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結婚なんて無理だから初夜でゲロってやろうと思う  作者: 風巻ユウ


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13/27

王子、卒パに出るってよ

 

 キリアネットちゃん謎のゲロ吐き案件の為、急遽、隣国へ来たのだけど、モクサロンティーヌ様の強烈なキャラを実感して、あ、これドアマットヒロイン展開じゃね? キリアネットちゃんドアマット要員じゃね? と気づいた。


 フィスティンバーグ家の問題については、私の密偵(ゴリンダ)も前々から探ってくれていた。

 そもそも、王家と婚約する時に父上だって調査しているだろう。そして問題だらけの家だってことは分かっている。けど、この婚約は国同士の親交を深め、お互いに益のある結びつき前提なので、家庭内の問題は些事だったのよね。

 大局から見たら、貴族の娘が親の意向で嫁ぎ先が決まるなんてこと当たり前。家庭内の不和も貴族家ならよくあること。

 公爵家の家計簿が火の車でも、必要なのはその家柄、嫁いで来る時の身分が私と合っているかだけだからね。だから、嫁に来た後に実家が財政破綻しようが、一家で首吊ろうが、こちらはキリアネットちゃんさえいただければそれでいいのよ。

 むしろ、キリアネットちゃんください幸せにするから。

 問題のある家族はノーサンキューですとも思う。


 そうだね、いっそフィスティンバーグ家を解体してもいい。

 キリアネットちゃんをいただいた後は、美味しい所だけ吸い取って残りカスはポイしてやろうか。

 具体的には、家柄(ブランド)だけいただいて無能は放り出すということだけど。

 まあ、この考えはフィスティンバーグ家の跡継ぎが不甲斐ない場合の話。跡継ぎさえ、しっかりしていれば解体なんて考えない。


 お家の血統の嫡男、つまり血族の跡継ぎはヴェルソード・タンベルク・フィスティンバーグと言ったっけ。

 現在、聖ゴリラ魔法学園の最終学年生。

 際立って良い噂は聞かない。悪い噂ならいっぱい聞いたけどね。ゴリンダからの報告で。


「ヴェルソードは明日、卒業パーティーですの。ですから、こちらには顔を出せないはずですわ」


 顔色を悪くしたキリアネットちゃんの大叔母が、そう言う。

 目が泳いでいるよモクサロンティーヌ様。

 頑張ってヴェルソードの話題を逸らそうとしている感。


「おや、明日が卒業式ですか。ご卒業お目出度う御座います。これはお祝いに駆け付けなければいけませんね。丁度、私もこの国に来たところですし」


 うまい具合に跡継ぎを見定めれるじゃないの。式典やパーティーなら、私の立場上、来賓として潜り込める。


「いいえいいえ、お構いなく。殿下に御足労いただくなど……急で……準備も整いませんのに……」

「それこそ、お気遣い無用ですよ。こんなこともあろうかと、礼服は持参しております。ねえ、ゴリンダ」


「はい、殿下」


 良いお返事をするゴリンダ。

 彼女の計らいでキリアネットちゃんのドレスだって用意できている。


 その日は唖然とするモクサロンティーヌ様を尻目に、フィスティンバーグ家へと泊まった。

 勿論、魔法学園への通達も忘れない。

 急だけど卒パに出席するよ。お構いなく、と。


 翌日、朝からの慌ただしい準備中、魔法学園の学園長から卒パ招待状がきた。

 急だけど来賓挨拶やってね。姪っ子も連れてきて、と。


 ……聖ゴリラ魔法学園の学園長って、ゴリンダの伯父さんだったんだね。何を隠そう姪っ子とはゴリンダのことだよ。


「ゴリンダ、襟元やって。クラバットがうまくできない」

「はいはい殿下」


 襟元を正すの苦手。前世では彼氏のネクタイさえ締めたことないから。彼氏の為にネクタイの結び方を学ぶとかそんな乙女女子なことをしたこともなくむしろ彼氏という生き物を見たこともない……え、哀しくなってきた。

