表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
引きこもり卒業女子、最強AIと再び! 爆破計画少女と海底トンネル防衛戦  作者: あみれん


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

16/21

第16話「潮の匂いの方程式」

[式典2日前 22:00/澪の部屋]


カーテンを半分閉めたワンルームの中で、澪はベッドに横になっていた。

部屋の片隅には資料が山積みで、ノートPCの画面には未送信のメモが点滅している。


(……ユナの爆破計画は、間違いない。でも“どうやって”かが見えない。このままじゃ……)


焦燥が胸をざわつかせる。目を閉じた瞬間、潮の匂いが窓の隙間から忍び込み――意識が闇に沈んだ。


目を開けると、そこは静まり返った巨大な図書館だった。

天井まで届く書棚が無数に並び、灯りの代わりに淡い光が本の背表紙から滲んでいる。


「来たね」


ページをめくる音に紛れて、白い髪の青年が歩み寄ってきた。

あの――潮の匂いと共に現れる、不思議な存在。


「……聞いて。全部話す」


澪は深呼吸し、これまで集めた情報を一気に吐き出した。

兄とユナの境遇の共鳴、崩落事故の真相に揺らぐ疑惑、ノナカの証言、《ダーク・ヒールズ》の影。

さらにAffectisで読み取ったユナの心の反応――「兄」「爆破」「ドローン」への異常な揺らぎ。


青年は黙って頷きながら耳を傾け、やがて言った。


「確かに、ユナは空調を経路に“第一次撹乱”を仕掛けようとしている可能性が高い。でも――まだ肝心のHOWが抜けている」


「……そう。やっぱり、私には分からない」

澪は唇を噛む。

「具体的な手段……時間もないのに……」


青年は一冊の本を棚から抜き取り、澪の前に置いた。

表紙には、青い文字で“EIDOS”と刻まれている。


「リオンのプロジェクトだ。EIDOS――Emotion-Informed Dynamic Outcome Simulator」


「……リオンの? どうして、それを知ってるの?」


「理由は後でいい。EIDOSは、Affectisの感情ベクトルを基盤に、地形や設備、潮位や警備体制まで織り込み、もっとも“実行されやすい行動シナリオ”を浮かび上がらせる。君の集めた断片を全部流し込めば、ユナの動きはシミュレートできるはずだ」


青年の言葉に、澪の胸はざわめいた。

――予測AI。ユナの計画を、AIで先回りする。


「……やってみる価値、ある」


そう答えた瞬間、青年の瞳がわずかに細められる。


「そのリオン……君の恋人か?」


「~~っ!」

澪の顔が一気に熱を帯びた。


「ち、ちがう! そ、そういうんじゃ……!」

胸の奥がざわざわして、言葉が勝手に口から溢れる。

(わ、私が好きなのは――)


だが、その瞬間。


青年の輪郭がふっと光の粒にほどけていった。


「潮の匂いが強くなる時が、近い。急げ、澪」


声だけを残し、青年は消える。


「ま、待って! まだ……!」

差し伸べた指先は空を掴むだけだった。



はっと目を開ける。

時計は23:12。窓の外から潮風が吹き込み、街灯の明かりが揺れていた。


「……EIDOS」


澪は飛び起き、ノートPCを開く。

Affectisのログをエクスポート、港で見たドローンの映像や送気塔の図面データを整理。

満潮時刻表、防災プロトコル、事故区画の保守ログ……思いつく限りを一気にパッケージした。


そして、メッセージ。


件名:至急相談

本文:EIDOSに入力すべきデータがあります。今夜でも動かせますか?人的被害を防げるかもしれません。


送信ボタンを押した数秒後、スマホが震えた。


リオンからの返信。


「今ラボ。来られる?」


澪の指は即座に動いた。


「10分で行く」


ジャケットを掴み、玄関を飛び出す。


(見せて……EIDOS。ユナの“次の一手”を――!)


夜風に揺れる街灯の下、澪の瞳は鋭い光を放っていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