表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『婚約破棄された伯爵令嬢は、男爵家三男の全力愛に困っています』  作者: ゆう
バグった求婚と距離感迷子編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

25/30

第25話 貴族社会の評価反転

第25話 貴族社会の評価反転


噂は、音もなく広がっていく。


だが、確実に、そして静かに世界を塗り替える。


「ねえ……最近、例の二人の噂を聞いた?」

「クラリス・フォン・アルヴェーンと男爵家三男?」

「ええ。あれ、ただの格差恋愛じゃないわ」

「むしろ理想よ……」


その言葉が、あちこちで交わされ始めていた。


かつて――

「哀れな伯爵令嬢が格下に落ちた」

そう囁かれていた関係は、


今や

「覚悟を貫いた誇り高き恋」

と、語られている。


(皮肉なものですわね)


私は書斎の窓辺でティーカップを手にしながら、静かに外を眺めた。


「クラリス様、最近の招待状の量が倍増しております」


侍女ミレイが少しだけ困った顔で言う。


「……存じています」


机の上には、山のようなカード。


“理想の恋人像”

“新時代の貴族像”

“覚悟ある女性の象徴”


見出しはもはや賞賛の嵐だった。


(昨日まで冷たい視線だった方々が……)


「お嬢様、人望の回復どころか上昇です」


「誇張しないでくださいな」


(内心では少し驚いていますけれど)


――――


王都の社交サロン。


私はレオンと並んで歩いていた。


その瞬間から、空気が変わる。


「ごきげんよう、クラリス殿」

「本日も素晴らしい装いですわ」

「幸せそうなお顔ですこと」


そして。


「レオン殿、ご立派になられましたね」

「男らしい覚悟ですわ」

「お二人、とてもお似合いです」


レオンが固まる。


「……称賛を受け止める準備が不足しています」


「普段のあなたで対応なさい」


(むしろ今のほうが静かです)


「う、嬉しくはありますが……

これは現実でしょうか」


「現実ですわ」


「夢では……」


「夢ではありません」


背中を軽く叩くと、彼はようやく頷いた。


「……社会の手のひら返しというものですか」


「貴族社会は移ろいやすいのです」


「ですが、これはありがたいことですね」


彼がぽつりと呟いた。


「……あなたが笑われないだけで、救われます」


その言葉に、胸が少しだけ痛んだ。


(この人は、ずっと気にしていたのですね)


私は歩みを止め、彼を見る。


「レオン様」


「はい」


「あなたは最初から、誰の目も気にしていませんでした」


「はい」


「それを、私は誇りに思っています」


「……それは、私の誇りになります」


ふっと微笑むその顔は、少し照れていた。


――――


その時。


遠くから、ひそひそ声が聞こえてきた。


「でも……王太子はどう思っているのかしら」

「完全に立場がないわね」

「今更、後悔しても遅いわ」


私は何も言わず、静かに歩を進めた。


過去はもう、私の選択を揺るがさない。


(私は、私の道を選びました)


視線の先には、彼がいる。


不器用で、真っ直ぐで、

それでも確かに誇れる“隣”。


「クラリス様」


「何ですの」


「最近、誰かが言っていました」


「何と?」


「“あの二人は、恋を貫いた物語だ”と」


「……大げさです」


「私はそう言われるのが、嫌ではありません」


「私もです」


素直に、そう答えた。


そして私は気づいた。


貴族社会の評価が変わったのではない。

変わったのは、私たち自身なのだ。


「レオン様」


「はい」


「これからは、もっと堂々としてください」


「はい!」


「もう、隠れる理由はありません」


「はい!!」


(どうして二倍音量になるのですか)


彼は嬉しそうに頷き、


「では私は、全身全霊で“公認枠”を務めます!!」


「張り切りすぎです」


私は小さく笑った。


この賑やかな風向きも、

この奇妙な誇りも、

この関係も――


すべて、悪くない。


否。


とても、悪くない。

エリザベートの優雅に毒舌☆第25話感想


あらあらあら――

これはこれは、見事な“手のひら回転劇”ですわね。


「格差恋愛? 哀れ?」

ですって?


ふん。

そんなもの、覚悟を見せつけられた瞬間に価値が反転するに決まっていますわ。


クラリスさん、あなた。


“選ばれた令嬢”から

“自ら選んだ女”へと完全進化なさいましたわね?


素晴らしいですわ。

ええ、とっても。


……ちょっとだけ悔しいですが。


そしてレオン殿。


あなたのあの不器用な真っ直ぐさ、

見ているだけで胃がもたれますが――

それが「尊い」と呼ばれる世界なら、私はそれを受け入れましょう。


貴族社会が称賛に回った?

当然ですわ。


だって今のあなた方は


“恋を貫いた物語の主役”


ですもの。


誰がどう抗おうと、

これはもう「敗北確定ルート」ですわね。

王太子殿下、御愁傷様。



そしてここでエリザベート様から優雅な番宣ですわ


さてさて、皆さま。

感動に浸っているところ恐縮ですが――


ここで少し、

真の悪役令嬢から宣伝のお時間ですわ



エリザベート主演作品


『悪役令嬢になりたいのに、全部善行扱いされてしまうんですが!?』


悪役を目指したはずなのに

なぜか「聖女」「理想の貴族」「天使」扱い。


陰謀 → 称賛

策謀 → 感謝

嫌味 → 尊敬


という、

完全に世界がバグっている物語ですわ。


しかも私は

悪役をやめる気は一切ありません。


……ですが世界が勝手に勘違いしますの。


どうです?

愛と逆転のクラリス様に

混沌と勘違いのエリザベート様。


両方楽しめば

読者様の人生、豊かになりますわよ?



締めコメント


クラリスさん、レオン殿。


あなた方はすでに

「幸せに向かう物語」のレールに乗りましたわ。


でも覚えておきなさい。


本当に怖いのは

悪意ではなく、“無自覚な愛”ですの。


――そう、あなた方のような。


では皆さま。


エリザベート様のさらなるご活躍も

どうかお見逃しなく。


次はもっと派手に、もっと華麗に、

さらに誤解され散らかす予定ですわ♡

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