 こういう時は今世の婚約者へ想いを馳せよう。


「クラバットはキリアネットちゃんの瞳の色でスカイブルーか。髪色の銀糸で刺繍してくれたんだね。ゴリンダ、ありがとう」

「お褒めにあずかり光栄です殿下」


 私の苦手なところにゴリラ手が届くんだよ素晴らしい。スパイもできるし。マジ優秀ゴリラ。さすが聖ゴリラの子孫。現、魔法学園の支配者一族。

 そんな新たな魅力溢れるゴリンダと、現状把握情報交換ターイム。


「あの様子だと、モクサロンティーヌ様は跡継ぎヴェルソードくんの所業を知っているね」

「はい、そうですね。各関係者がこの国の政治宮に呼び出されて、直接の審問を受けられたようですよ」

「マジか。審問って公開処刑みたいなもんじゃないか。そりゃあ、さすがのモクサロンティーヌ様でも顔面蒼白案件だわ」


 ヴェルソードくんの悪い噂を知り、あまつさえそれを国王から指摘され、審問の結果、「改心の兆しなければ廃嫡」となったそうだ。

 しかもそれを国家占有契約魔法陣の上で行われた、と。

 国王、本気である。


「それで、魔法学園は今、幸運聖女の手に堕ちてるの?」

「はい。学園の男子生徒は全て堕ちた状態です。明日の卒業パーティーで、ハーレムメンバーたちは婚約破棄を狙っております」


「大変じゃん」

「大変です」


 只今、聖ゴリラ魔法学園では、幸運聖女と呼ばれる異常に幸運が続く聖女の逆ハーレムが出来上がっているのだとか。

 異常に幸運が続くというのは、調査の結果で、彼女自身スラム出身の癖に成り上がっていること、ハーレム形成が非常に迅速に行われたこと。

 これらを調べていく内に、どうやら洗脳の薬剤や魔法を使用していると、判断された。

 洗脳は犯罪であり、国家反逆罪に問われる。


 で、女一人に男がいっぱい囲っている状態が逆ハーレムと称するとして、その逆ハーレムにヴェルソードくんも含まれているという。

 あらまギルティ。

 彼は婚約者である御令嬢に卒業パーティーにて婚約破棄を叫ぶ予定らしい。

 叫んだが最後、婚約者の御令嬢たちは国王まで味方につけて準備万端なので、ざまあ返しされること確定。

 絶対これ、令嬢の誰かに転生者が含まれているだろ、これ。


 私が魔法学園の現状を知ったのはここに来る時なので、知った時にはもう遅いというやつである。

 こんな乙女ゲームみたいな展開が、己の婚約者の身内に起こっているとは夢にも思わなんだ。あまつさえ、乙女ゲーム展開を先読みした婚約者令嬢むしろ転生者が暗躍しているかもなんてねえ……。

 ここから、ざまあ返しを更に返すって無理ゲーだよ。

 ヴェルソードくんには大人しく廃嫡されてもらおう。そうしよう。


 と、私の中で決着したのに、ゴリンダが不穏なことを言い出した。


「このままだとキリアネット様が跡継ぎとなりますね」


 はえ?


「何で? キリアネットちゃんは私の嫁だよ? もう直ぐ結婚するんだ」


「まだ嫁じゃないですし、結婚もしてないじゃないですか。跡継ぎが廃嫡されたらキリアネット様を担ぎ上げる声が分家から出ますよ」


 何その理不尽。

 まるで見てきたかのように言うねゴリンダ。


「挙式はまだでも結婚は確定してる。私とは婚約してる。私の目が黒い内は、こんな没落貴族家を継がせるわけないじゃん」


「殿下の目は太陽の色ですが」

「言葉の綾ってやつだよ」


 思わず前世での言い方になっちゃっただけだよ。

 忘れて欲しい。


 それにしても、そんな跡継ぎ問題が実際に起こるの……?

 ゴリンダの妄想じゃなくて……?


 …………少し考えたけど、跡継ぎのヴェルソードをきちんと当主に据えないとキリアネットちゃんにシワ寄せが来るだろう可能性は、案外予想できた。


 直系の兄妹、2人しかいないもんなあ。

 この国は直系子孫の血族相続が絶対なのだ。分家や能力ある別血統からの後継者なんか恥だという不文律があるらしい。

 もし、くだらない血統主義に拘ってフィスティンバーグ家が取り潰された場合でも、キリアネットちゃんを担ぎ上げてのお家再興とかもあるかもしれないね。


 不安の芽は摘んでおかないと…………。


「わかった。ヴェルソードお義兄様を助けよう」

「急に呼び方に親しみ込めましたね」

「黙らっしゃい」


 こんな会話を交えながらゴリンダとお喋りをしている間に、キリアネットちゃんの支度が整ったみたいだ。


 そこには燦然と輝く天使がいた。


 アイボリーの布地に金の刺繍は光の模様。太陽の色の花飾りがドレスを彩りキリアネットちゃんの美ボディを包んでいる。

 艶やかな青銀の髪はくるくる巻き巻き。これは見応えあるなあ。

 気合いの入った髪を飾るのが私の瞳の色、太陽の色だ。ネックレスとイヤリングも太陽の色した宝石を中心にしたもので、髪・首・耳を三位一体の差し色で賑やかす。


 控えめに言って美少女な我が婚約者殿。

 私に意味深な視線を送った後、はにかむ。

 はい、かわいい。


 頬が熟れた桃のようだよ。あれはチークじゃない。天然の色だ。照れているんだ。

 とても、かわいい。


 私の嫁が可愛いので、全力で守ろうと思う。どんな時も。


 馬車に乗り込み魔法学園へ。

 卒業パーティーともなれば参加者たちが学園門に集い、馬車の行列が出来ていること必至なので、そこまでは行かない。

 手前で転移魔法陣発動。瞬間で到着。

 偉い人専用ロータリーで馬を止めて、キリアネットちゃんをエスコートしつつ降りる。


 控え室で他の来賓方へ挨拶。後、パーティー会場の迎賓館へ。

 階段上の王族席には玉座。その隣に妃の席。まだいらっしゃらないようなので、近くにあった来賓席へと着座した。


 迎賓館の大ホールを下に見下ろす。

 階上席はとても見晴らしが良い。

 ここから観る断罪劇は、いったいどうなることやら。


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