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日清戦争 -53 生き残れ

 『済遠』

「『福靖』に手旗信号。」

 方伯謙は木の板に命令を記すと傍の副官に渡す

「艦長…」

「いうな順番が…我々の順番が来たということだ」

 副官の顔は恐怖に染まっている。

「行け。」


 『福靖』

「方艦長…」

 『済遠』の手旗信号から艦橋の士官が静まり返っている。

「程副長。私は…黄海で『済遠』とともに真っ先に逃げだした。そして、船を失ったのにもかかわらず 彼を臆病…卑怯者と攻め立てた。」

 『福靖』は転属に伴い、艦長を変えていた、『済遠』ともに逃げ、逃走中に座礁・船を損失した艦長呉敬栄に。

「私もです。呉艦長。我々は…保身だけで彼を攻め立ててしまった。」

 副艦長も同様。これまた生き残り。

「生き残ろう…彼のためにも…彼が生きていればいずれ謝れる。」


 『吉野』

「敵艦艦隊正面に展開。清国艦隊の入港を阻止する!!全艦撃沈する。後衛の3隻が届くまでの時間を稼げ!!」


 『浪速』

「艦長…『和泉』が追いついてこれば『広丙』は任せて2隻だけでも追いましょう。その方がマシです。」


 『吉野』率いる第1遊撃隊第1分隊は威海衛正面をふさぐため、進路西北西 南に日本艦隊 北に清国艦となるような同行戦になる。日本艦はその速力を生かし、敵前方に躍り出て北向きに進路をとる。取れにつられて『済遠』も進路を北向きに向けるように強要される。

 もっとも砲火にさらされる『済遠』は煙を上げている。

「後部砲塔…『福靖』を打て!! あてるなよ!!」

 日本艦隊は最も注意する人間が乗っている『済遠』に砲火を集中している。第1遊撃隊前衛1の巨砲艦である『高千穂』の26㎝砲弾も『済遠』周辺に大きな水柱を上げている。

 その中『福靖』周囲に上がるたった1本の水柱。26㎝よりは小さい。それでも目立つ。

『済遠』の艦尾砲 クルップ 15cm(35口径)単装砲の砲弾 の水柱だ。

「合図だ!!転舵!! 敵第1遊撃隊の真後ろを抜ける!!休ませた機関を酷使しても構わん。」

 砲撃で信号旗が折れても手旗信号員が斃れても使える…唯一の手段が友軍への射撃だ。

「生き残るんだ!!」

 『福靖』が隊列を離れる。『済遠』が損傷低速化している状態で機関の軽微なれど、整備点検ができた以上、まだ回せる。


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