日清戦争-06 嘘の国4
更新忘れてた。年末年始多めに更新をするので許してぇ
大島 圭介 日本国朝鮮公使
「清国の朝鮮公使、袁世凱には本国の許しがあり次第撤退する…まず撤退命令が出るだろうという話をしてしまったぞ…朝鮮も両国の撤兵を願っている。反乱も終わった…清国と事を構えるわけにはいかん…」
大島は突き上げを食らわせる武官や、公使代理〈大島が本国に帰っている間大使を務める人間〉の杉村に返答する。
「しかし本国は帰国してはいけないという判断をしているのです。その旨を伝えるべきです。」
杉村は本国の要請を口にする。
「軍としても撤兵には反対です。朝鮮改革派の情報網には反乱の終焉の連絡はありません。少なくとも朝鮮南部の反乱は終焉していないと思われます。」
これに援護を出すは福島安正中佐。当時、在朝鮮駐在武官を任じられている。
「福島君その情報は遅すぎる。終結したことがこちらまで伝わるのにどれくらいかかる?」
その答えを知っているのにもかかわらず大鳥がその情報の古さを指摘する。
「不安定かつ傍受の恐れがある電信を避けた場合、伝令船を使うしかありません。日に1度の伝令船を使えば日本へは片道4日かかります。朝鮮南部の情報であれば…短くて1週間、長くて10日はかかるでしょう…。ただし、日本へ伝われば暗号電が第1報で届く予定になっております。未だ朝鮮反乱の終結電は受信しておりません。」
福島は何事もないように答える。
「そうだ。その時間差が…反乱の終結をわれらが把握できていないという実態を生むのだ。」
大鳥はその答えに満足げに真相と語る。だがそれに福島は鼻で笑う。
「それを言うのであれば朝鮮国内の情報伝達を考慮したほうがよろしいと思います。交渉担当者の移動・交渉・反乱軍の解散…いずれの情報も我らに悟られず行うのは困難で、しかも隠す必要性がありません。伝令馬が整備されていた日本ですら江戸・京都で最短3日、朝鮮の整備状況を加味すれば相当の時間がかかります。この動き大使館が見逃すわけがございません。」
福島も福島である。大いなる皮肉。仮に時間差で終結が伝わっていないことを認めるのであれば、終結までの動きを見逃した大使館員は無能ということになる。大鳥自身は反乱発生時に日本に一時帰国していたために大島自身には責任はないだろうが、大使館関係者を敵に回すことになる。
「私も同意です。我々が漢城にそろえた情報網に反乱終結を促進する情報はありませんでした。」
だからこそ、杉村は福島を援護する。終結が嘘であれば…大使館員は責められることもないうえにそれが事実であるからだ。
「確かにそうだ。ではどうする?」
ここで否定しようものなら大鳥は大使館で孤立するだろう。事実を認められない無能…ということである。
「時間を考えれば交渉による終結以外に考えられませんし、事実、そう公表しています。ならば朝鮮政府にはその高所文書を手に入れてもらえればよいと考えています。南部反乱の主要人物のサインなら改革派経由で入手できますし、そもそも入手の手はずは整えております。まだ届いておりませんが。」
福島が本来担当外である仕事をしている。この仕込みが誰であるか…
「それは部下にやらせます。それでできない場合のみ、閣下が動かれるべきです。その前に閣下にはやってもらわないといけないことがあります。」




