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日清戦争 -54 生存擱座

『浪速』

「『福靖』 逃げます!!」

「『福靖』を目標に。射撃開始。『千代田』には真後ろではなく右後ろにつかせろ。それなら火力を上げられる。」

「艦長!!入港時に一度速度を落とします。それが最後の撃沈タイミングです。」


 『福靖』 

「見えた陸地だ!!威海衛だ!!」

歓喜の声が上がる。味方すべてが…自分たちを生かすために犠牲になったその犠牲が無駄ではなかった証は己の命だ。

 だがそれを覆す存在はある。砲撃の着水音だ。

「『浪速』『千代田』です!!」

 しぶとい追跡者が迫る。

「威海衛の砲撃範囲に逃げ込め。そうすれば勝ちだ!!」


 『浪速』

「もうすぐ威海衛要塞砲射程に入ります!!時間的制約が厳しいです。」

 東郷は頭を縦に振る。その頭の中では冷静な計算が回っている。

「敵砲台発砲!!」

 射程に入り次第、威海衛の砲台は射撃を開始する。

「当たれば撃沈です!!」

「田中君。最大射程だ。有効射程ではない。この距離ではあたらん。回避運動をしながら砲撃を継続する。」

 東郷はようやく見せた田中の表情に若干の笑みを覚える。さすがに総数60門以上の砲は怖いらしい。

「それにな 田中。あれを沈めれば日本は輸送船を安全に航行できる海域が増える。それは『浪速』を失ってでも得るべき戦果だよ。」

 田中は驚く。東郷の判断能力・そして覚悟を。

「田中よく見ていなさい」


 『福靖』

「『浪速』追撃をやめません」

「なんて奴だ!!要塞砲の射程内だというのに!!」

(自艦を失う可能性をかけても…二度と通商破壊をさせないという覚悟か…)

「入港のために速力を落とせば撃沈です。」

「速力を落とさずに旋回軌道をして時間を稼いでも…『済遠』を撃沈した船が増えて…状況は悪化するか…」

(仕方ない…また船を失うとは…だが情報と兵の命は失わせない。)

「威海衛海岸線に突入…擱座させるぞ。」


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