『災害王 エイン』VS『渾沌災食 ハヴァン』
薄暗い中だが目も慣れ、目の前に蠢くソレと目が合う。
ソレはタコやイカ以上に複数の触手を身体の穴から出し、太く長い首に大きい顔...その巨体を入れていたであろう檻は上下に引きちぎれてさらに周りの檻も外からこじ開けられ壊れていた。
「亀...か?」
その問いに応える生物は居らず、ほかのところに伸びていた触手が戻って顔の方向に触手で狩ってきた獲物を口に運んで咀嚼する音が聞こえ、血がポタポタと落ちてくる。
周りはそのせいで意識せずとも血生臭い臭いで嫌になる。
「汚い食事をするなよ...」
その間もこちらに伸びてくる触手を斬っていくがキリがなさそうだ。
試しに首でも斬り落とすか、そう思って刀に力も入れて振る。
軽く振った刀から生み出された攻撃は真っ直ぐ亀の首に直撃して大きな斬り傷を与えた。
攻撃を喰らった亀は大きく触手を暴れさせ、俺に直接攻撃する触手、檻の残骸を投げつける触手、さらに天井から瓦礫を落とす触手と行動の変化を見せたが、
「つまらんな、準備運動にもならん...さっさと首を斬り落とすか」
飛び上がり刀に先ほどよりも力を込めて首に接触するギリギリで素早く振る。
あっという間に首を通り過ぎ、仕上げにもう一回斬ろうとする時にもう一つ違う反応が中...亀の体内に居るのを感じ取った。
「形態...いや、それにしては...まあ、構わんか」
そう言い終えて首を切り落とすが、やはりこの世界の使用なのか、それともボスであるからか、首は切り落とされずにつながったまま落ちてくる。
...だが、いつものボスとは違い動かない。
レイドボスもうんともすんとも動かない...が、体内の反応はまだある。
俺が地上で感じ取ったのはこっちだな、少し開けるか。
刀を上段に構え、少しだけ深呼吸をして力を籠める。
硬そうな甲羅もあるが、これくらいなら刀が耐えるくらいの力で斬れそうだ。
そう思いながら一閃、それと同時に発生した剣圧から生まれた攻撃は真っ直ぐ、只まっすぐに進んで行き甲羅を綺麗な断面を作りながら尻尾の方まで進んでいき壁をも斬っていった。
「...こんなものか」
「む...んん?なんだなんだ、折角封印獣を操って出ようよしたのによぉ...」
そして、俺が感じ取った反応の主は真っ二つになった亀の死骸から出てきて姿を現した。
見た目は...竜人、いや龍人か?こっちの世界でのそういう種族の呼び名はあまりしらんな...後でヘルメースにでも聞いてみるか。
「んで、そこの半端者の獣人君だれ?」
「...ああ、俺か?聞く必要あるか?」
「ん~ないな、どうせ殺すから」
「だろうな、冥途の土産は要らんだろ?」
その言葉を最後に相手が間合に入ったので壁まで蹴り飛ばして追い打ちに天井に投げ飛ばす。
まさかこうなるとは思ってなかったのか受け身すらとれなかったのかよろけながら立ちあがる。
「...ふ、ふひ...ひひひひひ、いやぁ、強いね君」
「称賛は要らん、さっさと来い」
「そのつもりだけど、いいよ、そんなに強いんだったら自己紹介してあげるよ」
「要らん、こっちは準備運動する為に来たんだ、貴様の素性などどうでもいい」
「...準備...運動?...ひひ、ますますいいねぇ...その余裕いつまで持つか楽しみだよッ!」
目の前から消えるように右に逸れて行き、静かに近寄ってきたので軽く刀を攻撃に合わせて首が来る辺りを振ると、今度はすぐに斬られる前に飛び退いた。
「良い反応だが遅いな、もっと上げろ」
「言われなくてもやってやるよ!!」
次は真っ直ぐ突っ込んで来て少し手前で軌道をずらそうとしていたのでそれに合わせて間合いを詰めて曲がる直前のところに当たりをつけてギリギリ間合い内の所で止まる。
「!ッチ!」
「もっと練って掛かってこい、だが、時間は余裕を持たせんぞ」
ギリギリ手前で方向を変えて遠ざかろうとしていたので、その速度より少し速く動いて相手を窮地に追い込む。
窮地に追い込めば追い込むほど相手の本気を引き出せる為、これ以上にない準備運動ができあがる。
が、それはある程度根性のあるやつだったらの話だが。
コイツと軽く戦っているが逃げられては追って軽く斬ってを繰り返すが、変わり映えしない戦い…いやこれはもう戦いではないか…
そろそろ終わらせてやるか、そう思いまた逃げられたので
直ぐに追いついて攻撃を入れると抵抗なく横っ腹に斬れ、少しすると斬りにくくなったので勢いそのままに薙ぎ払う。
刀の血を払って一応刃こぼれないか確認するが問題はない。
力を入れていたが少し加減を間違えたか…いや、これ以上は刀が保たんか…まあちょうど良い。
「ぐぅ……ガハッ…ば、化け物が…」
「貴様が弱すぎるだけだ、準備運動としてはいいデコイだったがな」
そう言って刀の感覚を掴んだので納刀し、ゆっくり近づくと壁から抜け出し、少し雰囲気が変わったか?
土煙が晴れ、ゆらりと立ち上がり睨みつけてくる。
「俺が…デコイだと……クキキキキ………良いぜ、その余裕を歪ませてやる……」
そう言ってゆっくりと血溜まりの中に倒れた亀だったヤツに近づき手を当て、口を開く。
「俺様は第一級厄災者…渾沌にして災食のハヴァン…今こそ俺様の真の恐ろしさを身に刻み、この世の全てをオレ様の腹に消してやるッ!!」
そう言うと亀の死骸が一瞬にして消え、その瞬間ヤツ…ハヴァンの身体から違う気配が生まれ、そして
「封印獣よ!!キサマのチカラ!!オレが!オレ様が!!あああああああああああああああああああ“あ”あああ“あ”アアアアアアアアア“AAAAAA”A“AA“AAAAAA”」
地を揺らすほどの怒号と共に身体が膨れ上がっていき徐々に天井を突き破ろうとしていた。
「形態変化か…しかも巨大化……五月蝿くて敵わんな…仕方ない…本気で潰すか」




