表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/27

王子、ニュー速だよ

 

 人形の最終形態って、どこだろうね。前世だとガ〇ダムかなあ。人間が搭乗できて宇宙までは行かないまでも、人の役に立つロボットをつくるという構想は人類の夢だよね。


 今の私には魔法陣技術があるから、これでやれるところまで、とことん突っ走ろうと思う。

 相変わらず自重それ何だっけ美味しいの状態で。


 夢のロボット開発。動かしやすいのは人型だ。めっちゃ硬いの作ってやろうとガ〇ダニウム合金レベルの金属を開発することにした。


 この世界で一番硬いといわれる金属はアダマンタイト。日本だと金剛と呼ばれるもの。ダイヤモンド並の硬さだ。しかし哀しいことに硬度は鋼以下である。そして鋼すら無い事実。

 どうやら、この世界にはまだ冶金学が確立できていないらしい。


 どこかに製鉄が出来る完璧ドワーフさんはいませんかー? と、探したところ、伝説の鍛冶職人ジャイダロンという人物と知り合えたので、前世の知識で日本刀の凄さを自慢した。おかげで鋼開発意欲に火が付いたジャイダロン。彼の奮闘でステンレス鋼みたいなものやダマスカス鋼みたいなものが出来上がった。

 みたいなものになったのは、ステンレス鋼は鉄にクロムやらニッケルやら含ませた合金ということしか知らないし、ダマスカス鋼に至っては積層鍛造するということしか知らない。

 そんなあやふやな知識を基に、この世界の魔法技術を合わせ、足掛け5年くらいで開発したのだ。前世のものと同じ工程は踏んでいない。まがい物、擬きと言うほかあるまい。


 目指せ、大気圏に突入しても融解しない合金開発! だったけど、出来上がったのは前世現代日本レベルの製鉄か……。

 まあ、今世の魔法世界の製錬レベルが地球でいう6世紀、下手したら紀元前だったから、そこから千年以上進んだだけでも進歩だな。


 そんなこんなで出来上がったロボットがこちらです。


 芯にダマスカス鋼を使った駆動部品の連結で作り上げた骨組み、それを覆う輝けるステンレスボディ。色合いが冷たかったので液体魔法生物から作り出したソフビニで人工皮膚を再現。見た目まるで人間。

 似姿は私そっくりにしよう。キリアネットちゃんが抱き締めてくれたら以下略。


 服装を侍にしたから和製王子みたいになった。うーむ、和洋折衷。

 キリアネットちゃんの手紙で等身大魔陣人形を飾る場所を確保したってきた。嬉しいな。

 更に武具を追加だ。薙刀を装備させよう。武者っぽくなったぞ。

 これで戦闘もこなせる。キリアネットちゃんを守る侍ロボの完成だ!


 完成したところで、16歳になっていた。もうすぐキリアネットちゃんと結婚できるよ。うきうきわくわく過ごす。

 そんなある日のこと、母上きた。


「ヒュー、結婚指輪の準備は出来たの? 貴方のことだから研究ばかりして、どうせ忘れてるんでしょう」


「いや、さすがに自分の結婚式で使う指輪のことは覚えてますよ母上。でも、ミスリルにするかオリハルコンにするかで迷ってますね」


「つまり、まだ出来てないってことじゃない。言い訳しないの」


 めっ、と叱られてしまった。可愛いなこの母上。母上、金髪碧眼の小顔で小柄で爆乳なお嬢様という萌え要素を詰め込んだ見た目だからか、すごく可愛いんだよね。

 同い年なら愛でてましたよ。いやホント。


「迷ってるなら決めてあげるから、出しなさい」


 なんだかんだで優しいし、母上。


 鍵付き棚に仕舞っておいたペアの指輪二種類、母上の前に並べる。

 一つはミスリル銀の指輪ペア、もう一つはオリハルコン白金の指輪ペアだ。


「あら、作ってあるじゃないの」

「だから、どちらにするかで迷ってるんですよ」

「迷うことなんてないわね。両方になさい」

「えええ? 二つも指輪交換するんですか?」

「違うわよ。両方を合体させなさいってこと」


 合体とな。我が母ながら突飛な発想だなあ。


 ファンタジーの定番であるこの二つの金属だが、この世界では前世でいう銀と白金である。

 アダマンタイトより硬度が低く、アルミニウムぐらい柔らかいので、盾や剣になど出来るはずもなく、こういった見栄えの良い装飾品に多く使われている。


 そんな訳で、加工しやすいこの金属たちを組み合わせて指輪にしても、良いわけだ。

 母上の気まぐれ発言かと思いきや、こういう風にしたらいいと紙に絵まで描いて図解してくれた。シルバーとプラチナが描いた流線形が重なる優美なデザインだ。


 母上、デザインの才能ありますね。え、アパレル業界で既にデザイナーしてる? 実績ありまくりじゃないですか。知らずに失礼しました。


 ふと、転送陣に手紙が届いているのに気づく。

 執務机の上、何の変哲もない銀盆に仕込んだ転送陣には、毎日ゴリンダから報告書が届く。今日も、そんな時間かと折り畳まれただけの紙を開いた。


 そこには一文。


【速報】キリアネット様、結婚を嫌がりゲロ吐きの練習をしておられる模様


「…………は?」


 よくわからなかったので、その辺にあった紙で返信した。


【困惑】kwsk【そっち行く】


 と。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