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ウサギはソロでも生きている  作者: ハズカシダリア
episode 1 ソロであってボッチではない
6/68

ソロは知らない知り合いと会う

 結構夜も探して見つけたのは普通にでかい熊だった。

 しかもこっちを見た途端に逃げようとしたので、追いかけて倒すのに今までで一番苦労した。


 まあ、その分素材は多く、熊肉と大きな皮に熊の手、そして青紫色の石。

 アイテム欄に入れて確認すれば魔石という物らしい。

 しかし、それでもあの苦労と見合うかと言われると全然である。


 結構街から離れていたのもあって帰ったのは空が少しずつ明るくなっていく頃だった。

 ちょうど良く門は開いており、仕事に行く前に商業組合で素材を卸してからにしよう。



 風呂屋に行ってから来たが、早朝間際と言うだけあって商業組合の建物には商人やその小間使いが職員と取引をしていた。

 いつも通り素材を卸すところで熊の素材を出すと驚かれた。


「え!?これってデーモンベアーの素材じゃないですか!?」

「幾らになりますかね?」

「この素材は今少し流通量が少ないので魔石も含めると5万…いや5万5000Zで買い取らせて頂きます!」

「じゃあ、それで」

「ありがとうございます。それでは5万5000Zです」

「…はい、ちょうどありがとうございます」


 財布に入れて金額を確認して組合を後のする、そう言えば今日の朝ごはんと言うか昨日は夕飯を適当な木になっていた実を食べただけだからお腹が空いている…。

 そういえばあの喫茶店って今の時間やってるかな…。




 来てみたが、やっているようだ。

 扉を開けると、店主だけだった。

 まあ、まだ明けてないしそんなもんか…


「…いらっしゃい」

「店主、コーヒーと…このサンドイッチを頼めるか?」

「…あいよ」


 店主はコーヒーをセットすると奥に行って、少しすると奥から何かをフライパンで焼く音が聞こえいい匂いが漂ってくる。

 そして、奥から戻ってきた店主はレタスとハムのサンドイッチを持って、ちょうどできたコーヒーをセットに出してくれた。


「モーニングセット…ごゆっくり…」

「ありがとうございます、いただきます」


 喉を潤すには少しあれだが、先にコーヒーを飲み心を落ち着けサンドイッチに齧り付く。

 パンが少し固く、中に挟まれたレタスはそこまでシャキッとしていないが、この喫茶店の空気に合っているように感じる。

 コーヒーと交互に食べていると、あっという間に食べ終わっていた。


「ご馳走です…店主1ついいかな?」

「…どうぞ」

「さっき食べたサンドイッチを頼めるか?今日は昼が現場で食べるからできれば良いものを食べたくてね」

「……」


 少し悩みながらも、すぐに奥へ向かいさっきと同じくらい待って戻ってくる。


「…これで良いか?」

「ええ、ありがとうございます」

「…こんなのでも良いのなら、また作ろう」

「はい、俺はこの味もコーヒーも好きなんで、また来ます」


 サンドイッチをアイテム欄に入れて、お会計をして喫茶店を後にする……ダサかったなあの言い回し(セリフ)は…。





 それはいつも通り、トンネルを掘り進めている時だった。


 ……………………。。


「ん?」


 何か聞き覚えのない音に振り下ろそうとしたつるはしを止める。

 トンネルに風が入ってきた音でも、他の作業員の出す音でもない、どこか()()()()()()()()()()だ…。

 壁に耳をぴたりと当て、音の元を探る。



 …………。…………。。……


