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ウサギはソロでも生きている  作者: ハズカシダリア
episode 1 ソロであってボッチではない
4/68

ソロは気づいている

 ゲーム内で結構過ごした頃、気づいたことがある。

 それはいつものようにトンネル工事の帰りに風呂屋に入って出てからだった。


 出た時はそこまでだったが、商業組合に向かう途中から誰かから視線を感じる。

 しかも、1人ではなく2、3人ほど…。


 昨日からそんな気はしていたが自意識過剰だけかと思ったが、気のせいではない……明らかに見られている。

 ただ、どこに居るかまでは分からない。


 まあ、考えても仕方ないし明日は仕事が休みだ。

 ほぼ宿住んでいると言っても過言でもないし、床について聞いたら


「床?ああ…まあ、気になるんだったら自分でやっといて」

「ええ……はい…」


 つい、流れで返事してしまったから修理しておきたい。

 そんな事を考えていると商業組合に着いた。

 いつも通りレイアさんに報酬を受け取ってその相談をする。


「という事で、工具とか材木を売ってる場所ってないですかね?」

「なるほど、でしたら西の産業区に材木店がいくつかありますね。ただ、エインさん」

「?はい」

「そんな宿に泊まっていて大丈夫ですか?」

「え…いや、まあ、安かったんで…」

「そうでしたか…」


 若干引かれた感じはするが、これで床の修繕にも目処が立ったと言うものだ。

 しかし、今更ながら素人がやっていい事なのだろうか?


「とりあえず明日にでも覗いてきます」

「はい、それではまた何か困った事が有れば」


 席を立って組合を後にして、視線を受けながら宿まで帰る。






 宿に帰って部屋に戻ってベッドに座る。

 とりあえず狭いが材木は10枚は居るし、工具とか買うとなると結構金がかかる。

 今のところトンネル工事中に拾った小さい鉱石と毎日節約に節約した持ち金で工具くらい買って、できればこういうことに詳しい人に聞いた方がいいかな。

 とりあえず明日は朝に見に行って、聞いてみるか。










 いつものように起きて、少年から新聞を受け取り、宿主に鍵を預けて西の産業区まで行ってみる。





【準備中】


 開いていなかった。

 いや、まあ、まだ人通りが少ないし、少しどっかで時間を潰しがてら新聞でも読むとしよう。


 近くにいい店がないか探すが、どこも準備中の看板が………お、あの喫茶店が開いてる。

 近くまで行くと【コーヒー喫茶店】と書かれている看板が見える。

 まあ、昨日の残りを急いで食べたせいでお腹は空いてないからコーヒーブレイクとしゃれこもう。


 ドアを開けると、カランカランッというベルの音が鳴る。

 早朝ということもあってか、誰も居ない。


「……いらっしゃい…」

「いらっしゃいませ、お1人様ですか?」

「ああ」

「それではこちらへどうぞ」


 如何にも渋めの俳優ばりの店主とそれとは少し逆の雰囲気を持った女性に迎えられた。

 ソファー席に案内されて、おしぼりを渡される。

 メニュー表もあるが、店名にあるくらいだしコーヒーがあるのだろう…もしなければ人名だったという恥をかくだけだが。


「コーヒーをお願いします」

「…!はい、ミルクの方は?」

「いや、ブラックでお願いします」

「かしこまりました!」


 ?一体何がそんな驚いたり、嬉しいのだろうか?

 笑顔のまま店主に注文を言うと店主が手慣れた手つきでコーヒーを作り始める。


 その間に今日の新聞でも読むとしよう。

 いつも流し読みだったから今日はじっくりと読むとしよう。



 [東の森の調査結果]

 2日を跨いで行われた調査だったが、原因となる問題がなく

 領主ハンダロ氏からは

「東及び南北方面を調査したが、街を害なす脅威は確認できなかった」とのこと。


 [王都付近に新たなダンジョンが!]

 昨夜、王都のプレイヤーが発足したギルド【調査団隊】からダンジョンが発見されたとの報告があり、入り口付近の安全を確認するため入ったところ、罠が多く早々に撤退。

 これを受け、王都騎士団による調査が入る模様。



「おまたせしました、コーヒーです」

「ん、ありがとうございます…いただきます」

「はい、ごゆっくり」


 出されたコーヒーを一口飲みながら、新聞を読む。

 休日の朝としては完璧に近い気がする。

 コーヒーも苦すぎず、なおかつ目を覚ますのに丁度いい後味で美味しい。


 新聞を読んでいると大きな記事でプレイヤーについて書かれていた。



 [世界一広大なダンジョンで記録更新!]

 昨夜、世界5大難関ダンジョンのタルウロスにてプレイヤー発足のギルド【自由の旅人達】が68階に到達!

