パーティは邂逅し、巻き込まれる。
ヒョウロウの群れに連れられどんどん山に向かっている。
ひどい吹雪中だが、ソリの周りだけは吹雪が避けていく。
地図を開くが位置情報がなく、自分達が何処にいるのすらわからない。
「一体、何処へ連れて行かれるのでしょうか?」
「知らん…が、大きい気が前方に感じるな…」
「大きな気…ですか」
…そうなると、と言い掛けたその時だった。
ひどい吹雪地帯を抜けたのか、吹雪の勢いが静まっていく。
そして、開いていた地図の位置情報が復活した……が、
「え…」
「…開けた場所…というより山の頂上付近か?それにしては空気が薄くないが…」
「わ、我が王、どうやらここは特殊エリアのようです」
「特殊エリア?」
「はい、イベント戦用の特設エリアであったり、特殊なモノが居たりするエリアの総称で、ここは『四獣:金剛雪のヒョウガロウの棲家』のようです…」
四獣…ノーディシス帝国を護る4匹の獣にしてノーディシス帝国では『神からの使い』と呼ばれるほど敬う存在であり、ノーディシス帝国が雪で覆われる原因でもある存在…。
ノーディシスを囲む山に棲家があると聞いていたが、プレイヤーでたどり着いた者は居ない場所…それが何故…。
「よく分からんが、コイツらはここに俺たちを連れてきて何をするつもりなのだろうな?」
「それは…すみません、私ではヒョウロウの意思は分からないので…こんな時にメリーがいればある程度は分かるのですが…」
「…まあ、よい、どうやらここの主が出向いてくるようだ」
そう言われて地図から目を離し、王の向いている方向へ目を向けると、何かとてつもなく大きな生物が居るように見える。
が、周りの雪のせいか、その大きさを確実に捉えることができないでいた。
『良くぞ参られた火の次期精霊姫を連れし者、我はこの地を護りし者
我眷属を遣い、其方らを迎え入れた』
「そうか、ヘルメース」
「………は!はい、今すぐに、精霊姫様お出になって下さい」
ランタンに入っていた精霊姫様を呼ぶと、ふわりと姿を現した。
一瞬、目の前の光景に驚いた様子だったが、すぐに持ち直し、
「お初にお目にかかります、■■■■■様の許しを得て、火の精霊姫となる■■■です、これからよろしくお願い致します」
『うむ、■■■■は息災か?』
「はい、■■■■■■様は何事もなく、お元気な姿をしております」
『そうであったか、他の守護者も呼びたいが、生憎この所不穏な空気でな、持ち場を離れる事ができぬ、それ故に我が代表として此方に呼んだまでよ…治れば分霊がいずれ湖へ向かうであろう』
「そうでしたか、配慮のほどありがとうございます」
『よい…其方の方々は神に招かれしプレイヤーと見受ける、我らの都合とは言え不便を掛けた』
「構わん…が、此方としては其方の言葉や意思が理解できないため今後無いと思うが、そう言った事があればその辺の配慮をしていただきたいものだ」
『そうか、確かにそうであったな、考えておく』
「ああ、それと此処に連れてきた理由はそれだけか?それにしてはどうも殺気立っているが?」
『…見抜かれていたか…』
「■■■様、何かあったのですか?」
『…先ほど言った不穏な空気という話に戻るが、我々の眷属の数体の繋がりが消えたのだ。
初めは何らかの事故があったのかと思い、繋がりが途絶えた場所に他の眷属を向かわせたが、その向かわせた眷属も同じ場所で途絶えたのだ。
そして、異変と認識し他の守護者に協力を求めようとしたが……』
段々ときな臭い話になっていく…まさかとんでもないイベントフラグでも踏んだか?いや、それともこれも精霊姫のイベント中イベントか?
「■■■■■様?どうかしましたか?」
『…いや、次期精霊姫に安全に就任させることができないと思うと少しな…』
「■■■■様…」
『…精霊姫…いや、■■■■、それにプレイヤーの方々、本来であれば言わぬのだが、この地から少しの間離れてはもらえぬか…』
「え…」
「……………」
『先ほどは言いかけたが、今この地の守護者の1体の連絡が取れず、向かわせた眷属が最後に伝えた言葉は“かの者 狂い 殺される”だった…』
「そ、それってつまり…」
『…想像通りであろう…何者かがこの一連の事件を引き起こしている…しかも、守護者の1体を操るほどの力を持つ者が…』
その言葉に息をのむ…今の所、この大陸でレイド級の化け物が悪意のある何かによって操られている事実に私は驚きお隠せなかった。
『完全に操られるほどの者ではないと思うが、それでも「くだらん」…なんだと…』
だが、その者は、我が王は、さもつまらない話を聞かされて呆れた口調と態度で言い切った。
「何故、わざわざここまで来て、危険だから帰れと言われたから
その程度のことに対して、くだらんと言っただが?」
「ちょ!?ちょっと貴方!誰に何てこと!」
「コイツに事実を…いや、この場合は本音を言ったまでだが?」
…ああ、そうだ、そうだった。
その程度で我が王が引く訳もないし、障害とすら思わない人だった…。
「貴方ね!この方は!その気になれば一晩で国を更地にできるほどの力を持っているのよ!?そんな方が親切に」
「尺度がデカいが、その程度なら誰だってできる。
それに、貴様は親切と言ったが、それならば何故この場から離れ、自らの手で事件を治めるのが本当の親切であろうが、勝手に気持ちを汲み取るな」
「あ、貴方ね…」
『よい、貴様、名は何という』
先ほどの重い空気から急変し、私にまで伝わるというか、私も含めた怒りの視線で寒さも相まって動けなくなる。
「ほぉ…それで全開か?
…まあ、いい名を聞き返したところで聞き取れんだろうから、こちらから名乗ろう…俺はエイン、国程度しか相手にできぬ貴様が誰に矛先を向けているか考えているのか?」
『エイン…いいだろう、貴様の蛮勇に「質問に答えろよ」!』
「俺は今聞いた質問に答えてからモノを言え、そんな殺気では弱者にしか相手にできんぞ?」
『……………』
段々とこっちに向く怒りがなくなったが、それでも我が王とこの地の主?の間で火花が散るほどの睨み合いが続いている。
「まあ、あまり俺もくだらん事に時間は割きたくないんでな、注告だけなら帰らせてもらうぞ」
『…いや、待て、貴様がどの程度の者か測らせて貰うか』
「………ほぉ、なら、どう測ると?」
『簡単な事よ…貴様ら2人だけで事件の犯人を始末してみろ』
「…え?」
「なるほど、で?何を賭けるんだ?」
『随分と自信があるのだな、良いだろう。
始末できれば貴様に忠誠を誓おうではないか……但し、できなければ2度とこの地に足を踏み入れることを禁ずる』
「忠誠か…まあ良い、別に要らんが、受けようではないか」
「わ、私もですか!?」
『当たり前であろう』「当たり前だ」
「え、ま、まあ、我が王が負けるなど無いですから、良いですが」
『ふ、それでは犯人が居るであろう豪雪のヒョウガリュウの場所まで我が眷属で送ろう…簡単に死んでくれるなよ?』
「リュ、龍…」
「其方こそ後で無しなどとは言わせんぞ」
…ああ、いつもの事ながら面白い話題ではありますが、このゲームで3度目のレイド級ボスが最少人数で迎える事になろうとは……。
ま、我が王がどれくらい本気を見せて頂けるのか楽しみではあるけども………。
いつも評価、感想、誤字訂正などありがとうございます。
次回もゆっくりお待ちください。




