日清戦争 -43 降伏勧告
2隻が戦列を離脱してからの本隊4隻は一時、『橋立』の日高 壮之丞が暴走したがある程度の距離とった砲戦を続けていた。
その時が来た。16時10分の白旗が掲げられたのだ。
「敵艦降伏セリ。砲撃中止」
伊藤は命じる。同時に集合命令。戦闘は終わった皆そうみなしていた。
『浪速』
「『鎮遠』は動いています。軍艦旗も下ろしておりません。」
ここでまた田中が口を開く。ただし今回は東郷にしか聞こえないように小声かつ接近した状況だ。
「戦列離脱の旗を掲げて敵旗艦右側面前方から接近するに進路をとれ。敵魚雷の射程には入るな。」
その命令に周りが驚きを示すと同時にその喧騒を利用して田中は離れる。
「なぜですか!!」
副長が叫ぶ。相手は降伏していると思っているがやはり巨砲の前に出るのは勇気がいる。
「命令を実行せよ。」
操舵手が唇をかみしめて定遠正面方向に艦を向ける。信号手が飛び込んでくる
「旗艦『松島』より信号「隊列に戻れ」です」
「伝令兵。その信号は無視してかまわん。白旗と停船受諾の信号旗。あと、「私は降伏を勧告する」を揚げよ。」
その時、周りは意図を察す。
「白旗はこの場合、停戦勧告であって、降伏ではない。時間制限と乗員の安全を保障する旨の旗も上げさせろ。30分。」
判断は冷静だった。
「確認できたと判断したら戦列に復帰する。30分後、命令待たずに攻撃を開始せよ。坪井閣下のことだから、『浪速』の行動を見れば後方に隊列を敷くだろう。後方なら定遠級損害を加味すれば砲の内、後方の15センチ単装砲1門以外基本的に脅威にはならない。」
さらに清国側を追いつめることが起きた。日本の旗(白旗の真ん中に赤字で染めただけの簡易的なもの)だが、輸送船5隻が合計9隻の軍艦とともに接近してきたのだ。拿捕された輸送船と軍艦、拿捕した軍艦の集まりだった。
清国北洋艦隊はこの時、主力については巡洋艦2隻を残し消滅した。日本側の完勝だった。




