ソロは観戦する
トーナメント表が映し出され、その後中央にいたプレイヤー達が消える。
「初戦から勇者君が出ますね」
「そうか…そう言えば何故個人戦の後に団体戦の予選になっているんだ?一気に予選を済ませれば良いものを」
「そうですねぇ…公式の答えではないですが、やはり個人戦で身内に当たった時に持っている手札を全部知られていると対策され易いからですかね?」
「であれば尚更この世界とは反りが合わんな、集団で魔物と戦うのが基本であるならばどう足掻いても知られるだろうに」
「うーむ……ああ、そう言えば団体戦になれば必然的に人を絞れますし、団体戦の予選は常に4組が当たる様になっていますからね、個人戦でそれをすると組まれてしまうとそれだけで人数不利の戦いになりますからその為でしょう!」
「……まあ、そうなんだろうな。
うむ、そう言う事ならば観るのは個人戦だけで十分だな」
「おや?団体戦も面白いと思うけどね、僕は」
「そうであっても俺としてはそろそろ違う場所に旅立ちたい気分だからな、出る事のないモノを観ても時間の無駄だ」
「……なるほど、君らしい答えだ」
そんなことを話していると会場から歓声が上がり、対戦するプレイヤーが舞台に上がり、お互いに構え始める。
同じ剣だが、勇者は納めた状態から、もう片方は二刀流を抜いた状態で開始の合図を待つ。
審判が両者に準備を済ませたのを見て手を上げ促す。
それと同時に二刀流のプレイヤーが右手を振って剣を飛ばす。
それに対して勇者は居合で払いのけるが、その剣はすぐに持ち主の元に戻る。
形状からして鎖で繋いでいる剣だがあの速度で戻すのは技量かそう言う能力の魔剣の類か…。
今度は勇者が迫り来るが、二刀流のプレイヤーは左の剣を鎖鎌の如く回して横から攻撃をする。
それを剣で受けず、勇者は先ほどより速い速度で詰め、そのまま居合で切り抜けて一撃を浴びせる。
「ふむ、良い緩急のつけた迫り方だね。
鎖剣は珍しく扱いも難しい、良い使い方だけど相手の方が上手ではあるね」
「ただ二刀流だったからか少しだけで弾かれるのを嫌ってか急所ではないな、わざわざ長く戦わず、あの時に仕留めれば良いものを…」
「ふむ、確かにあれほどの居合ができるなら二撃はできただろうけどカウンターを警戒したか、あるいは次に備えて隠しているか……まあ、前者であれば良いけど、後者は分かる者にはバレているだろうね」
二刀流のプレイヤーはその場から動き離れながら武器を回して牽制する。
が、流石にそれは悪手だった。
一撃入れられて焦っていたのか少々無理のある長さを回してしまったからか、勇者が軽く流し地面に落とし、足で止められてしまい、それに続いてもう片方の勢いが弱まり、払いのけられ落とされてしまう。
そして、強引に引き戻そうと腕を振り上げた所に勇者が迫り肩から脇腹に掛けてバッサリと斬られ、プレイヤーは光の粒子となって消えていく。
「あらら、両方回すのは流石にダメだね」
「あの距離もダメだな、両方回すのであれば間合いをもう少し狭めねばあの武器の本領は引き出せんだろうに」
「あの距離でも厄介ではあると思いますがね?」
「あれだけ出ていれば弾かれた時に戻すための力がいる、そうすれば片方の勢いも弱めるか戻さねば難しい、それにあんな武器は両方振り回す時点で負けているんだよ」
「勝手に回ってくれるなら強いんだけどねぇ、流石にその類まで行くとまた違う戦略になるね」
そうこう話しているうちに1回戦の第2試合が始まろうとしていた。
今度は弓対片手剣か…。
「アルテ君ですね、彼女の戦闘スタイルは遠近バランスの良い戦いが特徴ですね」
審判の合図と同時にその弓使いがバックステップをしながら2連射を放ち、片手剣はそれを盾で防いで追いかける。
さらにもう1射を曲射すると空中で矢が弾けて10本ほどに増えて真っ直ぐ落ちる。
そのまま真っ直ぐ抜けようとした片手剣だったが、後退していた弓使いが前進しており軽く蹴り飛ばされ、そのまま肩と足に矢が当たる。
曲射で意識を逸らした隙に前進する時をしっかり相手の動きを見逃さず判断するところを見るに慎重さのあるスタイルか…。
弓使いとしては中々見ないタイプだが、個人戦でここまで残っている時点で普通とは逸脱しているな。
「おっと、これはもう勝負アリかな」
「足がやられた前衛職とまだまだ余力のある後衛職なら後者が有利だな、ここから矢を全て受け止めれるなら話は変わるが…」
「無理でしょうね、あのパターンは知っていても他のパターンに似ているからか曲射された矢に目を向けなければ無理ですからね」
話しているとさらにもう片方の足に矢を放ち、完全に機動力を奪ってから背後まで回り込んで後頭部に矢を3発放った所で片手剣のプレイヤーは光の粒子となって消えていく。
弓使いとしてはかなり突出した動きと状況判断能力の高さから組まれる作戦…だが、アレぐらいであれば奴は遅れを取るまい…。
水を一口飲んで対戦表に目をやる。
正直言って、退屈しのぎにもならない観戦は嫌いで時間を気にするように何度も見てしまいそうだ。
仕方ない…先に気になる方を始末しに行くか。
「おや、どこへ?」
「気になることがあるからな、それで暇つぶしでもする」
「であれば私もお供いたします」
「……いや、貴様はここで待っていろ…時間が来たら会場に戻る」
「かしこまりました、宴の準備をしてお待ちしております」
返事をせずに部屋を出る。
さて、地下への階段を探さねばな……。
次回もゆっくりお待ちください