 ん?何かが鈍くでも聞き覚えのある音だ…。


「ん?エインどうした?何かあったか?」

「ええ、そこそこ先の方に音が聞こえます」

「音が?………ちょっと親方呼んでくっから待ってろ」

「お願いします」


 少しして親方が来て、事情を説明すると

 親方は少し考えて壁に向かって手を出し何かよく分からない言語で喋って、しばらくするとこっちに振り返る。


「こりゃぁ、水脈だな」

「水脈ですか?」

「面倒だが迂回するか水脈自体をどうにかしなきゃなんねぇが、俺の判断する事じゃねぇし、今日は早いがここで切り上げだな」


 親方がそう言って周りの作業員も切り上げ始める。

 よく分からないが俺も道具を片付けてに行く。




「ん?ああ、あれはな土の精霊に壁の中の様子を見てもらったんだよ」

「土の精霊?」

「俺にも見えないが魔法が使えるやつとか他の種族ならその種族に適した属性を持つ精霊が見えんだとよ」

「そういえば親方は地人種でしたね」

「そう言うこった、にしてもよく分かったな?親方が言ってたが精霊でも見るのに少し要したって聞いたぞ?」

「まあ、耳が良いもんで、それに俺は半獣人種なんで、純粋な兎の獣人種の人と比べたら負けますよ」

「はぁ〜…そう言うもんかねぇ」





 昨日は宿に帰らないまま外に居たからやっとベッドで眠れ…ん?アイツは…


「あ!」

「あ“?」

「ヒィ!?」


 急にこっちも見て大声で指を指そうとしていたので、ついガンを飛ばしてしまい腰を抜かしてしまったようだ。


「…昨日の今日で何の用だ」

「あ…え…えっと…わ私のしょ所属するギルマスからので伝言で、会って話がしたいそうです、ももももちろん都合の良い時に指定した場所でで話したいそうですはいぃ…」

「話しか…」


 こちら主体で考えている所は中々マナーを持っている者のようだ。

 まあ、明日は親方が商業組合の上の者と話し合いで仕事はないし良いか…。


「…分かった、では明日の早朝、コーヒー喫茶店に来いと伝えておけ」

「!は、はい!しし失礼します」


 少しつまづきながらも走り去っていく。

 あの阿保も少しは良くなったのだろう。

 まあ、どうでも良いか


「やっと帰ってきたかい、朝からずっと居たから迷惑だったよ、全く…」

「申し訳ありません、お詫びと言ってはなんですが迷惑代としてお納め下さい」


 そう言って1000Z取り出して渡す…が、


「…冗談だよ、まあ、気持ちだけ頂いとくよ、さっさと部屋で寝な」

「そうですか、それではおやすみなさい」


 鍵を受け取りついでにと言わんばかりに新聞も無造作に置かれたので持って、出していたお金を戻し部屋に戻る。

 ベッドに座って新聞を開くと大きな記事が目に入る。


 〔東の森にて異変が!?〕

 昨日、昼前に魔物や動物が東の森から大量に走り去っていく姿が各地で目撃された。

 これを受け領主であるハンダロ氏は

「前回の調査でここまでの脅威となる魔物や動物が発見できなかったが、由々しき事態であることには変わりはない。

 急速に事態収束のため、大規模な調査を行う予定である」

 とのこと、なお魔物専門家のジャマカ氏によると

「魔物や動物が逃げると言うのは、本能的に自身より圧倒的な強さを持つものが放つ殺気によるものが原因の可能性が高い。もしかすると魔王種の魔物が東の森に生まれたのかも知れません」とのこと、これを受け各組合は東の森に一般人の通行を止める事も視野に入れている。



 なるほど、昨日ずっと探しても見つけられなかったのはこれが原因か…しかし、その魔王種なる強そうな気配はどこにもなかったが、そう言うものなんだろうか?


