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ウサギはソロでも生きている  作者: ハズカシダリア
episode6 厄災であっても災害ではない
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ソロは食事がしたいだけ

 馬車に乗り込み汚れた服を脱いで、新しく用意された服…これはさっきのやつとは違って和服か。

 落ち着いた灰色の甚平に袖を通して帯を締める。


 サイズは激しく動いてもさほど気にならない程度で、寒いここでも全く寒さを感じない…いや、少し涼しく感じるくらいか。


「お召し物はお気に召しましたでしょうか」

「ああ、今回も良いデザインと機能性だな」

「何よりです、作成者にも伝えておきます…。

 話は変わりますが、此度のレイドは如何でしたか?」

「ふむ……大人数で立ち会うのであれば第二形態…人形態があったが、的が小さくなり、少々素早いからそこは苦戦するだろう。

 ただ、どうやら一部要素で脆い部分に相応の攻撃を当てれば通常より早く討伐ができる仕様があるようだが、それは既出か?」

「そうですね、それについては情報が出揃っております…が、レイドボス戦では弱点を出す為の手順がある可能性があり、今のところそれが我々にとってレイド戦での攻略基本になっております」

「ふむ」


 その言葉に少し考え込む。

 もしそうならば弱点を出した覚えがないのに、今まで戦ってきたボスと変わらない時間で戦って討伐したのはなぜなのか…。

 もしかするとバグが起こっているのでは…。


 などと考えていると、ヘルメースが話し出す。


「とは言え、我が王であれば手順は不要だと、私は考えます」

「?どう言う事だ」

「もちろんこれは私の勝手な妄想ではありますが、

 我が王の力は称号の通り災害の如く邪魔な障害を意図も容易く薙ぎ払え、そのような力で我が王が仰った脆い部分にぶつかれば我々が弱点を攻撃した時と同様…いえ、それ以上の効果が出ると考えます」

「……そうか、まあ今の所運営からバグだったなどと言う報告もない、心配するだけ無駄か」

「ええ、っともう間も無く到着致します…参加者も勇者君以外は着いているそうです」

「そうか……そのようだな」


 一瞬だけ、広く気配を探ると前に食事した場所に知っている、もしくは似ている気配が5人、あと離れた場所から走って来ている勇者とその後をこっそりとついて来ている気配が2つあった。


「だが、勇者は余計な者を持って来ているな」

「あらら……いかが致しますか?此方で動きましょうか」

「……構わん、ただ席が足りなくなるだろうから店に伝えておけ、2席で良い」

「かしこまりました、それでは少々失礼します……どうもーヘルメースですー……ええ、それでですねもう2席ほど追加できますか?………ありがとうございます、また今度食材を此方負担で…いえいえ……分かりました、ありがとうございます、もう間も無く着きますので……はい、お願いします」


 どうやらどうにかなったようだ。

 ……しかしながら勇者め…急いでいる時こそ周りに気を配れと言っておいたが、少々腑抜けてきたのだろうか?

