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王子、調子こくよ

本日もゴリラ日和ですね。

前話後書きでゴリラ語にていいね催促したら、いいね増えてました。

ありがとう。

その気持ちがゴリラハート。

 私、気づいちゃった。

 キリアネットちゃんが転生者だってことに。


 卒パ会場で婚約破棄の断罪劇が起きたら、ぶった切ってやるつもりで武者ぁぁな格好させた等身大魔陣人形たちを用意していた。

 そして、できることならヴェルソード義兄がアホやる前に回収したかったけど、彼の婚約者である伯爵令嬢ミラリスが思った以上に有能で、つい、見学してしまい、聖女が暴走してからしか侍ロボたちの出番がなかったわけだが。


 まあ、それはそれとして。

 ちょっと予定外だったけど挽回はできると信じて脇に置いておく。


 それよりも、キリアネットちゃんがうちのロボたちを見て武者だ侍だと口走ったことの方が大切。

 この世界には、ちょんまげはおらんのだよちょんまげは。

 完全に日本の産物なんだよね、武者ぁぁもSAMURAIも。


 キリアネットちゃんも日本からの転者説が浮上した。

 ま、まさか、私と一緒……! ドキン! ときめくんだよ我が心が!


 訊こうかなあ、尋ねてみちゃおうかなあ、転生者なのかって。日本を知っているのかって……。

 気になるけど、狭い馬車の中でキリアネットちゃんの美しい顔面からのキラキラ天使ライトビーム略してキラ天ビームを浴びていると、なかなか言い出せない。

 心做しか、キリアネットちゃんも私のこと気にして、チラッチラこっち見ているし。何か言いたそうだし……。

 あれだ、お互い、意識しちゃって無言になっちゃう悪循環だね。


 結局、進展ないまま帰宅。


 うわ、ゴリラ追いかけてきたああ!!

 いやあれ、ゴリンダだけどさあ!

 どうして怒ってんのさ。


「お嬢様を危険な場所にお連れしやがってええええ」


 って、そりゃあ悪かったよ。


「私も連れてって下さればお守りできたのにい!」


 それも悪かったよ。でもさ、ゴリラ学園長の思惑に乗るの嫌だったんだよ。

 姪っ子に会いたいだけのゴリラ学園長ね。

 急に卒パの招待状を用意させたからって、姪っ子もお洒落させて挨拶しに来いって無茶ぶりだよ。

 ゴリラ着飾って何が面白いの?

 ディスったわけじゃないよ。

 ゴリンダ着飾らせて親族に挨拶ってことは、私の色に染めて私のものにしたよっていう意味になるんだよ。ゴリラ族の中では。

 恐ろしい罠もあったもんだ。

 こんな所にゴリンダ主人公ヒロインムーヴが落ちているとはね。

 走馬灯のように駆け巡る思い出のアルバム、『結婚前、伯父さんへの挨拶』!!!!


「ぎゃああ無理、無理いいぃぃ!!」


 思い出しただけで鳥肌が立った。思い出して良かった。気づかずに婚前挨拶するところだったんだよ。

 私ったらナイスファインプレー。

 褒めてくれるならまだしも、なぜに追いかけられないといけないの。理不尽だ!


 ちょっと怒れてきたので、癒しを求めてキリアネットちゃんのところへ。

 え、お風呂中?

 それは風呂場でバッタリ。ラッキースケベ発動の予感がする!


 と、欲望へ舵を切った私は馬鹿なのかもしれぬ。

 この時、明らかに思考を放棄していた。


 元女のくせに、生まれ変わってバブゥの頃から股間のゾウさんとトモダチ〇コしていたからか、思考も男性寄りになってしまったんだよ。そうだよ。きっとそうに違いない。


 風呂場ぁ! キリアネットちゃん! 濡れた銀糸に輝く艶髪に、火照ったからだに浮くその雫! その雫に私はなりたい! 水滴となってまとわりつきたい! 彼女の美肌を堪能したい!!


「殿下……」


 めっちゃ蔑んだ目で見られた。


「ち、違うんだ…………」


 お、おら、無実だ。まだ何もしちゃいねえ。

 ただちょっと暴走して脱衣所まで来ただけで。

 キリアネットちゃんのバスローブ姿、ふつくしい……。


 それにしてもキリアネットちゃん、騒がないな。

 婚前の乙女が柔肌見られたというのにウンともスンともキャーとも、顔色一つ変えないとは、貴族女性ってすごい。

 もし彼女が転生者だとすると、中身は成人女性かも。お婆ちゃんでも可。老練の気配。

 落ち着いたクールな清楚美人、善き哉。それでいて、ユーモアも持ち合わせている感じの、普段は涼やかな瞳なのに甘えるときは潤んだ瞳で見つめられちゃったりしちゃって……。


 という妄想をしていたら、


「きゃあ殿下お戯れを。まだ婚前前ですのに、私を犯す気ね。薄い本のように薄い本のように」


 茶目っ気出してきたよ?! ユーモアの塊じゃない! キタコレ!

 しかも、くっころまでしてくれたよお!


 ヒャホオオオウウウ!!!!


