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ひとめぼれ

「ほう。勇者一行というからどれだけの骨太かと思ったら、木偶人形共もいいと...こ...」


夕陽に染まった荒れ地に現れた黒衣の魔王は、対照的に白いシルクのワンピースをまとったエルフに視線を止め、食い入るように見つめた。いや、違う。その真紅の瞳は明らかに狼狽していた。


エルフは自分に向けられた好奇の視線に少しの動揺も見せることなく、超然と佇んでいた。エルフの薄桃色のチークでかすかに化粧した頬は、瑞々しい白桃を思わせるようだった。そして大きな瞳を意地悪らしく細め、計算高くはにかんだ。こういう眼差しを向けられるのには慣れているのだ。


「なにかわたしの顔についてまして?」


エルフが魔王にだけ聞こえるような話し方で囁いた。もちろんその場にいた全員が息を詰めて静かになりゆきを見守っていたが、前回忘れられてたオカマが空気を読まずに、


「やーい。魔王さん赤くなってるわ!」と囃し立てた。ドワーフがすかさずヘッドロックをキメて、オカマは「やめてやめて!」と笑い転げていた。


「君...。ま、まず、お友達からでいい。いや、知り合いでいい。学園のアイドルと陰キャチー牛でいい。高級キャバクラの人気No. 1嬢と借金まみれの金ズルでもいい。どうか僕と、同じ墓に入る前提で一緒にどこか素敵なカフェにでも行ってくれませんか?もちろん任意同行で。私は魔王です。この世のすべての人間の中で一番力を持っているのです。それを行使する資格を持っているのです。なぜなら私は世界を漆黒の炎で焼き払ってしまえる魔王だからです。これは私の呪いです。話が逸れました。あなたを拉致するのは簡単です。でもそれではあなたは僕に絶対的な嫌悪感を抱くでしょう。どうか僕と一緒に、素敵なカフェへ。今私の脳内にはライオンキングのCan You Feel The Love Tonightが流れています。あなたは女神だ。どうか一度だけでもいい、僕に真実の微笑みを恵んでいただけませんか?どうかこの最強であるはずの可哀想な僕に。そんな作り笑顔はあなたに相応しくない。僕があなたを救ってさしあげましょう。どんな障害が待ち受けていたとしても真摯に向き合い、必ず乗り越えます。あなたと一緒ならそれができる。ああ、世界を包むハーモニー、命の歌よ」


魔王が一歩進み出る。すかさずコンピュータオタクの柏木が、


「おっと、魔王さん。それ以上近づくと火傷するぜ。なんせこの姉ちゃん、筋金入りの創価学会員2世ときてる。三度の飯より勤行が好き、そんな女に惚れてみろ。たちまち人生狂っちまう」


「私はそれでも構わない。」


「いいわ。でもそんなまだるっこしいことはしないで、あなたのお部屋で、お茶でもいただきましょう。」


「ちょっと姉さん!」


柏木が慌てる。


「いいの。私には考えがあるから。」


エルフはそういって、柏木に優しく微笑んでみせた。

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