関のドアの前で荷物を受け取って言う。


「どういたしまして」


「入らない、の?」


誘ってる訳じゃない。でも、じゃなきゃどこに行くっていうのよ?


「もう時間切れなんです」


首を振りながらそう言われて、タカハシがイージー・ラバーだったことを思い出す。

1時間だっけ。

すごく長いように思えたのに、まだそれだけしか経っていないの?


タカハシは微笑んで、それに、と続けた。

私の両頬をその手が包む。近付く顔に、纏う甘い雰囲気。

その先なんて、予想するまでもない。


「今日は初めてのデートですから」


目を閉じると、バード・キスがひとつだけ降ってきた。


「それじゃあ、また」


今の言い方、高橋に似てる。

目を開けると、タカハシはいなかった。

夕方の冷たい風が顔を撫でる。

頬の温もりも、唇の感触も、風に全てさらわれてしまった。



家に入ってリビングの時計を見ると、まだ3時前だった。

荷物を片付けて、明日の準備をして、手の込んだ自炊をして、それでもまだまだ寝るには早かったので、お風呂にお湯を張ってゆっくりと入る。

バスタブに体を沈めて、ぼんやりと一日のことを思い返す。

充実した一日だった。

時間的にはいつもより短い外出だったのに、記憶に残っている出来事が多い。

デートとか、久しぶりだ。

唇に指で触れる。

キスを思い出すと、今側にいないことにチクリと胸が痛くなって、同時に顔がニヤけそうになる。



切ないのに嬉しいなんて、まるで片想い中みたいだ。



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