 理想が服着て歩いてるってこういうこと言うんだな。

 今はバスローブ姿だけど。


 ……ずっと見てたら目に毒……いやいや寿命が伸びますなあ。ハァハァ。

 だんだん自分が気持ち悪いやつになってきたので、この辺でやめました。すんません調子こいて。


 キリアネットちゃんに「お休みなさい」を伝えてから、そっと廊下へ出て、ゴリラ確認。

 これは別に、ゴリンダに怯えて、じゃないんだよ。

 こ、怖くなんか、ないんだからね。ビクビク。


 本日の卒パでは色々あったから、始末つけないといけない。

 王子や聖女は打首獄門晒し首でも構わないけど、ヴェルソードは確保しなければ。

 彼が健在じゃないと、キリアネットちゃんに迷惑がかかる。

 それは良くない。私的にも良くない。

 キリアネットちゃんは私の嫁だから!

 ヴェルソードの廃嫡は絶対阻止だ。


 ゴリラ学園長に魔法陣で手紙を送って連絡を取る。

 王族の避難は無事完了したってさ。さすゴリラ一族の長。


 セザール王子と頭ハッピー聖女は、既に魔力封印して監獄へ護送。

 家族との別れもなしで。

 聖女はアレだから別れを惜しむ人いないけど、セザールくんは可哀想かも。第八だかそこらの王子だったからか、あまり大事にされてない感。

 彼、ビリンダム城塞に一生幽閉だし。

 きっと城塞では元王族だなんて事実は忘れ去られて、生涯を寂しく暮らすのだろう。

 ……前世でもあったなそんな話。ああ、鉄仮面だ。あれは高貴な身分の人の末路って説、あったよね。


 王子の手下たちは親を呼び出し、相手方の婚約者とその家族で話し合いの最中だそうだ。

 ほぼ全員、破局だろうけどね。

 そこにヴェルソードはいない。

 なぜなら彼は、あのどさくさに紛れて我らが侍ロボが確保し、私が身の上を預かっているからだ。


「んーんーンンンーっ!」


 今もそこで、猿轡をされロープでグル巻き芋虫みたいに転がっているのがヴェルソードくん。

 フィスティンバーグ家の次期当主(予定)様だ。


「お初にハロー、お義兄様。私はキリアネットちゃんと幸せになりたいんだ。お義兄様は、私の邪魔はしないよね? ね?」


 確認しつつ、猿轡を外し、棒でつつく。


「んな……! この、犯罪者がっ!」


「ええー自分の婚約者に冤罪被せたやつが私を犯罪者呼ばわりするのは間違ってるよ。しかも、本物の犯罪者な窃盗犯を手引きして証言に立たせるとかアホなことまでしておいて……お前は何様のつもりなの?」


 更に、棒の先で抉るようにつつく。

 先の尖った木の棒だから痛いよ。


「イタッ、イテッ、この野郎! 俺を攫ったのだ! 貴様も犯罪者だろうが!」


「攫ってないよ。保護したんだよ。お義兄様、あのまま王家に捕まってたら婚約者と親戚一同に囲まれて廃嫡の上、追放を言い渡されていたよ。追放って知ってる? 貴族の身分を剥奪されて庶民になるんだよ。世間知らずの箱入り坊ちゃんにはキツイよ」


「そんなもの! 愛するハッピーがいれば、どんな困難も乗り越えて生きて行けるとも!」


「その愛するハッピーだけどさ、『審判のダンジョン』行きなの分かってる? あそこ行ったら、もう二度と会えないよ。

 あとね、彼女は人間じゃないよ」


「はあ?!!」


 うん、気づいてないっぽいね。


 卒パ会場で見せた、多数への一瞬での洗脳。薬剤を使用したって無理。魔法でも、あれだけ強力に人間を操るには、人間離れした魔力と精神力がいると思う。

 幸運聖女という通り名も、異常な幸運が続くという体質も、孤児という捏造しやすいプロフィールも、怪しいことこの上ない。

 おそらく名付けした神官すら操り、学園でも一大ハーレムを形成した、あの習性……。


 うーん、唸れ私の推理力! 助けて前世の記憶!


 魔女? 悪魔? そういう邪悪なものに、乙女ゲームの悪役令嬢が乗っ取られたりするパターンあったよね?

 ざまあされるヒロインも、邪神の器だったというオチを読んだことがあるから、聖女も闇に囚われてアタオカになった、とか?


 ううーん、違うなあ。あの頭ハッピーは、どれも違う気がするんだよ。

 だからって何者なのかは、さっぱりなのだけど。


 断罪劇を予見していた転生者っぽいミラリス伯爵令嬢なら、ヒロインの正体を知っているかもしれない。

 今回のことは乙女ゲームの中の出来事なのかも問いたい。

 私が知っているのは、『ゴリラ令嬢の華麗なる王宮生活』っていう小説を原作にした同人乙女ゲームだけ、だからさ。

 まさか、2つの乙女ゲームが重なってるってことも、ないよねえ?


 ちょっと聞いてこよう。ミラリス伯爵令嬢に。

 王宮に行けば会えるかな。ヴェルソード待ちしているはずだし。

 私が持ち帰っちゃったけどヴェルソード、取引にちょうど良い。持って行くよ。


「うおおおいいい引きずるなああああ」


 黙れ手荷物。



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