 過去の63階の記録を大幅に更新した。



 [ヤハロ港にてオオガッツオウ]

 昨日、ヤハロ港にてプレイヤー発足の

 ギルド【フィッシュ&チップス】がガッツ種の主級である

 オオガッツオウを釣り上げ、港ではお祭り騒ぎに

 オオガッツオウは10年に1度産まれる特殊個体であり

 釣られたオオガッツオウはヤハロの領主アハロ氏が

 1000万Zで買い取り、街の民に提供した模様。



 結構色々とプレイヤーも取り上げられているんだな…にしてもギルド名はどこのゲームでも似たり寄ったりってとこだな。

 コーヒーをもう一杯お代わりを貰ってのんびりしていると、お客さんが入ってきた。


「いらっしゃいませ、3名様でしょうか?」

「あ、はい」

「それではこちらへどうぞ」


 席に案内されて、朝食を相談しているようだ…。

 さてと、そろそろ開いていそうだし行ってみるか。

 お会計に行ってコーヒー2杯分の料金を出して喫茶店を後にする。


「あ、あの」

「ん?」


 出てすぐに店員さんに呼び止められる…何かまずいことでも…


「そ、そのですね、うちのおと…マスターのコーヒーどう…でしたか?」

「?美味しかったですよ?」

「!よ、良かったー…」

「?」


 俺が困惑していると事情を分かりやすくかつ早口で言われた。

 なんでも、マスターが店を始めて30年ほど経って居るが、未だに自身のコーヒーの味に自信がなく、いつも

「俺のコーヒーはお前達の作る料理と比べたら美味しくないんだな…」

 と呟いて項垂れているそうで、身内である自分達が言っても身内だからと言って聞かないそうで、どうにか自信を持ってもらいたくて、コーヒーだけを頼んでくれる客が居ないものかと考えていたところに俺が来て、コーヒーを2杯も飲んだことにマスターに自信を持たせるきっかけになったとのこと。


「本当に助かりました!」

「いや、まあ、ただ単にお腹いっぱいだったけど時間を潰したかったので」

「それでもです!あ、そうだ。

 こんな事聞くのもなんですが…また来てくれますか?」

「まあ、今日みたいな休日なら…」


 別にコーヒーもそんな高くないし、朝の街の外に行く前に目覚めの一杯としてなら良いものだ。


「本当ですか!ありがとうございます!それじゃあまたのご来店お待ちしてます!」

「ああ………」


 …何というか、お母さん似なんだろうなぁ…お母さんがどんな方か知らんけど…。

 とりあえず目的の材木屋にでも行くとしよう。





 案の定というかなんというか、板材自体は単体なら安かったが、多く買うと考えると厳しいし、何より工具が馬鹿高かった。


 と言うか、初心者向けのやつで1万Zでそれ以上となると桁すら見たくなくなる。

 後、店員さんに聞いてみたが初心者向けに入っているのはトンカチとノコギリと後ヤスリで買うとしても単体よりセットで買った方が便利とのこと。


 一応、修理に来てもらう時の料金は3万Zである。

 まあ、技術代とか入ってるんだろう…。

 という事で冷やかしのように店を去って街の外に向かう…。







 この前と同じように人気のないところで獲物を探す。

 道中で出会った緑色の肌をした魔物(ゴブリン)やウサギが出たりしたが、1体だけだったのでこの前よりはスムーズにいった。


 だが、やはりというかなんというか、体力が多く、ここまで来るだけで昼間になった。

 効率を求めてはいないが、これから先に進めば進むほど2体以上との敵と戦う事を意識すると厳しいのかもしれない。


 そんな事を考えながら、そろそろこちらをずっと見て居るやつの捜索に当たる。

 あちらからのアプローチが来ないのであればこちらから向かうしかない。




 いた




「目標が立ち止まって結構経ちますけどどうしますか?」

「まあ、待て、あの動きからするに戦闘と歩きの疲れが溜まって休憩して居るのだろう」

「なるほど、ではそろそろ合図をしますか?」

「…そうだな、あれほどの動きができるプレイヤーは少ない、ぜひ我々のギルドに引き入れなければ次のイベントで奴らには勝てないだろう」

「そうですね、そういうことだ、頼んだぞ」



「了解、手加減しろよ」

「「「グルルル」」」「………」



 はぁ…どこに行ってもこういうくだらない事に全力でやる奴は居るもんだな………。

 こっちに来て居るのはオオカミ3頭とその後ろから同じくらいの足音をたてている何か…。


 非常に…非常に腹立たしい。



「………屑どもが…」


 迫ってくるオオカミ達に対していつも通り殺気を飛ばす。

次回『激昂』

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