表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
引きこもり卒業女子、最強AIと再び! 爆破計画少女と海底トンネル防衛戦  作者: あみれん


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

21/21

第21話 [終わりと始まり] (最終話)

五年前。

セレスティア王国とヴァルガード帝国――二つの島国は、大陸移動によって衝突寸前という前代未聞の危機に直面していた。

戦争か、国土消滅か――その瀬戸際で、ただ一人“夢の図書館”で出会った白髪の青年から「世界最強のAI《Air on G》」を託された少女がいた。


彼女の名はみお

引きこもりの女子高生だった彼女は、仲間や市井の人々との交流、そしてAIとの奇妙な信頼関係を経て、数々の妨害や裏切りを乗り越え、二国の衝突を阻止した。

あの日の潮の匂いも、青年が消える直前に見せた微笑も、今も彼女の胸に焼き付いている。


――そして現在。

22歳となった澪は、セレスティア政府の科学技術省に勤務し、新たな国家AI戦略プロジェクト《Affectis》に関わっている。

それは感情を読み取り、行動を予測する感生AI――防衛にも外交にも使えるが、使い方次第では危険な兵器ともなり得る代物だった。


海底トンネルの完成が近づき、両国の交流が加速する一方で、見えない火種が静かに燻り始める。

そして再び――潮の匂いが、濃くなる時が迫っていた。


本作は、前作『引きこもり女子高生、夢の図書館で手に入れたのは世界最強のAIでした』の五年後を舞台にした、完全続編である。

あの時の“選択”がもたらした未来で、澪は再び運命の渦に巻き込まれていく。

[11:59/崩落事故現場]


「ユナ! その手を止めて!」


澪の叫びが闇を裂いた。ユナの肩がわずかに跳ねる。けれど、その手はまだ爆弾を離さない。


「止めない……! ここで終わらせる。兄さんの無念を!」


「違う! あの崩落は――事故じゃない。仕組まれてた」


「……なに、言ってるの……?」


「黒幕はダーク•ヒールズ。戦争と混乱で儲ける連中。あの崩落も、関係改善を止めるための罠」 澪は一気に続ける。 「いま爆破したら、両国の信頼はゼロになる。混乱と対立で、一番得をするのは――他でもない、ダーク•ヒールズ。あなたの復讐は、奴らを潤すだけ!」


「嘘……そんなの……信じられない!」


「信じたくないよね。国の対応は酷かった。兄さんが蔑ろにされたって、そう思うのも分かる」 澪は一歩近づく。 「でも、いま爆破したら――兄さんを奪った連中の思うつぼだよ!」


ユナの指が震える。赤いランプが心臓みたいに脈を打つ。(やめられない。やめたくない。でも――)


「……私にも兄がいる」 澪の声が低く、真っ直ぐに刺さる。 「だから分かる。大切な人がいなくなる痛み。心に穴が空く絶望。――でもね」 息を吸う。 「爆破したら、その痛みごと“奴らの燃料”になる。本当に、それでいいの?」


「……っ」


「あなたのお兄さんは、きっと両国を繋ぎたかった。現場に立って、危ない橋を渡って、それでも前に進もうとしてた」 澪は畳みかける。 「爆破すれば、全部が無駄。憎しみはぶり返す。ダーク•ヒールズだけが笑う。――それ、兄さんが望んだ未来?」


ユナの喉がひゅっと鳴る。(違う。兄さんは……そんなの、望んでない) 大粒の涙が零れた。


「お兄さんが……望んでいたのは……そんなことじゃない……」


澪はそっと近づき、ユナの肩を抱く。 「あなたは間違ってない。兄さんを想う気持ちは本物。だけど、方法を間違えたら、その想いは罪になる」 耳元でささやく。 「私は、あなたを罪人になんてしたくない」


「……澪さん……」


ユナの膝が崩れる。爆弾から手が離れ――赤いランプが、ふっと消えた。


「もう、あなたはひとりじゃない」


堰が切れたように、ユナは澪にしがみつく。嗚咽が闇に滲む。(ごめん、兄さん……でも、わたし――)


「……わたし、やり直せるのかな」


「人は、いつだってやり直せる」


二人の呼吸だけが、冷たい空気の中で温かかった。


[13:26/ゲート付近・帰還]


焦げた匂いとざわめきがまだ残る通路。澪に支えられ、ユナが戻ってくる。


待っていたリオンが歩み寄る。

「……澪、ユナ...よかった、二人とも無事で」


リオンは深く息をついて安堵の表情を浮かべた。


「ユナ、行こう。全部、終わらせに。僕も一緒だ。澪、君は帰って休むんだ。ユナの事は僕に任せて」


澪は無言で頷く。


ユナは無言でリオンに歩み寄る、二歩、三歩――ふいに振り返る。澪と目が合う。


澪はきゅっと唇を結び、力強く頷いた。(大丈夫。私はあなたの味方。待ってる)


ユナは小さく微笑み、リオンと並んで歩き出す。向かう先は、湾岸治安監視局/Aqua Security Bureau。


[13:58/Aqua Security Bureau]



「――式典の混乱は、わたしが引き起こしました」 受付の硝子越しに、ユナははっきり告げた。 迷いはもうない、ここからやり直す。


[21:00/澪の部屋]


ベッドの上。糸が切れたみたいに全身が重い。まぶたが落ちた――


気づけば、夢の図書館。宙に浮く書架。淡い光。静けさ。


「……よくやったね、澪」


振り向くと、Air on G の青年が立っていた。音楽が人の形を取ったような、柔らかな笑み。


「あなたが、EIDOSを使えって言ってくれたから。あれがなかったら、ユナは――」 言葉が熱で滲む。「ありがとう」


けれど、胸の底に影が残る。 「でも……ダーク•ヒールズを敵に回したみたい。これから……どうなるのか...」


青年はゆっくり首を振る。 「避けられないことだった。海底トンネルが繋がれば、関係は前に進む。だから――奴らは妨害する。君一人の問題ではない。トンネルが開通した以上、奴らは必ず国を巻きこむスケールで両国の関係改善を阻止してくるだろう」 声が低くなる。


喉がひやりと冷える。(国ごと、巻き込む……)


「だが忘れないでくれ。君はもう一人じゃない。リオンがいる。……そして、僕も」 青年は穏やかに微笑む。


少しだけ、心が軽くなる。けれど、その笑みの奥に、微かな翳り。

澪は目を上げる。胸の奥で、静かな火が灯る。


(終わりじゃない、これは...始まりだ)


(でも...大丈夫。ひとりじゃない。なら、進める)


夢は静かに閉じていった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