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砂漠の決闘2

魔王は自室で瞑目(めいもく)していた。これからは本当の戦いになる。エリート悪魔にLINEをして助太刀を頼もうかと一瞬頭をよぎったが、やめた。私は魔王だ。何者をも恐れない、最強であるべき悪の権化なのだ。私は一人で戦う。たとえ破滅が待っていようとも。それが志半ばで肺ガンで死んでいった父への(はなむけ)になるし、息子としてこんなハズレくじを引かされた母への贖罪(しょくざい)にもなると信じていた。そしてそれは、愚かな自分に最後のチャンスをくれたエルフへの誠心誠意の感謝にも繋がるのだ。


魔王はゆっくりと立ち上がると、やりかけのホワイトアルバム2のパッケージを見つめ、笑った。現実とはこれほどまでに過酷なのかと生まれてはじめて痛感しながら。


#


荒れ地に黒衣の魔王が現れると、勇者一行は物音もたてずに真正面で向かい合った。


「どうする。5体1だぞ。いくらなんでも卑怯過ぎないか?奴は本当は弱ぇんだろ?こんな勝敗がわかり切った戦い、俺は好かねぇ。」


スポーツマンシップを大切にするドワーフが勇者に耳打ちする。


「おい、魔王。」


勇者が言う。


「なんだ。」


「俺たちは本気で戦う。おまえは死ぬのが怖くないのか?」


魔王は高笑いをした。


「怖くないといえば嘘になる。しかし、私はもう腹を括ったのだ。貴様らに、俺の夢は邪魔させねぇ。」


魔王はがくがく震える膝を隠そうともせずうそぶいた。


勇者はニヒルな笑みを浮かべた。


「いいだろう。おまえの骨はここで朽ち果てるんだよ!!」


勇者は抜刀し魔王に斬りかかった。魔王は右手を前に突き出し、ファイアを唱えた。漆黒の炎が手のひらから放たれ、蛇のように勇者へと襲いかかった。ドワーフは拳闘の構えをみせて、一応いつでも助太刀できるように身構えた。勇者は炎を軽々と避け、魔王に真っ向から一太刀浴びせた。魔王が(くずお)れる。激しすぎる痛みになす術がなかった。勇者は二の太刀を浴びせるべく剣を(ひるがえ)した。魔王は待て、と左手を伸ばしかけたが、肘から先がすっぱりと斬られ、空を描いて地面へと落ちた。勇者はうめく魔王にかまわず、その胸に剣を突き刺した。魔王は絶命していた。


「勝負あったね。」


コンピュータオタクの柏木が呟く。オカマの僧侶は泣いていた。一人の男の死に様に、心を震わせられたのか。ドワーフは拳闘の構えを解き、勇者は仰向けに倒れた魔王を無慈悲に見下ろした。剣をその身体から引き抜くと、大きく払って血を飛ばした。腰の鞘へと納める。


「哀れな奴だ。おまえの死は、俺になんの感慨も与えない。」


勇者は踵を翻し、眼前に魔城の聳える荒れ地を後にした。


ほかの一行もそれぞれ達成感と複雑な表情を織り交ぜ、勇者の後に従った。エルフは最後まで残り、口の中でお題目を唱えると、一行の後を追った。

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