 まあ、いい…もう師弟でないのだから口を出す義理もない。




 そしてしばらく馬車に揺られ、ようやく止まった。

 と同時に勇者も到着したようだ。


「お待ちしておりました」

「いや〜急な事の対応ありがとうね、勇者息整えてね〜」

「は、はい…ふぅ…」

「……整えたら周りを確認しろ、ついでに服も正すように」

「え、あっはい……っと…あれ?」


 服を正しながら言われた通りに確認して、ようやく気づいたのか気配のある場所に顔をじっと向けていた。


「あはは、勇者君、尾行はちゃんと撒いてね…まあ、今回は我が王が事前にそして慈悲深く尾行者にも席を用意しているからさ、ほら呼んできて」

「え!す、すみません!すぐに行ってきます!」

「…俺は先に行っておく」

「かしこまりました、私は一応尾行者の確認をしておきます」

「では、ご案内致します」




 この前と同じ通路を通り階段を登り、部屋の前までくる。

 案内を終えたウエイターが下がったのを見て扉を開ける。


 入る前からこちらを察知していた2人、開く音を聞いて目線を向けたのが3人…まあ、ある程度予想はできていたが気にせず前と同じ座席まで進み腰を下ろす。


「待たせたが気にせず会話を続けても構わん、俺は食事に来ただけだからな」


 そう言ってすぐに運ばれて来た料理…今日はコース系なのか前菜のようにジャーマンポテトが出された。

 味としてはあまり食べた事がないタイプの料理だったがマスタードがしっかりとしている。


「承知、とは言え勝手ながら改めて自己紹介させていただきます、“補佐”マメメ…こちらでもここに居る方含めバックアップをしております」

「んじゃあ、次はアタシか。

 “船団”バルロメ、中央から東にある港からいくつか海路を作っているから別の大陸に興味が出たら寄ってくれ」


「…“案内人”コンパス、前に会った時より強くなった、こっちでも迷宮都市あるから案内できる」

「………“キラー”KK(ケーケー)、闘技場での動きで本調子はじゃないのは流石です。

 できればこの後手合わせしたいです。」


「“斥候”セメリーです!今は相方の“狙撃手”とは別行動で“案内人”コンパス君と迷宮を潜ってます!」

「以上、本日は“情報屋”ヘルメースの呼び掛けで参上しました」


 それ聞いて一旦手を止めて再度確認し、下の気配がまだ来ない事から仕方なく口を開く。


「エインだ、自己紹介ご苦労此方でも自由に動くが興が乗れば共に動こう。

 マメメはヘルメースが暴走しすぎないよう手綱を握っておけ」

「かしこまりました、微力ながら努めます」


「悪いがバルロメ、まだこの大陸を周れていない。

 見切りがついたら顔を見せよう」

「もちろん!必要なら言ってよ」


「コンパスとセメリーの件は場所だけ聞いておこう」

「ん、来たくなったら案内する」

「オッケー!あ、でもねできれば、できればさ!相方の“狙撃手”…バレンタの方に手助けに行ってもらいたいです!」

「そうか、後で聞こう。

 KK、手合わせは3日後だ、予定が合わないならそれまでだ」

「わかった、それまでに仕事済ませる場所は?」

「ヘルメースから借りろ」

「わかったありがとう」


 適当に言葉を交わしてヘルメース達が上がってくるのを察して一瞬KKとコンパスが扉を見て、次点でセメリーが見る。


「そう言えばヘルメース以外に遅刻がいるようで」

「ヘルメースは一応人選で残した、元弟子とそれを追って来た知らん2人だな」

「元弟子って勇者でしょ、2回殺り合ったけど戦い方が変だった」

「中途半端に力を知ったからな、実践を焦って約束事を破ったため破門にした」

「へー弟子なんて滅多になれないのに残念な子だね」

「確かに!まあ、でも感情的な子だから見ていて飽きないけどね」


 その言葉を最後に全員が扉の前に来たのを察して黙る。

 別段引き締めるよう空気を出さず、そのまま喋っていても構わなかったが、俺としては静かに食事ができるならそれで良い。


 再び食事を始めると、扉が開きヘルメースと勇者、他2人が入ってくる。


「いやはやお待たせしました。

 “情報屋”ヘルメース、勇者君とそのご友人方を王の許しを経て馳せ参じました」

「え、最前線プレイヤーがこんなに!」

「ちょっとサクラちゃん、声が大きいって」

「はっはっは!そう言ってくれると切り拓いた甲斐があるね!」

「だねー、でもでも勇者君達の活躍も聞いてこっちでも話題になってるよー」


 そう言って空気を少し緩めながらバルロメとセメリーが迎え入れる…丁度グラスが空いたタイミングでマメメが追加を入れるので軽く合図して返す。


 勇者の目線は俺に少し向いた後にKKに戻ったな。


「ヘルメースさん、どうしてPKがここに居るんですか」

「失敬だな勇者君、俺はKK、それに無差別じゃなくて依頼を受けてやっている正当なアサシンだよ」


「おっと、そう言えば君たちはやり合った仲でしたね、ご安心をKK君は我が王の弟子で私のお得意様なのでお呼びしたんですよ。

 ですのでここでの()()()()()は御法度ですよ」

「もちろん分かってるよ、俺も破門にされたくないし」

「ッ!……分かりました…」


「ヘルメース、いつまで扉を開けっぱなしにしているのですか?」

「おっと、じゃあ勇者君達はここ、空いた席に座って下さい」


 そう言ってヘルメースは俺の隣に一言添えて座る。

 とは言え聞きたいことは食事が終わってからで


「ところで貴方は何者なんですか?」



