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日清戦争 -38 近接砲戦

 日本艦隊単縦陣を、清国艦隊は横陣をとって双方正面から黄海海戦が開戦した。日本艦隊は大きく取り舵をとり、清国艦隊右翼への攻撃を開始した。清国艦隊は実質的に90度右方向に回頭。その時点で実質単縦陣になった。

 日本艦隊は隊を2つに分け、高速艦で編成された第1遊撃隊は清国艦隊進行方向(90度回頭後) 右遠方で左180度回頭。低速艦を含む本隊のうち、被害甚大な3隻を救助に向かう。

 ただし1隻、『比叡』は敵中突破を敢行。他の2隻を救うとともに本隊と行動を共にすることを断念。交戦能力の一時喪失から戦列を離れた。

 本隊は残余5隻の陣形を速力を落としてでも整え、第1遊撃隊とすれ違い、敵艦隊右舷側(横陣状態でいうと裏側)に進出。第1遊撃隊は清国艦隊の頭を押さえ、十字砲火を加える状態になっていた

 しかし、第1遊撃隊は『西京丸』の行動のせいで隊列が分断。陣形が乱れていた。


 浪速 艦橋

 若い水兵が叫んでいる。場違いにも。伝令から戻った田中だ。

「敵艦隊正面です!! 清国艦は正面戦闘を前提とした設計です。被弾面積と砲撃能力では1隻あたりではあちらの方が上です。」

 バインダーに挟まれた紙には説明のために図を作ってそれを副長を含む士官に見せている。本来許されざる状況だが、戦局はそれを許さない。

「だが、清国艦隊は正面にいる1隻しかまともに戦えん。硝煙はもちろん友軍誤射のある砲撃はできん。」

 副長はまともに議論を始めている。

「危険は砲撃だけではありません。現在の敵先頭艦は清国随一の致遠級です。速力的には互角。位置関係からみて衝角突撃をかけてきます。『浪速』が避けられたとして『和泉』『千代田』が回避できる保証が現状ありません」

 その発言を聞いていた航海長が走る。艦橋では煙突で真後ろが見えないからだ。田中は測距儀を使っている兵士に近づいて声をかける

「敵最右翼艦の位置情報と見える全長をお願いします。それで進路がわかります。」

 その声で彼は情報を書き出す。そのうちに航海長が戻ってくると位置情報を叫ぶ。田中は咄嗟に捨てる予定の紙にその数字を書くために甲板にしゃがみ込む(バインダーは測距手に渡していたので)

「田中。計算しろ。」

 その様子を承認するは艦長だ。

「艦長。このままでは確実にいずれかが衝突するか、隊列分断されます。距離を。進路を右に!!」

 田中は図まで書きこまれたバインダーを渡す。

「代将旗を揚げさせろ。後方2隻に指揮をとる旨を伝えるのだ。第1遊撃隊前衛艦艇と隊列がさらに離れても構わん。面舵だ。」


 吉野艦橋

「坪井閣下。『浪速』に代将旗が上がっております。」

 参謀の一人が叫んでいる。咎めている。

「後ろの2隻を率いる旨の宣言だな。隊列が離れている以上、妥当だな。接近しすぎている。あのままだと、衝角攻撃を食らうぞ。全艦に敵先頭艦への集中砲火を命じよ。」

 距離を保つそれを守っている限り、本体後方3隻のように孤立はしない。

「追いつくまで速力を落とせ。無防備な敵側面を反航戦中にたたきながら陣形を整えるのだ。」


 浪速

「敵先頭艦、速力低下。砲撃集中の効果の模様。後ろの2隻も無事通り抜けられそうです。」

 見張り員からの報告を艦橋全員に水兵が伝達すると歓声が上がる。寡黙な東郷は黙っている。他士官はそれぞれに状況を見ながら会話する。それに田中が混じっている異様な光景は放置されている。

「吉野も速力を落とし、我々との隊列を整えながら戦う模様です。少し無茶ですが。無理ではありません。それに適切な距離の砲戦は逆行戦という限られた時間のことですので同行戦に移行したいものです。」

「ということはこの先180度回頭だな。だがこれなら一斉回頭の方が時間的制約が少なくても済むだろうに。」

「仕方あるまい。後ろの2隻には先頭艦を任せられない。それに事故の可能性が低い。逐次回頭が一番だろう。」

 言い合っているうちに、旗艦吉野が逐次回頭を始める。陣形の断絶もない。仕切り直しだ。

 清国艦隊は一斉右回頭

「悪いが、本隊にはおとりになってもらう。後方から砲撃戦だ。」

 しかし、水兵(田中)は叫ぶ。ほかの水兵に文句を書かれたらしい。マスト上の見張り員からの伝声間の内容を叫ぶ担当をやらされていた。

「『済遠』回頭せず!!」


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