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日清戦争 -39 済遠逃走

「ほかに2隻つられて北上、逃走します!!」

 近代にまれにみる艦艇の逃走事件。『済遠』は日進開戦劈頭の豊島沖海戦でも逃走した艦である。

「『済遠』が訳無く逃走はしない…」

 田中は伝声管のそばを離れる。隣の水兵にバインダーを渡し、見せるとその水兵が『仕方がない』という顔をしつつ、伝声管のもとに向かう。その時に大きすぎる独り言を叫びながら士官の最後尾につく。

「どう思う?」

 東郷は名を出さずに独り言を言う。

「フリート・イン・ビーイングだと思われます。艦隊保全主義。もともと清国艦隊は渤海を守っていたと思われます…首都を突かれないために。今回運よく、輸送船を守って渤海から出てきた。今までの姿勢を考えるに決戦を避けて輸送船を守りつつ渤海に逃げるのが上策です。それに立ち返った現場指揮官が存在するということでしょう。ここで逃がせば…根拠地占領以外に艦隊を無力化する手段を喪失します…」

 士官は反論する。

「だがたかだか数隻逃しても問題はあるまい。」

「通商破壊艦として動かれたらどうします?根拠地という意味では北洋水師だけではなく、他の水師もあります。そちらの艦は旧式・低速揃いのために問題になっていませんが、北洋水師の船は通商破壊艦になると厄介です。」

「『吉野』逃走艦を追撃する模様。」



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