王は帝都に辿り着く
色々と障害はあったがようやく自力で国の都に着いた。
目立つ事を避けるために帝都の外壁が遠目に見え始めた所で四獣の狼と分かれ、1時間ほど歩いてきた。
旅の始めは曇っていたが、今では夜空が綺麗な顔を覗かせる。
少し入るのに並びはしたが都市が賑わっている証拠であろう。
「さて、今日はもう遅い、先程聞いた宿にでも泊まるとするが、貴様はどうする」
「ええ、私も……ああ、すみませんギルドメンバーと打ち合わせがありますので非常に残念ですがここで一旦別行動となります。
一応帝都に居るので何かございましたらご連絡下さい」
「そうか、では何事もなければイベントを観てからここを立つとしよう」
「かしこまりました、それでは失礼します」
ヘルメースと別れ、門兵に聞いた宿屋に向かう。
帝国の都だけあって夜でも人通りが多く、そこら辺で聴こえてくるのは今回の目的でもあるイベントの事ばかりだ。
誰が勝つのか賭ける者、今回こそ優勝してみせると息巻く者、それに反応して合いの手を入れる者……その他にも聴こえてくる話し声はあるが、その中には
『昨日まで曇っていたのが今日は随分と晴れたな』
『何でも四獣様のご意向らしいわよ』
『何十年と生きてきたがこんな空なんて初めてみるぜ』
『バッカ野郎俺だってそうだ、がははは!』
やはりこう言って天気が余程異常なのか、住民は殆どが驚きの声をあげ、非日常を味わっている。
っと、ここが[ハロールの雪宿]か、大通りに面しているがはてさて空室はあるだろうか?
中に入ると聞いていた通り一階が全て食堂で鎧を着た者や重労働者が薄着で酒を飲んでは騒いでいる。
とりあえず奥のカウンターまで行って従業員を呼び止める。
「夜分にすまない、空室はまだあるだろうか?」
「空室ですか?少々お待ちを〜」
「アウルちゃん俺たちの酒はまだかー」
「はいはい!今持って行きますよ!あ、フェンネさん空室あるかお母さんに聞いてきて!」
「分かりました」
とりあえずカウンター席にでも座って待つとしよう…最悪部屋がなかっても丁度腹も減ってきたし食事でもするか…っと戻ってきたな。
「アウルさん、団体様部屋は空いていますよ、それ以外は満室です」
「うん、ありがとねー!あ、お客さん団体部屋が空いているんですが料金が200zになりますがお泊まりになりますか?」
「ああ、構わないそれで頼む…それと夕食を食べたいのだがおすすめ…いや、アレを頼む」
丁度他の客が頼んでいた料理を見てそれを指差して頼む。
「ジャガシチューセットですね!食事は宿泊なされると言うことで10zで構いませんよ!」
「ああ、それで頼む…とりあえず1週間ほど泊まる予定だからこれでいいか?」
「…はい!丁度いただきました!」
「アウルさん、鍵です」
「フェンネさんありがとー、お客さん部屋は402になります!ごゆっくり休んでいってくださいね!」
「アウルちゃーん!!!」
「ケルクさん!今日は…」
さて、一応旅のためにそこそこ節約したおかげで泊まるだけなら問題ないが、どうせなら名産品か何かここでしか買えないものを買いたいが、まあ、その辺りは明日にでも聞いてみるか。
「ジャガシチューセットです、ごゆっくり」
明日の予定を考えながら運ばれてきた料理を食べる。
ここ最近凝った料理を食べてなかったからか、ジャガイモと少量の肉が入ったスープですら美味しい。
スープの付け合わせであるパンを少し浸してもう一口食べる。
あっという間に食べ終わり、そのまま部屋へ向かう。
やはり都市なだけあってプレイヤーも多い、ハンダロと比べてもある程度動き方や雰囲気から住民と違うからわかりやすい。
部屋に入ると団体部屋なだけあってかなり広く、ベットも数が自分には多すぎる…前回宿屋をいくつか回ったから今回は無理してもすぐ泊まれるようにと考えたが焦りすぎたか…。
まあ、イベントでこれからもっと人が増え泊まれるところも少なくなるだろうし………最悪ヘルメースと折半でという事も考えるか、さて明日はどうするか。
いつも評価、感想、誤字訂正などありがとうございます。
次回もゆっくりお待ちください。




