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引きこもり卒業女子、最強AIと再び! 爆破計画少女と海底トンネル防衛戦  作者: あみれん


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13/21

第13話「警告」

五年前。

セレスティア王国とヴァルガード帝国――二つの島国は、大陸移動によって衝突寸前という前代未聞の危機に直面していた。

戦争か、国土消滅か――その瀬戸際で、ただ一人“夢の図書館”で出会った白髪の青年から「世界最強のAI《Air on G》」を託された少女がいた。


彼女の名はみお

引きこもりの女子高生だった彼女は、仲間や市井の人々との交流、そしてAIとの奇妙な信頼関係を経て、数々の妨害や裏切りを乗り越え、二国の衝突を阻止した。

あの日の潮の匂いも、青年が消える直前に見せた微笑も、今も彼女の胸に焼き付いている。


――そして現在。

22歳となった澪は、セレスティア政府の科学技術省に勤務し、新たな国家AI戦略プロジェクト《Affectis》に関わっている。

それは感情を読み取り、行動を予測する感生AI――防衛にも外交にも使えるが、使い方次第では危険な兵器ともなり得る代物だった。


海底トンネルの完成が近づき、両国の交流が加速する一方で、見えない火種が静かに燻り始める。

そして再び――潮の匂いが、濃くなる時が迫っていた。


本作は、前作『引きこもり女子高生、夢の図書館で手に入れたのは世界最強のAIでした』の五年後を舞台にした、完全続編である。

あの時の“選択”がもたらした未来で、澪は再び運命の渦に巻き込まれていく。

[式典3日前 午後12:10/セレスティア王国 科学技術省・国家AI戦略チーム プロジェクトルーム]


昼下がりのプロジェクトルーム。

同僚たちは次々と立ち上がり、カフェテリアへ向かう。


「澪、ランチ行かない?」

「ごめん、まだやることがあって……」


軽く笑って断り、澪はひとり端末に向かった。

画面には国民データベース。検索窓に打ち込むのは――《ノナカ・ノブオ》。


(……事故に疑問を呈した唯一の記者……あなたなら、何か知ってるはず)


ヒットした個人情報のページを開き、住所とネットアドレスを確認する。

試しにネットアドレスにコールしてみるが、応答はない。

ため息をひとつ。


(仕方ない……直接行くしかないか)


上司の席に顔を出し、軽く頭を下げる。

「ちょっと体調が悪いので、今日は午後休いただきます」

「大丈夫か?」

「ええ、大したことありません」


そう言い残して、澪はオフィスを後にした。


ノナカ宅。


古びたアパートの廊下に、澪の靴音だけが響く。

ノナカ・ノブオの表札は埃をかぶり、ドアの隙間からは生活の気配がほとんど感じられない。


チャイムを押す。

しばらくして――チェーンのかかったままドアがわずかに開き、中からくぐもった声。


「……誰だ」


「えっと...私、国家AI戦略チームの者です。あなたが昔書いた“海底トンネル崩落事故”の記事についてお聞きしたくて」


ドアの向こうで気配が大きく揺れた。

「……帰れ! 俺はもう新聞社の人間じゃない!」


(こわっ!何で...?)


「でも……あなたの記事だけが、事故に疑問を残していました。真実を知っているんじゃないですか?」


「帰れ!」

怒鳴り声が狭い廊下に反響する。


(ダメか...)


諦めかけて踵を返したその時――背中に、低く押し殺した声が飛んできた。


「……首を突っ込むと命に関わるぞ。手を引け」


澪は立ち止まり、振り返る。

チェーン越しの暗闇に視線を向けて、真剣な声で言った。


「どういうことですか。――あれは、本当に事故じゃなかったんですね」


しばしの沈黙。

やがてノナカは重い口を開いた。


「あれは……最初から仕組まれていた“事故”だ。公式発表では『急激なプレート移動』なんて言っていたが、そんな事実はなかった。トンネル工事は最初からプレート移動を前提に設計されていたんだ。もし両国の距離が五百キロまで近づいたら中止する、そんな取り決めもあった」


「じゃあ、なぜ崩落が……」


「意図的な不良工事か……あるいは爆破だ」

ノナカの声はかすかに震えていた。

「確証はない。ただ、誰かが“事故”に仕立て上げた。それだけは間違いない」


「誰が……そんなことを?」


ノナカは一瞬言葉を詰まらせ、それから吐き捨てるように言った。

「敵は遠くにはいない。両国が手を取り合ったときに、一番ダメージを受けるのは誰だ?」


その言葉に、澪の脳裏に暗い影がよぎる。

軍事産業。強硬派。表には出ないが、裏で利益をむさぼる連中。


(争いが続く限り潤う奴ら……)


胸の奥で言葉が形になる。

――《ダーク・ヒールズ》。

自分だけの呼び名。闇に潜み、争いを糧に生きる者たち。


「……ありがとうございました」

澪は深く頭を下げ、アパートを後にした。


夕暮れの街を歩く帰り道。

スマホが不意に震え、メールアプリに未読がひとつ。

送信元は不明。「unknown」の表示。

件名は空白。本文は――


> これ以上掘り返すな


(……っ!)

血の気が引く。背筋を冷たい刃物でなぞられたみたいに、指先が震える。


けれど次の瞬間、胸の奥で逆に熱が燃え上がった。


(……やっぱり。ユナの兄は“事故”で死んだんじゃない。闇に殺されたんだ)


瞳が夕暮れの中で鋭く光る。


(ユナ……あなたはきっと復讐を考えてる。でも、その怒りを向ける相手は国じゃない。本当の敵は《ダーク・ヒールズ》だ。あなたが何を企んでいるかは分からないけど、あなたの行動がただ奴らを潤すことになるかも……。何としても、あなたと話さなきゃ)


澪は深く息を吸い込み、胸に熱い決意を刻んだ。

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