プロローグ 農家の3男
再編作品です。色々調べていますが、時代によって状況が違う制度などもあります。矛盾点や間違えなどありましたら訂正しますのでどんどんコメントお願いします。
「義一様だろ!!」
叫んでいる子供は俺より4つ上の兄田中義一だった農家の長男…しかもそれなりの富農であれば家族内で内輪もめをしてる余裕はある。そして明治。長男は家の跡継ぎ、次男はそのスペアである。3男の私は何だろう。学は長男の義屑…訂正義一よりもはるかに上だ。いや義一が長男にしがみついて能力がないバカ。前世で見た小説・漫画・アニメの設定によくある代物だ。
むしろその義屑よりも2.5年あとに生まれてきた義二が俺の仕込みがあっても学があるほうが驚きだ。学では弟に相手にはならない。故に拳を使う。そもそも学校に行かせてもらえない次男以下よりも劣る長男…豪農よりは貧しいが、それなりの富農である家に学校に行かせる金がないわけがないのに…いやないわけだ。家長は酒癖が悪い。それは長男に遺伝している。酒代に学費は消えている。
「義カス様…」
おっと本音が出てしまった…
「カスって呼んだな!!」
また拳が飛んでくるが農業もまともにやらない長男の拳が当たるわけがない。そもそも脅しのつもりで壁際に追い詰めて殴ってくる以上、躱されれば拳は家の壁に当たる。思いっきり。それが常。本当にこの屑は成長がない。ある時、ボロ納屋で同じことやって、壁に穴開けた。その時はさすがに親に叱られている。しばらくすると、拳を痛がっても親に無視されるようになる。
〈はあ、馬鹿な兄だな。薪でも使えばいいだろうに〉
「聞き間違いですよ。義カス様。1字違い。ですし、音も似ていますから」
これでだませるこの馬鹿も馬鹿だ。
「これ!!うるさいよ」
母親だ。母親はマシ。親父や長男の前ではきつい口調…口調そのものは厳しいが、いないところでは問題ない。次男と三男は母屋に入らない限り好き勝手させてくれる。金のかかることはしてくれないが。悪意を向けてくることはない。
「母上。いつものことです。義一様は耳が悪いようで…まあ、農家を継ぐには耳が悪くても問題有りませんが。」
それで母親は納得する。父親は拳骨を落としに来る。身長差関係で真上から落とされるので屑のように躱すは難しいが、うまく衝撃を逃がすことはできる。
「父上ーーせめて尻を叩くにしてくれませんか…頭は人死にが出ますよ…」
痛がり、転がりながら叫ぶ。むろん演技だ。
「フン。貴様など死んでも誰も気にはしない。いい加減その目元の布をとれば考えてやらないことはないわ。」
父親はそういうと部屋に戻ってゆく。それを見ると、屑も自室に戻る。
〈今日もあしらえたか…あしらわないとあの屑は納屋に殴りこんでくるからな…たまにはガス抜きしてやらんと…〉
義三は納屋に戻る。
「ニジ兄ぃ 終わったかー」
納屋にはうまく勉強できるように机を作ってある。その上には泥箱。泥ならば資源を使わず物を書ける。
「終わったよ。これで正しいかな?」
学問では転生者である義三が上だ。この時代の人間である義二はそれを学んでいる。義三はこの時代特有の漢字に関して義二から学んでいる。これに関しては母屋からゴミになった新聞が回ってくるのでそれで覚える。新聞紙は水に溶かして再生紙にしてそれで勉強に使う。周りは河原で燃やしているものだと思っているだろう。実際、使用済み再生紙や偽造のために一部新聞紙は河原で燃やしている。
「義三…お前どうする?」
義二が座っている目で聞いてくる。片目は布で覆われている。昼間は農作業。勉強できるのは明かりなしの夜と雨天のみ。夜間には明かりがない。ゆえに片目を暗順応させるために常に布を巻く。夜間はその目で勉強をする。これは義二・義三双方の特徴である。仕込みは義三。
「わかっているよ。この家にいても未来はない。かといって、街に出る余裕はない。金がない。道中の食糧もない。飢え死にするだけだな。そこが対策できたとしても大人の足を考えれば追いつかれて連れ戻されるだけ。だけど移動さえできればある程度は何とかなる。」
「夜に出るのはどうだ?」
「確かにある程度は時間は稼げると思う。食料も備蓄をくすねればいいか…奴ら計算の俺ら任せだから誤魔化しようはある」
引用元作品 前世で見た小説・漫画・アニメ≒それはないでしょう…
まあ、作中、故郷に二度と帰ることはありません。(だから両親の名前すら設定していません。)