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日清戦争-14 責任と罪

 1894年7月26日 夕刻

「すんません古志大隊長…」

 しばらくして、田中の容態を聞いて現れたのが大隊長である古志だった。状況自体はほかの兵士から聞いたが、当の本人から聞こうとしたのだ。

「田中1等卒何があった⁉」

 その様子を見て古志は向かってくる。

「逃げる人夫を押しとどめようとしたときに左わき腹を刺されました…反撃に着剣していない銃剣で相手の左肘と脇を刺し返しました…物資はどうなりました!?」

 現代の言葉つがいづかいが混じりながらも伝える。意味は分かる。

「馬匹ごと物資を奪われたもの多数。被害は食料に集中している。医療物資に関してもかなりやられている。人夫は負傷者以外逃げた。負傷者は君よりも重傷。確実に助けるためにわきの下を切開して止血。血流の止まった腕部は壊死する上に君が与えた傷により、腕が使いもにならん。切断するとのことだ。だが彼も君の処置を同じようにした影響で生きている。」

 田中が貫いた脇差は脇の下にある神経を貫いたようだ。ここが切られれば腕はまともに使えない。上に付近には太い血管があり大量出血の危険がある。これを防ぐには欠陥を結紮止血(糸で結んで血流を止める)が必要だった。だがこれは止血した先の細胞が血流不足で死滅することを意味する。

「そうですか…戦いの期日に間に合いませんか?」

 田中は一番大切なことを聞く。

「…」

 答えがない…すなわち間に合わないことを意味する。

「…ご迷惑をおかけしました。生き残ったことを人は幸運といいますが、私には生き恥をさらしているように思えます。任務を全うできなかった…」

 古志がその先の言葉を遮るように言葉を紡ぐ

「私の責任だ。君は身命を賭して命令を守ったに過ぎない。よくやった。」

 彼はそういうと席を外した。


 古志が引責自決したことを知ったのは次の日…27日の明け方のことだった。


 古志は史実でも同様の事件に逢い、引責自決した人物です。しかし、国内世論の影響を気にした軍部はこの死の真相をひた隠し、病死として公表した。


 彼の死が…のちの世まで戦訓として語り継がれていたのであれば…餓島の悲劇…などは起きていたのでしょうか…語り継ぐべきは…英雄だけでなく…こういった人の存在や英雄が成功する陰で失敗し、屍をさらす人間のことも忘れてはいけない…


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