 その言葉で場は一瞬にして冷め、ヘルメースとKK口を隠し震え、

 バルロメとセメリーは俺の顔色を伺っていた。

 いきなり来て上座に座っている俺に自己紹介を促すのは、仮に俺が許しても、いや許さないが他も許さないだろう。

 とは言えずわざわざ怒る事でもないのでマメメもそれを察してか代わりに口を開く。


「お客様、失礼ながら申しますがお名前を伺ってもよろしいでしょうか?」


 そう言って比較的穏やかに…少し殺気立っているな。

 そう言えばマメメは礼儀作法に厳しい方だから仕方ないが今は抑えているようだ。

 ちなみにその馬鹿は困惑しながらも自己紹介を始める。


「わ、私はサクラで、こっちは四葉、そんでもってコイツは一応私らのクランマスターのユウマ」

「一応って……!すみません皆さん、急に押しかけてしまって」

「サクラ様に四葉様、ユウマ様ですね、お噂は予々聞いております。

 少々省いて順番に私はマメメ、その隣からバルメロ、コンパス、KK、セメリー、ヘルメース…そして此方の方は我々がお慕いしているエイン様に御座います」

「へー、エインさんってどこのクランマスターなんですか?」

「サ、サクラ!」


 どんどん空気が悪くなっているのに気づかないのは一周回って才能だなと感心する。

 まあ、流石に事を荒立てて食事が無くなるのは流石に惜しいし、メインディッシュくらいは適当にあしらうか。

 何か言いたげなマメメを目で制し、前菜を下げさせて一息置いて口を開く。


「クランには興味はない、それより食事を先に終えたらどうだ?いくら外が寒いとはいえ食事まで冷やす事はないであろう」

「え?ああ、そうですね」

「す、すみませんすぐに食べますので…」

「そうか?無理して食わずとも急いで食えとも言わん、俺は食事しに来ただけだからな、他の者と会話は気にせん」


 そう言って次に運ばれて来たスープに目を移す。

 コンソメ系の匂いと共に口に運ぶとやはり料理人がつくるモノは単純そうなモノでも現実で家で味わえるようなモノではない。


 具材は少ないがスープだけで十分といえる味。

 さっきまでの辛味とは違い、どことなく辛味はあるが温かさで甘味も少し感じる。


「そうそう、そう言えばセメリー君、バレンタ君は今どの辺りで防衛を?」

「…あ、うん、確かもう関所付近のオアシスの砦だったかな?物資もギリギリでプレイヤーもほぼログアウト状態か離脱気味だって」

「なるほど、そうなると私の復帰はほぼ絶望的ですか」

「あ、でもでもね、エイン様が手伝ってくれるって!」

「それはそれは、後で分かる範囲の情報を流しておきましょう」

「オッケー!相方にも後で言っておくね」

「ええ、お願いします…僭越ながら我が王、補佐は如何しますか?」

「要らん…が誰か付けるなら報告しろ、それ以外は知らん」

「かしこまりました、そういえば勇者…いえ、ユウマ君個人戦優勝おめでとう、素晴らしい動きでしたよ」

「あ、ありがとうございます…」


 そう言って2人して俺を見るが無視する。

 正直言ってあのレベルならユウマが優勝する可能性は大いにあった、油断せず戦えばだが。

 とは言え、今のKKと同格と言うのは嘘である。

 おおよそKKが手を抜いたかハンデを背負っているか、もしくは油断癖がまだ残っているかだが、それでもやはりKKの方が8割勝つ。


 そうなるとKKやそれ以上に強いマメメ達が出なかったのはヘルメースが手を回したか、ただ単に興味がないか………いや、マメメ達の場合やりたい事優先だからというのが一番しっくりくるな。


 そんなふうに考えていると不意に馬鹿が口を尖らせながら


「ねえ、エインさんってユウマの師匠だったんでしょ!おめでとうぐらい言ったらどうなの!」

簡単な容姿(主人公が他プレイヤーの容姿に興味がないためここで記載)


マメメ

男性 機人種 黒と白で統一されたボディと常に執事服を着ている


バルロメ

女性 魚竜人種(元魚人種) 青色の鱗を持ち服は赤と黒で統一した海賊風


コンパス

男性 洞窟人種(元小人種)(洞窟人=迷宮や洞窟に適応した特殊種族) 肌が白く体が小さい フードのついたコートを羽織っている


KK

男性 裏平人種(元平人種)(裏=同族を一定数殺し、とある場所で祝福を受けるとなる属性) 目が紅い 整った制服だがいつでも動けるように作られており、暗器が3つある(靴、袖、内側ポケット)


セメリー

女性(既婚者) 獣人種(兎系) 目が蒼く、服も相方が好む色を着ている。


サクラ(馬鹿)

女性 獣人種(猫系) 赤と黄色の服をつけて、常に腰の左右に剣を付けている。


四葉(よつば)

女性 天人種(初期ランダムレア枠) 常に白系の服を着ているが種族に合うからと勧められてきているだけ。




強さ

1.エイン 2.マメメ 3.コンパス 4.バルロメ 5.KK


有名

1.ヘルメース 2.KK 3.バルロメ 4.四葉 5.ユウマ




いつもいいね感想などありがとうございます。

次回もゆっくりお待ち下さい。

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― 新着の感想 ―
[一言] 師匠ならばこそ、できて当たり前のものは、褒めるに当たらず……………… うさ耳に甚平………………すね毛は見えますか?履物は雪駄ですか?(笑)
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