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日清戦争-07 毒を流す

 在朝鮮英国公使館

「本気で撤退されぬと申されるのですか?大鳥公使」

 朝鮮首都の漢城には列強各国の大使館が存在する。植民地にできる土地が不足してきた帝国主義末期の時代、残りの領域は取り合いである。残りの領域における最大の地域が中華…清国である。

 朝鮮は清国を切り取る際の拠点となる。ゆえに大使館がある。

「はい。我が国は朝鮮の発表を信用できません。我が国の情報網は反乱軍との交渉を確認できませんでした。」

 そしてこの各国には特色がある。

 ロシアはシベリア鉄道の開通に合わせての南下政策の支援拠点を求めての朝鮮。だが開通まで残り10年大きく動くことはできない。

 アメリカはそもそも中国大陸の拠点を持っていないことによる拠点化を狙い大使館を置く、しかし、海軍は脆弱。海軍の建設も史実では10年を待たないといけない。

 イギリスはそもそも中国に香港という拠点を有していた。その拠点に世界最強の海軍の一部を置き、その戦力は列強随一…

「朝鮮は嘘を述べている可能性があると?」

 英国大使は応じる。列国は反乱の詳細情報をつかんでいない。正確には列強の内、香港という中国への侵略拠点を持つ国は諜報能力を朝鮮に割いていないというべき状況だ。さらにイギリス極東艦隊の総戦力は本国と遠く離れているにもかかわらず、日清両艦隊の互角以上。圧倒的砲艦外交能力なのだ。

「はい。我が国はモンゴル帝国の侵略等、歴史的経緯経緯から祖国への侵略の桟橋に使われやすい朝鮮に対する諜報を強化しています。故にそのような判断をいたしました。」

 だが、その中で朝鮮に最も諜報能力を割いているのは日本だろう。日本が侵略された数少ない例の多くが朝鮮半島経由だったのだ。諸外国の脅威から旧権力を排除して成立した明治政府にとって警戒を怠れないのが朝鮮だ。

「確かに貴国は歴史上、かつての欧州強国でも太刀打ちできなかったモンゴルを撃退したこれは有名ですね。「元寇戦記」読みましたよ。」

 どうやら某漫画家の作品は有名らしい。彼らが兵役で新作が出せない分、輪転機の空き時間を節約するために翻訳版が外販されたようだ。

「噂によると作者が兵役中で今、朝鮮にいるらしいです。話を戻しまして、この件は、我々の情報網に一切、反乱軍との交渉についての情報がないのです。むろんこの情報は反乱軍側からもです。情報伝達の時間差を考慮してもあり得ないという判断です。」

 ほぼ福島と杉村の言う通りを採用している言い分、そしてそれを表に出さないことは称賛に値する。

「だがそれでは証拠はない。」

「はい。貴国の有名小説の言葉を借りれば状況証拠しかなく、物的証拠がないというべき状況でしょう。ですが、それ以上に問題なのはこのままでは朝鮮の近代化はあり得ないという事実だけです。」

 どうやら大使が読書家らしいという情報からたとえを出す。どうやら諜報は英国大使の個人的な趣味にも及んでいるようだ。読書好き程度の話だが。

「では物的証拠を出させる…ということですな。」

 彼らはすぐに朝鮮の役人を英国大使館に招聘した


「反乱軍を和議を結んだというのであればその和議に関する文章を見せてもらいたい。」

 日英の大使が連名で要請した。それがないのであれば反乱軍が収まっているとは言えない。

 役人は駄々を捏ねた。そして和約に関しての書類はついぞ提出されなかった。

「日本国は朝鮮反乱は終結していないとみなします。」

 役人にそう声をかけると英国大使館を追い出した。

「彼らには朝鮮を近代化する気は…一切ありませんな」

 大鳥は英国大使の隣でつぶやくしかなかった。

 甲午農民戦争の和約である全州和約には反乱軍からの請願1次資料は存在しますがそれを受諾した旨の資料は未発見。ゆえに存在しないもの=和議そのものが嘘という可能性を考えています。


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― 新着の感想 ―
[一言] 主人公たちの読者が海外にもいたとは しかも英国公使という、英国外務省の偉い人が
[一言] こうなったら、朝鮮半島は英国と共同で対処するしか無いですね。日本だけだと、重荷が過ぎるし、余力も無いから。 主人公の漫画、既に英訳版を発行していたとは。大英帝国の知識層で日本に興味がある層…
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