砂漠の決闘
続きです
魔城の濠の外側にちょうど戦場とするには最適の場所があった。こちらは薮で姿が隠せるし、向こうのステージは荒れた砂地で格好の標的が何十人といる。勇者は口元を荒々しく拭った。
「退くな!戦え!勇者の命をとるんだ!!」
エリート悪魔が部下の悪魔たちを叱咤する。勇者は両手に一挺ずつ握ったトカレフのエアガンの撃鉄をおこし次々と悪魔たちにBB弾を食らわせ、薙ぎ倒していく。弾が切れれば、マガジンを外し腰に差した新しいマガジンを素早く填める。悪魔たちは心得たもので、何十人で一気に攻めたらあっという間に決着がついてしまうことをわきまえていた。後ろで所在なげにボーっと突っ立ってる悪魔がたくさんいる。
「まさか邪悪な心をもった悪魔共がサバゲーを楽しんでくれるとは思わなかったぜ。一発でも喰らえばちゃんと倒れる」
「ふざけるな!俺たちは三叉の槍で闘ってるんだぞ!トカレフのエアガンは卑怯だろ。不公平だろ。お前それでも正義の勇者か。俺たちが幼稚園児だったらとっくに遊びをやめてるぞ。銃のほうがカッコいいから。お前が勇者だから花を持たせてやってんだからな。」
エリート悪魔が恐ろしく軽快なフットワークでトカレフ(エアガン)の玉を避けながら叫ぶ。
「はっ。俺にとっての正義とはロックスターHYDE様のローレライの歌声だけなんだよ。貴様らにも地獄への片道切符をくれてやる!」
「俺たちは悪魔なんだよ。地獄は故郷だ。」
エリート悪魔が三叉の槍を棄ててしゃにむに突っ込んできた。エリート悪魔は勇者に抱きつきクリンチにもちこんだ。勇者はトカレフ(エアガン)の銃底でエリート悪魔の頭をゴンゴン殴った。エリート悪魔は恐ろしく尖った犬歯で勇者の剥き出しの首に噛みついた。
「痛え痛え痛え!!ちょ!遊びの範疇超えてるって!」
「うるさい!お前もちょっと強く殴りすぎだ!」
勇者とエリート悪魔が仲睦まじく組んず解れつしている間に、ドワーフは素手で軽く次々と悪魔たちを倒していき、コンピュータオタクの柏木は滑って転んだ傷をエルフの回復呪文によって治してもらっていた。
「南無妙法蓮華経、南無妙法蓮華経」
エルフが熱心にお祈りする。
どれくらい喧嘩ごっこが続いただろうか。気がついたらみなが地面に寝そべっていて、死屍累々だった。それらは柔らかに包むような夕陽の照らす橙色の光に浸っていた。こんなにガキのころに戻ったみたいにはしゃいだのは本当に久しぶりだった。
「俺たちもう兄弟だよな?」
隣で寝転がるエリート悪魔が勇者にささやく。
「だな。俺が兄だ。」
「なんでだ。俺が兄だろ。」
「ふざけんなコスプレ野郎が。今回の勝負は俺の勝ちだ。だから俺が兄だ。」
「お前首噛まれたときギブギブ言ってたじゃんか。」
「そりゃあ悪魔の牙だもん。痛いもん。だからお前の反則負け。」
「なんだと?いい加減口の利き方には気をつけろよ?俺が兄だと認めるまで喧嘩続行だ。」
「ちょっとあなたたち。」
エルフがお祈りを終えたのか、勇者とエリート悪魔のなかに割って入った。
「魔王様がお見えになられてよ。」
エルフは半分嘲笑のこもった声で囁いた。
続きます