 なんにせよ、明日は東じゃなく西の森にでも行ってみるか。

 森って言っても東よりは探索し易そうだしな。













 いつも通り軋む床に立ち上がり、朝を迎える。

 時間としてはいつも通りの時間だろう…。

 宿を少し出るがまだ陽も上がっていない。

 ちょうど良く新聞を受け取り、コーヒー喫茶店に向かう。







 コーヒー喫茶店に着いたが相変わらず開いているが、やはり早い時間だと娘さんは居ないようだ。


「…いらっしゃい…」

「いつものコーヒーとあと連れが後で来るからその時くらいにもコーヒーを」

「…あいよ…」


 奥側の席に座り、新聞を読みながら待つ。







 コーヒーを3杯飲み終える前に扉が開く。

 片方は阿呆ということはもう片方が阿保のギルマスであろう女が立っていた。

 新聞をしまい、席を立ってこっちに来るよう促す。


「こっちだ」


 そういうと阿呆はビクッとしてすぐにこちらを向き、一緒に来


「す、すみません、遅れてしまい…」

「いや、時間的にはまだ早朝とも言える、まあ、それより自己紹介といこうか…席に座ってくれ」


 席に座るよう促し、ちょうど良いタイミングで店主がコーヒーを出してくれた。


「それではまず俺から、俺はエイン、兎の獣人種だ」

「わ、私はタイチョウ、へ平人種です、はい」

「アタシはヘルメース、特殊種族である悪魔の魔人種でギルド【調査団体】のギルドマスターをやっているの」


 そう言って、わざとらしく胸を机に乗せてハニートラップ紛いな事をしている。

 全くもって不愉快だが、そんな奴は放っておいてマシになった阿呆改めタイチョウに呼ばれた用件を聞く。


「それでなんで呼んだ?」

「そ、それが……その…」


 歯切れが悪く、ヘルメースの方をチラチラと見て助けを呼んでいるが、ヘルメースはずっとこっちを見てくる…ッチ…。


「用がないならないでどうでも良いが、いつまで見ているんだ貴様」

「ッ!!」


 ずっと見ているヘルメースに殺気を飛ばしながら、さりげなく()()()()()()()()()()()()()()()()の首を掴み少し絞める。


「さ、さすが…ですね…」


 何故か目の前に居たヘルメースが消えて、男のヘルメースの姿がはっきりと見えるようになった。


「俺を試していたのか?店で良かったな?」


 そう言って首を掴む力を緩めて少し突き放すと、男のヘルメースはそのままの勢いで床に膝をつく。


「申し訳ありません、本当に我が王であるか確かめたくした次第であります」

「俺は貴様みたいな奴の王になった事などないし、第一王を名乗った覚えなど無いが?」

「!そ、そんなぁ…私ですよ私!ヘッジザラゲストで貴方に仕え、情報を仕入れていたヘルメルスですよ!」


 そう言って立ち上がり、芝居のような涙目で訴えてくる。

 ヘルメルス…ヘルメルス?


「そう言えば1年くらい前にそんな奴が居たような…」

「そうですよ!その1年前に居たような奴が私ヘルメースですって!」

「まあ、どうでも良いが少し声を絞れ、店に迷惑だ」

「え、ええ…す、すみません…つい…」


 そう言って元(女のヘルメースが)座っていた席に戻り、声を下げて話す。


「もう一度聞くが、なんの用だ」

「それはもちろん、我が王であるエイン様に現状の報告とついでに王のご尊顔を拝見したく参上仕りました」

「…興味ない、意味がない、意味が分からん」

「そういうと思いましたので、私が勝手ながら報告させて頂きますが…よろしいでしょうか?」

「………店に迷惑を掛けなければ勝手にしろ…店主、おかわりを頼む」

「…あいよ」


 自身のコーヒーを飲み干し、おかわりを頼んで、新聞の続きを読む……。

蛇足説明

ヘルメース(旧ヘルメルス)

自称災害王に仕える情報屋。

ゲーム:ヘッジザラゲストでタイチョウと同じようにエインに近づき、その力を見惚れて勝手に仕えている。


なお、エインはヘルメルスの事は3回くらい殺してからは汚れた空気くらいにしか思っていないが、毎回街に行くと建物の影からあからさまについてき来る。

そして、1年くらいして面倒だから街にいる時だけは一緒に行動して良いことにして、それ以上はGMに報告することを伝えると本当に街にいる時だけついて来るようになったのでヘルメルス評価は話の分かる阿保としか思っていない。

なお、一緒に居る時は大抵ヘルメルスが喋りっぱなしで適当に流している模様。



次回もお楽しみに

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