ソロはとりあえず呼んでみる
中に入れば外からでも分かっていた事だが隙間風が酷く、また掃除も行き届いていないようだ。
そんな場所に恰幅の良い商人らしき男とここの管理をしている者だろう年老いた女性が話し合っていた。
「だから何度も言うようだがねサントロさん、孤児院を存続するのはもう難しいだろうから建て替えるついでに取り壊した方が教会のためですよ」
「たしかに、この老いた体では両方ともと欲張るのは難しいですが、それでも親を失くした子達には必要な場所なのです。
ユイガルドさんも分かっておられると思っていますが…」
「それは……私も力になりたいですがこれ以上の助力は……」
「サントロさン!」
「おや、イエニス君…それに後ろの方はお連れの方ですかね?」
「む…とにかくまた来ますからその時には決断して下さい…これ以上は他の商会を抑えるのが難しいですから…」
「ええ、ごめんなさいねユイガルドさん」
「それを言うならこちらこそ…これくらいの事でしか恩をお返しできなくて申し訳ない」
ユイガルドと呼ばれた商人が申し訳なくそう言って立ち去った…。
話を聞く限りは強請りや高利貸しの類いではないようだ。
「サントロさン、孤児院は…」
「そうねぇ…ここまで引き延ばしにして貰えたけど……こうなるしかないのよねぇ…」
「………」
暗い聖堂内で暗い雰囲気にされるのは気分が悪いがわざとではないし、俺にとってはどうでも良い……それにしても建物自体はかなり年季が入っているが、それでも石像だけは破損無く残っており、掃除もされている…。
狼と龍は見た事があるがこっちの狐と翼のない竜は見た事がない…。
…ふむ、『零度様』と『凍土様』か、名前の意味と狼と龍の能力からしてこの2体もこの国…というよりこの土地に関与する力を持っているのだろうな。
「あ、すミマせん、サントロさンこの方がヘルメースさンや自分が慕っているエイン様です」
「ん、もう話は終わったのか?では、はじめまして旅をしているプレイヤーのエインだ、よろしくお願いします」
「あらあら、ご丁寧にどうも…私はここ四獣教会で司教をしていますサントロと申します、先ほどは込み入った話を聞かせてしまったようで…」
「気にすることではない…ふむ、イエニスこっちでは賽銭する文化はあるのか?」
「え、ええ、ありまスヨ、コチラでス」
案内された場所に行くと子供より少し大きい杯があった…とりあえず適当に100zでも入れておくか。
作法も知らないしとりあえず手を合わせ、今後の旅が平穏で良い景色に恵まれる事を祈っておく……。
「さて、次はどうす…そう言えばここには四獣に関する書物か伝承はあるのか?」
「ええ、どちらも大切に保管や記憶しております、見聞きされていきますか?」
「そうだな…イエニスはどうする、他に案内する観光名所があればそれでも良いが」
「それでしたら自分モ興味、ありまス!是非」
「分かったわ、それじゃあコチラへどうぞ、滑らないように足下には気をつけ「ウワァ!?」あらら、イエニス君大丈夫?」
「いてて…だ、大丈夫デス」
古く少し傾いた扉を開けると本棚が3つあり、窓から日がささず隙間風があるせいで外と殆ど変わらない寒さになっている。
「四獣様方の伝承はこの本棚に、あと…あったわ、この本はかつて四獣様方と契りを交わした英雄クレケーノス様の物語が書いてあるのよ…ここにあるものしか今は残ってなくてね…」
「いや、ただの好奇心で知りたいだけだ…拝見しても良いか?」
「ええ、大丈夫よ」
「サントロさン、自分は子ども達にこの前約束した物を届けたいのですがいいですか?」
「構わないわよ、ええと」
「ああ、俺はここで読んでいる…知りたいことさえ分かればそっちに向かうから構わん」
そう応えてとりあえず手に取った本を読む。
残念ながら椅子がなかったがそこは自前の簡易的な椅子で代用するが、これくらいなら流し読むだけならそう時間は掛からないだろう。
「ど、どうしましょう」
「ま、まあエイン様なら問題なイそうですシ案内お願いします」
「ああ、そこまで時間は掛けん」
そう言い終わると少しの間を置いて二人が孤児院の方へ向かって行った。
……さて、とりあえず今読んだ本の中には特に目ぼしい事は書いていなかったが早々見つかるわけないか。
そう言えば最初に司教が言っていた英雄の本があった事を思い出し
英雄の本を手に取ると外からでもわかるほど状態が今までの本よりも良い。
新品とまではいかないが汚れや破損が少ないな…。
中を開くとクレケーノスという人物の出生からから書いてある…とりあえず適当に流し読んでいると四獣との出会いが書かれているページがあった。
描かれている絵には男と雪のような白い毛を持った大狐…これが白銀狐か…契りを交わした四獣の1柱は男に近寄り尻尾で身体を包むと男の身体から抜け出ていた体温は瞬く間に戻り、男を凍傷から救った…か、
その後も読み進めると凍土竜と出会い何も育つ事がなかった凍った大地を蘇らせたり、金剛雪と共に邪神の一派を討伐したり、豪雪に乗り分厚く日が出ることのない空を切り開いていったりと伝説が長々と綴られており、その都度見かけるのが
『我と契りを結びし〜〜よ、我が呼び掛けに応えよ』
という台詞が出ていた。
契りか…交わした覚えはないが果たしてどうなるか…。
とりあえず本を棚に戻し外へ向かう。
外は日が出ていようとまだ寒さを感じる。
さて…
「我と契りを結びし金剛雪よ、我が呼び掛けに応えよ」
そう言うと遠くから狼の遠吠えが響き渡り、目の前が少し眩しく光り輝き、少しすると狼…いや金剛雪が現れた。
『何用だエインよ』
「ああ、貴様を呼び出す方法を聞き忘れたからな、調べ試しただけだ、用と言えばそれだけだな」
『そうか、久しくその言葉を聞いた故、クレケーノスが…いや、彼奴は長命種ではなかったか…』
「期待させたな、それとこの口上でしか来れないのか?そも俺は貴様と契りを交わした覚えはないのだが」
『口上は何でも良い…契りは既に済んでいるだろう、我と豪雪は貴様に降伏したのだ、契りとしては最上位のものになっているだろう故、どのような呼び掛けも出来うる限り応えよう』
「そうか…まあ、最上位というのはどうでも良いし、呼び出し方も分かった…ではまた何かあれば呼ぶとする」
『であれば我も帰るとする、滞在し過ぎれば貴様が嫌う騒ぎが起こる故な』
そう言うと少しだけ風が強く吹き、金剛雪を包むと次の瞬間には姿が消えていた。
…ふむ、とりあえず呼び掛けは名前だけにしとくか。
さて、イエニスの気配はこの隣の建物からか…………。
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